「別居したい」と思ったら知っておくべき8つのポイント

離婚したいと思った時の冷却期間として、離れて住んでみるのもひとつの手です。
「お金がない」「世間体が悪い」などの理由から、別居を躊躇する気持ちも分かりますが、毎日顔を合わせている方が、事態が悪くなってしまうこともあります。

しかし、感情的に家を飛び出すのはよくありません。後日離婚話をする時に、相手から「結婚生活を無責任に投げ出した」と主張されて、不利になってしまうことがあるからです。

そこで、この記事では、別居をしたいと思った時にぜひ知っておいていただきたい8つのポイントをご紹介します。

別居する前に知っておくべきポイント

離婚したいという気持ちが固まりつつあっても、実際に離婚するまでに冷却期間として離婚前に別居したいと思う人もいるでしょう。

実際、別居を離婚の前提ととらえず離れて住むことによって、お互いが冷静になることができれば、よりよい結果につながることがあります。

それでは、別居する時にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。

(1)別居は離婚のシミュレーション

別居した後実家に帰るのであれば、お金の問題はそれほど深刻ではないかもしれません。しかし、別居のためにアパートを借りる場合には家賃がかかりますし、新たに仕事を見つけなければならない必要もあります。
今は「相手の顔を見たくもない」と思っていても、離婚後には今よりずっと厳しい現実が待っていることもあります。

別居は、「それでもなお、相手と離婚したいか」「離婚して後悔しないか」をイメージするお試し期間ととあえることができます。

別居後の生活が、同居していた時より幸せだと思える場合には、離婚に向けて行動しましょう。逆に「別居してみたものの、相手ともう一度やり直したい」と考えれば、修復に向けた行動すればよいのです。

ただ、自分が別居を経験して「やはり元に戻りたい」と思っても、相手は別居を経験して「離婚したい」と気持ちが変化するかもしれません。その時には、別居を体験した互いの気持ちを話し合い、最終的に離婚を選択するか改めて判断すればよいということになります。

(2)相手の了承を得ておく

相手に黙って勝手に家を出てしまうと、相手から同居を求める調停および審判を申し立てられることもあります。

もちろん、相手から暴力を受けている場合には身の安全を確保するために、1日も早く別居をするべきですが、そのような事情がない場合には、相手に「冷却期間が欲しい」と伝え、了解を得ておく方がよいでしょう。

※ちなみに、相手が家庭裁判所に同居を求める調停および審判を申し立てても、同居することでかえって夫婦関係が悪化するような場合には、冷却期間をおく意味で、家庭裁判所でも同居請求を認めないケースもあります。

(3)別居期間が長いと離婚が認められやすい

一般的には、離婚前には別居を先行させておく方が、後に離婚調停などになった時に「夫婦関係が破綻している」と認められやすくなります。

別居して夫婦で話し合いをしてもまとまらず、調停、裁判となった時には、法律上の離婚原因があることを裁判所に認めてもらわなければなりません。
つまり、暴力や不倫などの事実がありそれを証明できれば、裁判になった時に裁判所から離婚を認めてもらえますが、「性格の不一致」というレベルでは、相手から「離婚したくない」と拒否した場合に離婚することができなくなってしまいます。

しかし、すでに別居していて相当の期間が経過していると「婚姻関係がすでに破綻している」と裁判所に認めてもらいやすくなるわけです。

この時の「相当の期間」については、それぞれの夫婦の事情によって異なりますが、だいたい3年を超えると「夫婦関係が破綻している」と認定されやすくなるようです。

ただし、自分が浮気をしているなどの事情があって離婚したい場合には、裁判所で離婚が認められるのは10年以上の別居期間が必要とされるケースもあります。

(4)「別居する時期」が財産分与の基準になる

離婚する時には、婚姻期間中に築いた財産を精算します。これを「財産分与」といいます。財産分与は、夫婦で築いた財産の精算なので、離婚をする原因がどちらにあるかにかかわらず請求することができます。

この財産分与の基準時は、「別居時」とされるのが原則です。別居時に名義がどちらになっているかにかかわらず、別居した時点の財産が夫婦共有財産として、財産分与の対象となります。

分与の方法は、夫婦で話し合って自由に決めることができますが、話し合いがつかなければ家庭裁判所の調停を申し立てることになります。

なお、別居すると夫婦の預貯金がいくらあるのかなど、分からなくなることが多いので、別居する前に夫婦の共有財産はすべてリストアップしておいて、評価額を計算しておきましょう。

