面会交流権|会う頻度、会う場所などはどう決める?拒否はできる?

面会交流

離婚によって子どもと離れて暮らすことになった親にも、子どもに会ったり連絡をとる権利が認められています。これを「面会交流」といいます。

嫌いで別れた相手には、子どもを会わせたくないという思いを持つ人もいるでしょう。

しかし、面会交流は子どもの権利でもあります。同居している親が「別れた相手と会わせたくない」と思っていても、正当な理由がない限り拒否することはできません。

面会交流については、離婚後にトラブルになるケースが多々ありますので、離婚する前に会う頻度や面接の時間、場所などの条件を具体的に決めておきましょう。もし話し合いがつかない時には、面会交流の調停を申し立てることになります。

面会交流とは

面会交流とは、離婚や別居によって子どもと離れて暮らすことになった親が、定期的に子どもと会ったり電話やメールなどで交流することをいいます。

具体的には、以下のような行為も含まれています。

・直接会って一緒に過ごす
・電話・メール・手紙のやり取りをする
・プレゼントを贈る
・授業参観や学校行事などに参加したり、見学したりする
・子どもの写真などを定期的にもらう
・離れて暮らす祖父母などに会う

面会交流は、両親が離婚しても子どもが健やかに成長するために必要な権利であるという側面が強く、子どもの福祉と利益を最優先に考えます。

2011年に民法の一部が改正され、父母が協議の離婚をする時には、協議で定める「子の監護について必要な事項」の具体例として、「父または母と子の面会およびその他の交流」が明示されました。

したがって、裁判所でも子供のに悪影響を及ぼすような特別な理由がない限りは、面会交流を認めるべきとしています。

離婚後は、面会交流のトラブルが多く発生します。とくに多いのが養育費と面会交流をめぐるトラブルです。つまり、「払わないなら、会わせない」「会わせてくれないなら、払わない」といったトラブルです。

しかし、本来養育費と面会交流は法的には別のものです。養育費も面会交流も子どもの利益のために必要であるということを忘れずに、子どもの権利と健やかな成長を第一に考え、約束を守っていくことが大切です。

面会交流の権利は放棄させられない

面会交流は、子どもの権利であり親の権利でもあります。
したがって、離婚する時に「子どもと会わないと約束すれば、養育費はいらない」などと言って、面会交流の権利を放棄させることはできません。そのような取り決めは無効となります。

それに、どちらの親とも会えるという状況は「父親にも母親にも愛されている」と子どもが認識できることになるので、子どもの成長にとってプラスになる場合が多いと考えられます。
また、「面会交流をしている親は、養育費もきちんと払う傾向が強いという調査結果もあります。離れて暮らす親に「親の自覚」をずっともたせ「親の自尊心」を維持するためにも、面会交流は実に効果的なのです。

もし強硬に会わせないと、相手に面会交流の調停を申し立てられることもあります。

子どもに害があれば、まずは様子を見る

原則として面会交流の権利は放棄させることはできませんが、子どもに害がある場合には様子を見ることもできます。たとえば、子ども自身が面会するのを拒否している場合などです。また、離婚後は子どもの環境が大きく変化するので、面会が子どもにとって負担になる場合もあります。

このような事情がある場合には、「子どもに害があるから、会わせられない」と一方的に主張するのではなく、双方で話し合って面会交流の回数を減らすなどして、様子を見るようにしましょう。

面会交流を制限できる場合

面会交流は親の権利ですが、だからといって子どもにとって明らかにマイナスである場合には、本来の目的に反するので、面会を拒否したり制限することができます。
面会交流を拒否する理由をきちんと説明したうえで面接の拒否を申し入れても、相手が納得しない場合には、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に面会拒否の調停を申立てます。
面会を拒否できる場合とは以下のような場合です。

・暴力をふるう
・養育費を支払う義務・能力があるのに支払わない
・子どもに一方の親の悪口をいう
・連れ去りのおそれがある
・子どもが面会を嫌がる
・子どもにふさわしくないことを体験させる
・子どもに金銭を要求する
・面会交流を利用して復縁を迫る

面会交流で取り決めるべきこと

面会交流をどんな条件で行うかについては、父母の話し合いで自由に決めることができます。
しかし後々「そんな条件で決めたつもりじゃなかった」とトラブルになる場合が多いので、できる限り具体的に決めましょう。

