DNA鑑定|親子関係の調査の方法と費用

嫡出否認の調停や親子関係不存在確認の調停などで、子どもとの親子関係がないことを鑑定するために、家庭裁判所の調査でDNA鑑定が行われることがあります。
親子鑑定のためのDNA鑑定に使われる検体は、主に髪の毛と口内上皮です。

現代はDNA鑑定の技術も進歩していて、妊娠中の胎児のDNA鑑定を行うこともできます。

ここではDNA鑑定の方法や、親子関係が認められなかった場合の養育費の支払い、慰謝料や損害賠償の請求についてご紹介します。

親子関係を調査するためのDNA鑑定

現代の科学では、DNA鑑定をすれば非常に高い確率で親子の血縁関係を明らかにすることができます。

DNA鑑定が行われるのは、親子関係不存在確認や認知事件において、血液型だけでは親子関係を証明できないケースです。

しかし、DNA鑑定の結果親子関係がないとされたからと言って、すぐに法的な親子関係がなくなるわけではありません。
DNA親子鑑定の法律はまだ整備されていないため、法律上(戸籍上)は、親子関係はそのまま存在することになるからです。
したがって、親子関係を否定するためには、別途①嫡出否認の訴えもしくは、②親子関係不存在確認訴訟といった、法的な手続きをとっていくことが必要になります。

①嫡出否認の訴えや②親子関係不存在確認訴訟では、DNA鑑定は、大変重視されていますから、これらの法的な手続きの中でDNA鑑定を行っていくことになります。

DNA鑑定はいつでも鑑定可能なのか?

現代はDNA鑑定の技術も進歩していて、妊娠中の胎児であっても7~8週目であればDNA鑑定を行うこともできます。
しかし、出生後のDNA鑑定に比べれば妊娠中の鑑定の精度は低くなりますし、母体への影響も懸念されます。したがって、DNA鑑定するのであれば、出生後に鑑定する方が望ましいといえます。

DNA鑑定の方法

DNA鑑定では、通常口内上皮と毛髪を使って鑑定を行います。
口内上皮の検体は、医療用綿棒で頬の内側を軽くこするだけで簡単に採取できます。
このほか、骨、爪、へその緒、ガム、歯ブラシ、タバコの吸殻などでも、人の細胞が付着していればDNA鑑定を行うことができます。

DNA鑑定の費用と期間の相場

裁判でDNA鑑定を行う場合には、DNA鑑定の費用は、原則申し立てた方の負担となります。鑑定費用は10万円程度で、鑑定結果は約10~15日間で出る場合が多いようです。

DNA鑑定を拒否するとどうなるか

親子関係を確認する方法は、DNA鑑定だけではありません。外観的客観的に子の母と前婚の夫との性交渉が不能であることを立証するなどの立証方法もあります。
したがって、「DNA鑑定は受けない。別の方法で立証する」と主張することも可能です。
ただし、正当な理由もなくDNA鑑定を拒否すると、その後訴訟となった場合に心証的に不利になってしまう可能性もあります。実子であるという自信があっても実子ではないかもしれないという不安があっても、DNA鑑定は受けておいた方がよいでしょう。

親子関係が認められなかった場合

たとえば夫から親子関係がないと訴えられ、DNA鑑定が行われた結果夫の子ではないことが判明した場合には、妻は慰謝料や損害賠償は請求されるのでしょうか。また、その時すでに受けとっていた養育費はどうなるのでしょうか。

慰謝料請求

DNA鑑定で夫の実子でないことが判明したことで、結果的に妻の不貞行為が認められた場合には、妻が夫から慰謝料を請求される場合があります。
慰謝料を請求するには期限があり、「損害及び加害者を知ったとき」から3年です。

養育費の返還請求

DNA鑑定の結果を受けて、公的にも父親でないことが証明されれば養育費の支払い義務も消滅します。自身の子どもだと思って養育費を支払っていたなどの事情がある場合は、養育費の返還請求が可能な場合があります。また、過去の養育費を損害賠償として請求できる可能性もあります。

まとめ

以上、DNA鑑定についてご紹介しました。
DNA鑑定は、夫婦ともに気が重いものですが、その後の子どもの人生を大きく左右することがあります。弁護士と相談したうえで前向きに検討するようにしましょう。