離婚調停を有利に進めるポイント|服装は?有利になる書類は?

離婚調停では、自分の言い分を調停委員にしっかりと伝えることはもちろん、調停委員によい印象を持ってもらうことも大切です。
調停委員によい印象をもってもらうことで、その後の調停を有利に進めることが期待できるからです。

それでは、離婚調停で「自分の言い分を伝えるためには、どのような準備が必要なのでしょうか。そして、調停委員に好印象を持ってもらうためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。

離婚調停は、事前準備が大事

離婚調停とは、調停委員が夫婦奏法の意見を聞きながら調整し、解決策などについてアドバイスをしてくれる話し合いの場です。
裁判ではなく話し合いをするのですから自然体で臨めば大丈夫ですが、調停では調停委員からいろいろな質問をされるので、その質問にスムーズに誠実に答えられるよう、事前に準備しておきましょう。

夫婦間の出来事をまとめておこう

おすすめなのが、調停前にこれまで夫婦の間で起きた出来事(結婚までの経緯や離婚を考えるために至ったきっかけ)について、時系列に書き出しておくことです。そして時系列でまとめた紙を見ながら、離婚したいと思った具体的な事実や気持ちをあわせて書き留めておくと、緊張しがちな調停の場で、スムーズに調停委員に自分の考えを伝えることができます。
その他、夫婦の状況や親権、養育費などについて自分の希望、質問事項を要領よく簡潔に説明できるようにメモを準備して、自分の考えを誠実に伝えられるようにしておきましょう。

そして、相手が反論してくることが予想される場合には、その反論に対する自分の考えもまとめておきます。

離婚調停の申立を理解しよう

離婚調停の申立は、家庭裁判所に夫婦関係等調整調停申立書に必要書類を添付して、提出する方法で行います。この申立書は、相手方にも送付されるので、裁判所と自分用の控えの3通を用意します。
このほか、申立内容を記載する事情説明書、未成年の子どもがいる場合には、子に関する事情説明書、進行に関する照会回答書、連絡先等の届出書などの添付が必要で、これらの書類は、すべて裁判所に用紙が用意されています。

事情説明書には、結婚までの経緯や離婚に至った経緯、夫婦間に問題が起こるまでの経緯、問題の発生時点から離婚を決めるまでの経緯、現在の状況、離婚条件の要望、自分の希望などを簡潔に記載します。
この事情説明書は裁判所から相手に送付されることはありませんが、裁判所に提出した後で相手が見たいと希望すると、裁判所が相手に見せる可能性があります。したがって、相手をむやみに刺激するようなことは書かない方がよいでしょう。
事情説明書を作成すると自分の考えや希望を整理することもできますし、調停委員にも事前にある程度の事情を理解してもらうことができるので、当日ポイントを絞った話し合いができるようになります。

事情説明書作成のポイント
事情説明書では、「調停でどのようなことで対立すると思うか」「婚姻期間と別居期間」「住居の状況」などについて記入します。後々婚姻費用や養育費などをどうするかに関連してきますので、正確に記入するようにしてください。相手の収入についても記載する必要がありますが、給与明細や通帳などがなく分からない場合には、推測で構いません。
「夫婦が不和になったいきさつや調停を申し立てた理由」では、具体的な理由を把握しようとして質問されています。離婚したい理由が暴力である場合には、「月に1、2度平手で私の顔を叩きました」など、具体的な暴力の内容などについて具体的に記入します。

証拠を集めておこう

離婚調停では、離婚問題の解決を調停委員や裁判官といった第三者に委ねることになります。
ですから、第三者に向けて説得力のある主張を行い、それを十分裏付けるための証拠を準備する必要があります。したがって、自分の主張を裏づける証拠などは、できるかぎり集めておきましょう。

相手方の不貞行為が離婚原因である場合には、浮気現場の写真や映像がもっとも有力な証拠となります。その他にも、2人分の食事のレシート、SNSでのやりとりから不貞行為があったことを証明できることもあります。場合によっては、調査会社に依頼する方が有利になることもあるでしょう。