面会交流について決める時に注意する点は以下のとおりです。

・面会交流ができるかどうか
・面会の頻度はどれくらいか(〇月〇日〇時~〇時 代替日〇月〇日〇時~〇時)
・会う場所(特定するか、どこでもよいか)
・送り迎えの時間と場所(〇時 場所 ○○)
・宿泊について(可 不可 その都度話し合う)
・遠出について(可 不可 その都度話し合う)
・祖父母との面会について(可 不可 その都度話し合う)
・プレゼント・小遣い(クリスマス・誕生日・進学祝い)
・行事への参加・見学の可否(見学のみ可・接触は不可など)
・長期休暇の場合(夏休みや冬休み、連休中の過ごし方)
・間接的な交流の方法(手紙や電話、メールなどのやり取りの有無、方法)
・子どもの写真の交換 (定期的に行う、不定期に行う、行わない)

「面会は第三土曜日の〇時~〇時、その日が都合悪ければ、翌週に振替」「春休み・夏休みなどの長期休暇は、第三土曜日としないで、〇日間を面会交流として充てる」など柔軟な代替案を記載しておくのもおすすめです。

また、子どもは成長するので、その成長にあわせて条件もその都度調整するというように、あらかじめ取り決めておくのも大切です。

話し合いで決まった面会交流の条件については、会う頻度や面接の時間、具体的な方法などについて文書化しておきましょう。
実際、「面会交流の取り決めが守られない」と、離婚後にトラブルになるケースは多々ありますので、このような事態を避けるためには、面会交流について取決めた内容を離婚協議書に記載し、公正証書にしておくことをおすすめします。

面会交流の禁止事項も決めておく

面会交流については、禁止事項についても具体的に決めておくと安心です。
実際、○時間会うだけと子どもを送り出したのに「子どもが泊まりたいと言っている」と、子どもを時間通りに送り届けなかったり、時間通りに帰ってこなかったりすることはよくあります。
面会交流は子どもの成長のためではありますが、親が安心して子どもを送り出せるように、あらかじめ禁止事項まで具体的に決めて、それを文書化しておくことをおすすめします。そして、父母間でそれをきちんと守ることが、面会交流をスムーズにするためのコツでもあります。

話し合いがつかない時は「面会交流の調停」

面会交流について当事者間での話し合いが難しい場合には、家庭裁判所に面会交流の調停を申立てます。面会交流の取り決めが守られない場合や、正当な理由がなく面会交流を拒否された場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申立てて、取り決めを履行するよう勧告してもらう方法があります。

・調停による解決
協議離婚で離婚協議書を作成したが、公正証書にしていない場合には、まず相手の住所地を管轄する家庭裁判所に「面会交流調停」の調停の申立てをします。調停で解決できないときは、自動的に審判に移行します。
調停で解決すると「調停調書」、審判で解決すると「審判書」が作成されます。
そして、これらの文書をもとに裁判所から面会交流を履行するよう勧告・命令などをしてもらうことができます。

・裁判所による履行勧告
調停で面会交流について取り決めたにもかかわらず、その取り決めが守られない場合には、家庭裁判所に「履行勧告」を申立てることができます。
履行勧告を申立てると、家庭裁判所から面会交流の約束を守るように勧告をします。

・裁判所による履行命令
調停からの履行勧告も守られない場合には、家庭裁判所に履行命令を申立てます。この履行命令に従わない場合には10万円以下の過料が命じられます。

・裁判所による間接強制
履行勧告にも履行命令にも従わない場合には、間接強制を申立てる方法もあります。
間接強制とは「1か月に1度は面会させよ。違反した場合にはその都度10万円を支払え」というような内容を裁判所から命令し、約束をきちんと守らせようとする制度です。

面会交流の調停は、離婚調停と同時に申立てることもできます。
調停では、調査官が子どもの生活状況や精神状態などを調査します。
子どもと面会した際の様子を表情や態度で見極めるために、普段養育していない親と面会交流をさせることもあります。
(※面会交流している様子は、子どもを養育している側の親が確認できます。)
調停が不成立となった場合には、自動的に審判に移行します。

面会交流調停の申し立て方法

面会交流は、相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てることができます。

申立書の記載方法は、以下を参考にしてください。

面会交流調停の申立書

▶ 家庭裁判所「面会交流調停」

面会交流調停の申し立てに必要な書類

申し立てに必要な書類は、以下のとおりです。

①申立書及びその写し1通
②標準的な申立添付書類
未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

その他、個々の状況に応じて、別途書類の提出が求められることもあります。

まとめ

以上、面会交流の意味や取り決め方、面会交流調停の申し立て方法などについてご紹介しました。面会交流は、子どもの健やかな成長のために必要なものであり、原則として拒否をすることはできません。しかし、実際には子どもの面会交流に関するトラブルは多々あります。このようなトラブルを防ぐためにも、離婚時には面会交流について細かく取り決めをして、その内容を公正証書にしておくことをおすすめします。

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