子どもが未成年の場合には、親は子どもにかかる生活費、教育費、医療費などを養育費として支払う義務があります。これは、子どもの権利です。
しかし、養育費は離婚後に支払われなくなるケースが多々あります。厚生労働省のデータによると、離婚した父親からの養育費の受給状況は、「現在も受けている」がわずか28.1%となっています。
▶ 厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果」
しかし、養育費は親権者でなくても当然負担しなければなりませんし、これは親の義務であり子の権利でもあります。
この記事では、養育費を支払ってくれない場合の対処法についてご紹介します。
Contents
養育費とは
養育費とは、衣食住にかかる費用のほか、学費や教育費、娯楽費など未成年の子どもが生活していくうえで必要な費用のことをいいます。
親は、子どもが一人前の社会人として成長するまで子どもにかかるお金を負担する義務があります。そして、これは子どもの権利でもあります。
たとえ両親が離婚しても、親であることに変わりはないのですから、子どもの養育費は当然父母が分担すべき費用です。
しかし、離婚時に養育費について取り決めをしていても、離婚すると養育費を支払わなくなるケースは実に多いものです。
このような養育費トラブルを防ぐためには、離婚時に養育費の取り決めをしっかりとしておくことが大切です。
協議離婚の時は公正証書にする
協議離婚の場合には、父母で話し合いがまとまって離婚届を提出すれば離婚が成立しますが、養育費については、ただの口約束のままにしておくべきではありません。
将来的に養育費の支払いなどの約束がきちんと守られるよう、離婚協議書を作成して公正証書にしておきましょう。強制執行認諾文書付き公正証書を作成しておけば、地方裁判所に強制執行を申請することができるので、確実に取り立てることができます。
このような文書がない、あるいは文書はあっても覚書程度のものしか作っていない場合には、家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てることができます。
調停離婚では、調停調書が作成される
家庭裁判所の調停を経て離婚する「調停離婚」の場合には、調停調書が作成されるので、不払いの時に法的手段をとることができます。
いきなり強制執行するケースもあれば、履行勧告や履行命令といった裁判所が支払いを催促してくれる制度も利用できます。
裁判離婚では、「判決書」が出される
裁判離婚の場合には、判決書が出されるので、調停離婚の場合と同じように履行勧告や履行命令を出してもらうことができますし、相手がそれに従わなければ強制執行を行うことになります。ただし、履行命令に従わないと10万円以下の過料が科せられる場合もあるので、強制執行前に支払うケースが多いようです。
養育費の支払いが滞った時(取り決めがない場合)
協議離婚で、養育費について取り決めがなく離婚した場合には、離婚後に養育費の支払いが遅れる、または支払いがなくなるケースが多々あります。
このように養育費の支払いがなくなった時には、段階的に支払いを求めていきます。
早めに催促をする
まずは、電話やメールで催促しましょう。相手と交渉することについて気が重いのは分かりますが、放置していると、相手は「支払わなくても困ることはないだろう」と、ますます支払う気がなくなってしまいます。
電話やメールでも返信がない場合には、内容証明郵便にすると効果があります。
内容証明郵便とは、郵便物の文書内容を証明するサービスです。用紙の大きさや筆記具の指定はありませんが、字数と行間は1行20文字以内、用紙1枚26行と決まっています。作成手順については郵便局に問い合わせることもできます。なお、電子内容証明(e内容証明)なら、文書データを送信すれば自動的に処理されるうえ、24時間受け付けてくれます。利用するためには、事前の登録と専門のソフトウェアのインストールが必要なので、日本郵便のホームページで確認してみましょう。
養育費請求の調停を申し立てる
離婚時に離婚協議書の公正証書などがない場合には、家庭裁判所に養育費請求の調停、審判を申し立てるところから始めます。
なお、いちど決まった養育費であってもその後に事情の変更があった場合(再婚した場合や大学進学など)には、増額を求めて再度調停を申立てることもできます。
話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、裁判官が審判をすることになります。
申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
申立書の記載方法については、以下を参考にしてください。
養育費の支払いが滞った時(取り決めがある場合)
離婚時に強制執行認諾文言付き公正証書を作成していた時や、調停離婚で調停調書、裁判離婚で判決書を作成している場合には、すぐに法的手段をとることができます。
協議離婚の場合
協議離婚で、強制執行認諾文言付き公正証書を作成していた時には、地方裁判所に強制執行を申請することができます。
強制執行は、地方裁判所が相手の給料や預貯金などの一部を差し押さえ、強制的に支払わせる制度です。強制執行の手続きを行うためには、養育費に関する請求権の存在を明らかにした債務名義の提出が必要です。
債務名義とは、公正証書については、強制執行認諾約款(「養育費の支払いが不払いになったら、強制執行をしてもよい」という旨の記載)が付されていることです。したがって、執行文の付与を受ける必要がありますので、公証人役場に交付申請をしてください。
なお、強制執行は本来未払い分に対して行われますが、法改正によって養育費については将来分についても差し押さえることが可能となりました。
強制執行する時には、相手が支払える状況なのかもよく確認する必要があります。
相手が支払いたくても支払えないような状況であれば、無理に取り立てるのは考えものだからです。強制執行に踏み切れば、相手の社会的信用に悪影響を与えて、かえってマイナス効果を招く可能性もあります。
したがって、まずは相手とよく話し合い、相手が支払う能力があるのに自分勝手な言い訳をして支払わないような場合には、給料から天引きする旨を伝え、強気で催促するのがよいでしょう。
調停離婚、裁判離婚の場合
調停離婚、裁判離婚の場合には、家庭裁判所に電話するなどして、履行勧告・履行命令を出してもらうことができます。それでも相手が養育費の支払いに応じない時には、裁判所から強制執行を行うことになります。
ただし、裁判所の履行命令に従わなければ、10万円以下の過料が科せられることもありますので、ほとんどのメースで勧告に応じるようです。
まとめ
以上、養育費が支払われない時に、支払わせる方法をケース別にご紹介しました。
嫌いな相手と、別れた後まで養育費のことで関係を続けていくのは、確かに大きなストレスを感じるものです。しかし、養育費は子どもの権利です。子どもが成人するまでは無視をするわけにはいかないのです。
「どうせあてにしていない」「相手と関わりたくない」など、その時の感情に流されて放置せず、何とか気持ちを切り替えて、「可愛いわが子の権利を守ろう」という気持ちで、感情的にならずにしっかりと対処しましょう。
そして、相手が誠意のある対応をしてくれない時には、法的手段を使うしかありません。もし不明点がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
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