協議離婚|進め方と注意すべき7つのポイント

離婚の方法は、大きく分けて協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4種類があります。協議離婚は、夫婦の話し合いによって離婚を決める方法で、日本でもっとも多いのがこの協議離婚です。

協議離婚をする際には、協議の内容や実行方法についてきちんと取り決めて、それを文書化しておかないと、離婚後にトラブルになるケースが多いので注意が必要です。

協議離婚とは

離婚は、大きく協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つの種類に分けることができます。
協議離婚は、夫婦の話し合いによって離婚を決める方法で、日本では最も多い離婚の方法です。ただし、このなかには夫婦での話し合いがまとまらず弁護士などが仲介したケースも含まれます。

都道府県別協議離婚の割合を見てみると、協議離婚の割合が最も高いのは沖縄、次いで、大阪、高知、東京などが続いていることが分かります。


厚生労働省「平成21年度「離婚に関する統計」の概況」

協議離婚以外の離婚

協議離婚以外の離婚の仕方は、調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。

調停離婚
夫婦で離婚の合意ができない場合は、冷静に話し合いが進められない場合に、夫婦のどちらかが申立人となって、家庭裁判所で行われる調停によって離婚する方法です。調停委員が夫婦双方の言い分を聞き、離婚条件の合意などについて調整をします。
調停は強制ではないので、話し合いが決裂すれば不調に終わります。

審判離婚
調停がまとまらなかった場合に、裁判所が審判によって離婚が妥当であるという決定をする場合があります。審判は、裁判の判決と同じ効力を持ちますが、夫婦のどちらかが異議申し立てを行えば無効となります。そのため、実際に審判離婚をする人はほとんどいません。

裁判離婚
調停でも離婚の合意ができず、審判が異議申し立てにより無効となった場合には、夫婦の一方が家庭裁判所に離婚訴訟を起こすことができます。
調停を経ずに裁判を起こすことはできません。

なお、離婚裁判の途中で裁判所から和解を勧められ、双方が合意して離婚することを「和解離婚」、離婚裁判の途中で訴訟を起こされた側が訴訟を起こした側の請求を全面的に認めて離婚することを「認諾離婚」といいます。

日本では、調停前置主義という規定がありますので、協議離婚ができないからといって、いきなり裁判を起こすことはできません。つまり、調停を申し立ててからでないと裁判には進むことができないのです。
(※ただし、相手が3年以上生死不明の時には、協議をすることも調停で話し合うことも不可能です。その場合には、調停をしないで裁判を起こすことができます。)
したがって、協議離婚ができない場合には、次に離婚調停を申し立てることになります。

協議離婚の主な流れ

離婚しようと決めた時、もしくは相手から離婚を切り出された時には、まず夫婦で話し合いをすることになります。しかし、感情的に話をしても円満な解決は難しいといえます。したがって、離婚協議の前に、財産分与や親権など話し合うべきポイントを整理し、離婚後の生活をシミュレーションするなど、しっかりと準備を行いましょう。

①離婚後の生活を考える
離婚を考えた時には、「今すぐにでも離婚したい」と感じるものです。
確かに、受け取る財産も子どものことも妥協すれば、すぐに離婚することも可能かもしれません。しかし、感情に流されるまま離婚を急いでも、自分の希望に沿った離婚を実現するのは難しいでしょう。
また、長く専業主婦を続けていた場合には、離婚後に経済的な問題が起きないかしっかり考える必要があります。さらに子どもを引き取ることになれば、状況はもっと深刻です。離婚後は、毎日働きながら子どもを育てていく必要があるのです。
「養育費がもらえるだろう」という人もいますが、今後も相手が確実に支払ってくれる保証はどこにもありません。国や自治体の支援制度は整いつつありますが、まだまだ不十分です。したがって、これらの問題を本当に乗り越えていけるかを考える必要があります。
離婚は急ぎ過ぎると危険です。「冷却期間を設ける」「第三者の意見を聞く」など、本当にその結論で後悔しないかを十分過ぎるほど考えるようにしましょう。

②離婚協議の前に準備をする
離婚の話し合いが長引いたり決裂したりするのは、それだけ取り決めるべき事項が多いからです。お金の問題や子どもの問題を未解決のまま離婚すれば、トラブルの原因になります。
そこで、協議を始める前に話し合うべきことをリストアップしておきましょう。離婚協議をどれだけスムーズに進められるか、どれだけ自分の望み通りの離婚をすることができるかは、この準備作業にかかっているといっても過言ではありません。
財産分与の対象となるリストや、離婚までの生活費をどのように確保するか、相手の不倫の証拠など、できるかぎりの資料は集めておきましょう。
実際にどのような準備をしておくべきかは、弁護士などの専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。もらう権利があるのにそれを把握しておかないと、もらい損ねてしまうので、事前に下調べをしてリストを作っておきましょう。

③離婚を切り出す
できるかぎり有利に話し合いを進めるためには、まずは相手がどう出てくるかを知ることが大切です。そのため、相手の性格を踏まえて作戦を立てると離婚の話し合いを有利に進める可能性が高参ります。
これまでの結婚生活のなかで、自分の言動や態度に相手がどのように反応したのか、怒った時はどのような時かを思い出してみましょう。嫌がる言葉や態度で交渉を始めても、相手を意固地にさせるだけなので、よくありません。
相手の性格を見定めて綿密な計画を立ててから、離婚を切り出すのが、その後の協議を有利に進めるためのコツです。