調停を有利に進めるための証拠は何なのか、説得力ある証拠が何なのか、そしてそれを準備するためにはどうすればよいのかについては、早めに弁護士に確認しておくことをおすすめします。

なお、調停委員には守秘義務があるので、調停の内容が外部に漏れる心配はありませんので、安心してください。

価値観の相違」の証明
「性格の不一致」や「価値観の相違」が離婚原因の場合には、調停で主張が認められにくいことがあります。そのため、「修復しがたいほどに夫婦関係が破たんしていること」を証明するために、日々の夫婦生活の様子がわかるような記録をできるかぎり準備しておきましょう。会話を録音しておくこともおすすめです。

「モラハラ」の証明
モラハラが原因で離婚したい場合も、調停で調停委員の理解を得るためには証拠を見せる方が早いでしょう。調停委員の理解を得られれば、積極的に離婚に向けて相手を説得してくれることも期待できるからです。
モラハラの証拠も動画や写真が効果的です。会話を録音したり相手からのメールは、すべて保存しておきましょう。

争点別準備リスト

離婚調停では、離婚するか否かということについてだけ話し合うわけではありません。離婚する場合には、夫婦の財産をどう分けるか、将来もらう年金についてどう分けるか、別居中の生活費はどうするかなどについても話し合うことになります。

財産分与について話し合う時

財産分与では、夫婦(特に相手方)の財産確認が重要です。
調停になる前にできれば離婚協議をする前から早めに準備をしておきましょう。

財産分与について話し合う時の資料
・収入……給与明細書、源泉徴収票
・預貯金……通帳のコピー
・有価証券……債券などのコピー
・生命保険……保険証券のコピー
・不動産……登記簿謄本、権利証などのコピー
・自動車……売買契約書、車検証などのコピー

年金分割について話し合う時

年金分割というと、「離婚したら夫の年金の半分がもらえる」と思う方も多いようですが、分割の対象となるのは夫が加入している厚生年金または共済年金にあたる部分のみで、分割対象期間は婚姻期間だけです。
年金分割制度は誤解している方も多く「もっともらえると思っていた」と後悔するケースが多いので、離婚後の生活を考えて離婚前に実際にどのくらいの年金が受け取れるのか試算しておくようにしましょう。

分割の割合は夫婦で話し合って決めますが、話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の調停や審判で決めます。
割合について合意ができたら、年金事務所に「年金分割」の請求をする必要があります。

調停で年金分割について話し合うためには、日本年金機構が発行する「年金分割のための情報通知書」が必要となるので、年金事務所に申請して発行してもらいましょう。
「年金分割のための情報提供請求書」を請求するためには、以下の書類が必要なので、準備してから近くの年金事務所で手続きをしてください。

「年金分割のための情報提供請求書」を請求するために必要な書類
①請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書
②婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書またはそれぞれ
の戸籍の個人事項証明書のいずれかの書類)
③事実婚関係にある期間の情報通知書を請求する場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票等)

▶ 日本年金機構「離婚時の年金分割について」

年金分割について話し合う時の資料
・年金分割のための情報通知書
(年金事務所に①請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書、②婚姻期間等を明らかにできる書類。③事実婚の場合にはそれを明らかにする書類を持参して請求する。)

別居中の生活費について話し合う時

別居中や離婚調停中の生活費は、収入の少ない方が収入の多い方に婚姻費用として請求することができます。婚姻費用の算定は、夫婦の収入や資産に基づいてなされるので、相手方の源泉徴収票や給与明細書、収入証明書、通帳などのコピーを準備しておきましょう
収入証明書は市区町村役場で発行してもらうことができます。

別居中の生活費について話し合う時の資料
・相手方の源泉徴収票や給与明細書
・相手方の収入証明書(市区町村役場で発行してもらえる)
・通帳のコピーなど

親権・養育費について話し合う時

未成年の子どもがいる場合には、親権者を決めないと離婚届が受理されません。
家庭裁判所で親権を決める時には、子どもが幼いほど母親が優先される傾向があります。ただし、子どもの現在の生活環境を維持することが優先されるため、現在子どもを育てているのが父親であれば、父親が親権を持つこともあります。