別居前にリストアップしたい夫婦の共有財産
・ 預貯金
・ 現金
・ 不動産
・ 家財道具
・ 自動車
・ 骨とう品・美術品・宝石

(5)別居後の生活費は請求できる

別居時に気になるのが、お金の問題です。
しかし、夫婦は法律上同程度の生活を続けるために、お互いを扶養する義務があります。別居しても、離婚届を提出するまでは婚姻状態が続くことになりますので、その間の生活費は、婚姻費用として生活費を親街に分担しなければならないのです。

とくに、専業主婦だった人が子連れで別居した場合にはすぐに働くのが難しいのに、相手が自主的に生活費を送金してくれないケースも多々あります。その場合には、相手に「婚姻費用分担調停」を申し立てて生活費の送金を求めることができます。

婚姻費用の額は自由に決めることができますが、夫婦の収入の多い側が少ない側の生活費を分担することになります。

(6)子どもは連れて別居する

子どもがいて、離婚後親権が欲しい場合には、別居時に必ず子どもを連れて行くようにしましょう。
裁判所が離婚をするうえで親権者を決める場合には「現状維持の原則」があり、子どもの環境が変わらないことを重視します。つまり、現在子どもを監護している親の側を優先的に親権者にする傾向にあるからです。

相手のところに子どもを残したまま別居してそのまま離婚すると、「子どものためには、相手側で生活することが望ましい」として、相手側に親権が認められる可能性が高まってしまいます。「先に別居し、生活が落ち着いてから子どもを迎えに行こう」と思っていても、相手が子どもを引き渡してくれないこともあります。
ただし、相手のところに置いてきた子どもが暴力を受ける可能性がある時には、地方裁判所に「人身保護請求」の手続きをとることができますので、すぐに弁護士に相談してください。

(7)相手の勝手な財産処分を防ぐ

別居すると、元の家に気軽に戻ることができなくなることがあります。
そして、別居後いつの間にか「家を勝手に売却されていた」「預貯金がなくなった」など、財産を隠したり処分したりされることがあります。そんなことになれば、離婚時に支払われるべきお金が支払われないということになりかねません。
そこで、このような事態を防ぐためには相手が勝手に財産を処分しないように、「保全処分」を裁判所に申し立てておく方法があります。

ただし、この保全処分を行う時には、財産を申し立てる側が指定する必要があります。そこで、別居前に相手の給与や預貯金、不動産などをしっかりリストアップしておくようにしましょう。

(8)別居したいけどお金がない時は

「別居したいけど、お金がない」と、別居や離婚を躊躇している人もいるでしょう。
しかし、もしDVを受けているなどの事情がある場合には、DVシェルターを利用することができます。

お金のことを心配するよりもまず、避難することを考えてください。
公的な施設の他、NPO法人や社会福祉法人などの民間団体によって運営される民間シェルターも増えています。

配偶者暴力相談支援センターに問い合わせれば、このような民間シェルターを紹介してもらうこともできます。

全国統一ダイヤル「暴力相談ナビ」
0570-0-55210

▶ DVシェルターの利用法&知っておきたい8つのこと

別居して離婚したい時の相談窓口

(1)自治体など

ハローワークを利用することで、求人情報を提供してくれたり、就職に必要な資格や技術訓練などを受けられることもあります。

また、東京都であれば、都営住宅に応募する際に当選率の優遇措置がありますし、母子(父子)家庭対象の無利子貸付金制度もあります。

その他、自治体ごとに独自の支援制度を設けていることもありますので、役所に問い合わせをしてみましょう。

ひとり親家庭が利用できる制度や手当については、以下の記事にまとめていますので、あわせてご覧ください。

▶ ひとり親家庭が利用できる制度・手当・支援まとめ

(2)弁護士

離婚を前提に別居をする時には、早めに弁護士に相談して、どのような準備をするべきかアドバイスをもらっておくことをおすすめします。
協議離婚や調停離婚では、弁護士に依頼しないで当事者だけで離婚を成立することもできますが、離婚問題をできるだけスムーズに解決したいなら、早めに弁護士に相談して、養育費や財産分与などの解決策を聞いておく方が、後々交渉するうえで有利です。

協議離婚の場合でも、代理人として相手と交渉をしてもらえば精神的なストレスが軽減されますし、有利に交渉を進めることもできます。

まとめ

以上、別居したいと思ったら知っておくべき8つのポイントについてご紹介しました。
別居は、相手の良さや自分の反省点に気づくことができるというメリットがありますし、別居することで離婚後の生活をイメージすることができるというメリットもあります。
ただし、別居後に離婚することになったことも踏まえ、相手に勝手に財産を処分されないように財産をリストアップしておきましょう。