④夫婦で離婚条件など協議する
離婚協議では、財産分与や慰謝料、子どもの親権や養育費、面会交流など、さまざまな事項について取り決めをする必要があります。話し合うべきポイントについては、後ほど詳しくご紹介しますが、離婚後の生活のことを考えれば相手に「欲深い」と言われようとも、できるだけ有利な条件で離婚をするようにしましょう。
ただし、有利な条件で離婚をしたいのは相手も同じです。お互いに無理な条件を主張しても協議はうまくいきません。自分の希望に「これだけは譲れない」「これは妥協できる」」などの優先順位をつけるなどしておくと、交渉しやすくなります。

⑤離婚協議書を作成する
協議で取り決めたことは、必ずその内容を離婚協議書として文書に残しておきましょう。離婚協議書は、公正証書などにしておくと、安心です。
公正証書とは、公証人が作成するもので、金銭の支払いについては強制執行を受諾した旨を記載すること尾で、支払不履行があった時に給料を差し押さえることができます。

⑥離婚協議書を作成する
離婚条件について話し合いが済めば、離婚届を記載して提出します。
協議離婚の場合には、離婚届を提出する時に証人が2名必要です。
離婚届の記載方法や注意点については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
▶ 離婚届の書き方|証人は何人必要?書き方は?

協議離婚で話し合うべき7つのポイント

離婚協議のポイントは、まず双方の離婚の意思を確認することから始まります。そして、財産分与や慰謝料、子どもがいる場合には親権者や養育費、面会交流について話し合いを進めます。
ここでは、離婚協議で話し合うべき7つのポイントについてご紹介します。

(1)離婚に関する意思

まずは、「離婚したい」という意思をはっきり伝えます。
この時は、感情的に不満やグチをぶつけるのではなく、説得力のある内容を用意するようにしましょう。
ただし、相手が激高して暴力をふるう可能性がある場合には、離婚の意思を2人きりで伝えるのは危険です。あらかじめ弁護士に相談して、別居を先に開始して身の安全を確保してから弁護士から離婚の意思を伝えてもらうようにしましょう。

(2)財産分与の分配方法

婚姻中に築いた財産は、原則として折半します。
そこでまずは、対象となる共有財産をリストアップしてどのように分けるかを交渉します。夫婦であっても、独身時代の貯金などは「特有財産」として、財産分与の対象とはなりません。そこで、何か共有財産で何が特有財産かを分類しながら、リストを作成するのです。
なお、財産分与については「不倫をした側は、財産を受け取れない」と考える人もいますが、不倫をした側も財産分与を請求することはできます。

財産分与については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
▶ 財産分与|対象となる財産・分ける時の注意点

(3)慰謝料について

相手から、モラハラや暴力などで精神的な苦痛を受けている場合には、慰謝料を請求することができます。慰謝料は常に請求できるものではなく、また請求できたとしても金額はいくらが妥当かを決めて伝えます。

(4)子どもの親権者

親権者とは、父母が未成年の子が社会人になるまで養育するために、子を看護教育し、この財産を管理する親の権利義務で、責任者です。日本では、結婚している間は共同親権で、離婚をすると単独親権になります。
子どもがいる場合には、離婚届に未成年の子供の親権者をどちらにするかの記載がないと受理されません。つまり、親権者を決めないと離婚ができません。
子どもの年齢や環境から、どちらの親に育てられた方が安定して子どもを育てられるかを最優先に考えます。
双方とも子どもの親権を希望する場合には、親権者と監護権者に分ける方法もあります。

(5)子どもの養育費

養育費とは、離婚後に離れて暮らす親から子どもが当然に受けるべき権利です。
しかし、養育費の支払い率は2~3割というのが現状です。養育費の取り決めがなくても離婚届は受理されるので、早く離婚したいという気持ちから、養育費の取り決めをしないで離婚してしまうケースがありますが、それは非常に危険です。
離婚直後は支払っていても、時間が経つと養育費を支払わなくなる責任感のない親は実に多いのです。
しっかりと取り決めをして、後述する離婚協議書を作成しておきましょう。

(6)子どもの面会交流

「離婚したら、子どもには会わせたくない」という人も多いのですが、離婚後に離れて暮らす親にも、当然子どもに会う権利があります。月に何回会うか、どのようにして会うかも取り決めておきましょう。
夫婦間で協議がまとまらない場合には、調停などで取り決めることもできます。
なお、相手のハラスメントや家庭内暴力で、子どもを相手に会わせるのが困難な場合には、面会交流を支援してくれる支援団体もあります。面会交流の日時の仲介や、子どもの引き渡し、面会時の立会いまで行っています。
「面会交流支援団体」で検索し、近くの団体に問い合わせをしてみるのもおすすめです。

(7)離婚協議書の作成

協議で取り決めたことは、その内容を離婚協議書、合意書などの文書にして公正証書にしておきましょう。
養育費などお金に関する内容については、離婚後に支払いの約束が守られなかった時に調停や裁判をしなくても、取立てができるようになります。
「公正証書なんて、大げさでは」と思うかもしれませんが、前述したとおり、離婚後に養育費が支払われなくなるケースは多々あります。それに、公正証書といっても、それほど手続きが複雑なものではありません。夫婦で話し合って決めた内容を覚書にして、その覚書を公証役場に持参すれば、作成してもらうことができます。
覚書や離婚協議書を公正証書にする方法については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

後からリンク

まとめ

以上、協議離婚の意味や進め方、注意すべき7つのポイントについてご紹介しました。
協議離婚は、日本でもっとも多い離婚の仕方ですが、自身に有利に協議を進めるためには、事前に相手とどのように交渉するのか作戦を立て、必要な資料を収集するなど、綿密な計画が必要です。
弁護士というと、調停や裁判から依頼するとイメージする人もいますが、できれば、相手に離婚を切り出す前に弁護士に相談するのがおすすめです。
こちらが有利に交渉するためのテクニックや、準備しておきたい資料などについてアドバイスをもらうことができるからです。