養育費は、離婚後父母がその経済力に応じて負担するもので、子どもを引き取って育てる親に、引き取らない親が支払います。
養育費の額やいつまで支払うかについては、父母の話し合いで決めますが、調停では養育費の算定表を参考にします。

算定表は、負担する側の年収を縦軸、請求する側の年収を横軸となっていますので、自分の収入が分かる資料のほか、相手の収入が分かる資料も準備してきましょう。

親権・養育費について話し合う時の資料
・自分の源泉徴収票や給与明細書
・相手方の源泉徴収票や給与明細書
・相手方の収入証明書(市区町村役場で発行してもらえる)
・通帳のコピーなど
・子どもの現在の生活環境をまとめたもの

離婚調停当日の心構え

離婚調停は、すべて平日の昼間に行われます。
調停委員会は、家事審判官(裁判官)と男女各1名の調停委員で構成されています。最初は30分程度、それぞれから話を聞き、その後調停委員が相手の言い分を伝えます。1回の調停に2~3時間かかります。

離婚調停の持ち物

離婚調停に出かける際には、調停申立書や添付書類の控え、裁判所からの書類を準備します。また、準備しておいた夫婦関係を時系列でまとめたものや、自分と相手の源泉徴収票や給与明細書、財産のリストなどを持っていくようにしましょう。

離婚したい理由・夫婦の状況・親権についての希望・慰謝料・養育費・財産分与・年金分割などの自分の要望は、メモにしておくと当日落ち着いて話すことができるのでおすすめです。
その他、筆記用具を持参し、次回の調停に備えてメモをできるようにしておきます。
また、当日迷ったりしないように調停室の案内や手続き説明書面なども忘れないようにしましょう。

調停の持ち物リスト
・離婚調停申立書
・申立の際の添付書類
・離婚調停の呼び出し状
・主張をまとめたメモ
・主張を裏づける証拠
・筆記用具
・スケジュール帳(次回調停期日を決めるために予定を把握しておく)
・本人確認証
・認め印

清潔感のある服装・ていねいな言葉遣い

調停の服装は清潔感のあるものを
服装は普段着で大丈夫です。
スーツ姿の人もいればTシャツにジーンズの人もいます。服装が調停の結果を左右することはありませんので、自分らしい服装であれば十分です。
ただし、派手なメイクやアクセサリー、カラーリングは控え、露出の多い服装やだらしない服装は控えた方が無難です。清潔感のある身なりを心がけるようにしましょう。

また、高価なブランド物を身につけていると、「浪費家なのではないか」という印象をもたれてしまうことがあるので、避けましょう。

冷静な話し方も大切
服装だけではなく、丁寧な言葉づかいや冷静な話し方をすることも大切です。
相手の悪口や愚痴を感情的に口走ったり、自分の主張ばかりを延々と述べたりしても、調停委員にうんざりされるだけ。かえって印象が悪くなってしまうので注意しましょう。

幼い子どもがいる場合には
幼い子どもがいて預け先が確保できない時には、調停に子どもを連れていくこともできます。
家庭裁判所によっては、ベビーチェアやベビーベッド、ベビーカーの貸し出しをしているところもあります。

しかし、調停は2~3時間かかることもありますので、その間に子どもが泣いてぐずってしまうこともあるでしょう。したがって、できれば両親や友人などに預ける方が無難です。

遅刻・欠席はしない

調停は、本人の出頭が原則です。
仕事や病気などで、どうしても調停の指定日に行くことができない場合には、担当書記官に電話で相談して期日変更の申請をすれば、調停日を変更することもできます。

無断で欠席をすると、調停委員の心証を悪くすることになりますし、5万円以下の罰金を科せられることもありますので、注意しましょう。

調停委員のアドバイスに耳を傾ける

調停では、解決に向けて調停委員からさまざまなアドバイスを受けることがあります。この時、自分の希望通りのアドバイスでないからと言って、やみくもに反論してしまうと印象が悪くなってしまいます。調停委員のアドバイスにも耳を傾け、冷静に考えてみましょう。

用意してきたメモを読み上げるばかりで調停委員の質問とかけ離れた話を続けたり、調停委員が言い分を聞いてくれないからと言ってイライラした態度をとったりして、調停委員の話を聞かなくなる人もいますので注意してください。
結論を急ご、非協力的な態度をとることもマイナスになります。
たとえ相手が嘘を言ったり、作り話をしたりしていることがわかっても、感情的にならずに冷静に自分の気持ちを話すようにしましょう。

自分の思いをていねいに伝える

調停では、自分の言いたいことを自由に発言してもよいことになっています。
しかし、だからといって怒りや恨みばかりを主張したり、被害者意識ばかりを押しつけたりしても、調停委員の印象は悪くなるばかりです。

自分の言いたいことを正直に正確に伝えるためにも自分の主張を簡潔にまとめたメモを用意しておくとよいでしょう。
「離婚調停は勝ち負けを決める場所ではなく、互いの人生にとってよい解決を目指す場である」という冷静な視点を忘れないことが、離婚調停を有利に進める大切なポイントなのです。

次回調停に備えてメモをする

調停では、調停委員からさまざまな質問をされたりアドバイスをされたりします。この時疑問点があればていねいに質問し、その場で答えられなかったり判断に迷ったりした時には、次回調停に備えてメモをとっておきましょう。
ただし、メモばかりしている様子が調停委員に不快な印象を与えてしまうこともあります。適度に顔を上げて、調停委員の顔を見ながらうなづいてみせるなどの配慮も、忘れないでください。

なお、調停で分からないことがあったり、調停が自分に不利に進んでいると感じた時には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。「次回調停では、どのように回答すればよいか」についてアドバイスを受けておくと、次回調停までに必要な資料を準備して落ち着いて調停に臨むことができます。

離婚調停に勝つためには

離婚調停を有利に進めるためには、自分の考えや希望を正確に誠実に調停委員に伝え、自分の主張を裏付ける証拠を用意することが大切です。

とにかく証拠を揃える

離婚を考え始めたら、離婚したい理由(暴力や不倫など)の証拠は、できる限り集めておきます。そして、その証拠のコピーを最初の調停期日に提出するようにしましょう。

何が証拠になるかは、個々のケースによって異なりますが、暴力や不倫の動画や写真などがあると非常に有利になります。その他、暴言が書かれたメール、不倫相手とのSNSのやりとりなども小まめに保存しておきましょう。

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弁護士に依頼する

調停は、弁護士がいなくても進めることができますが、弁護士がいた方が必要な証拠や資料を準備することができますし、「調停委員にどのように主張すれば効果的か」などもアドバイスしてもらうことができます。

調停離婚は本人が出頭することが原則となっていて、弁護士が同席することができます。まれに両親や親せき、親しい友人の付き添いを家庭裁判所が認めてくれることはありますが、原則として弁護士以外が調停の場に同席することはできません。

「弁護士に依頼するのは、裁判になってから」と考える人もいますが、裁判に入ってから必要な証拠を準備するのは非常に困難です。
とくに離婚条件について激しく対立している場合などは、弁護士に依頼せずに調停や裁判を進めると、依頼した場合と比較して圧倒的に不利となってしまうケースがほとんどです。

相手が弁護士を依頼している場合や、夫婦に巨額の財産がある場合、置いてきた子どもを引き取りたいが状況が不利な場合などは、弁護士に依頼することを強くおすすめします。

弁護士に依頼すれば、裁判になるのを見越したうえで、裁判の際に有力な証拠のアドバイスをもらうことができますし、事実関係を整理し効果的に主張してもらうことができます。
弁護士費用が用意できない場合には、法テラスで弁護士費用を立て替える制度もあるので、利用を検討してみましょう。

まとめ

以上、離婚調停を有利に進めるために知っておきたいポイントについてご紹介しました。離婚調停は、何度か調停を重ね、離婚や親権、養育費、面会交流、慰謝料、財産分与、年金分割などについて、夫婦の合意ができた時に、調停が成立します。
調停が不成立となった時には、調停は打ち切りになり審判や訴訟に移行することになります。
できるだけ離婚調停を有利に進めるためにも、離婚を考え始めたら早めに弁護士に相談ししてアドバイスを受け、証拠を集め、必要書類の準備を進めるようにしましょう。

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