面会交流を拒否されたら|履行勧告・間接強制できるのはどんな時?

面会交流拒否

面会交流の拒否は、特に子どもにマイナスでだという特別の事情(子どもが嫌がる、親権者の暴力が心配など)がない限りは、原則として許されません。

面会交流について正当な理由もなく拒否されたり、話し合いすらできないというような場合には、家庭裁判所に面会交流を求める調停を申立てることになります。

家庭裁判所で面会交流について決定されると、その取り決めの内容を実行するよう命令を出してくれます。
裁判所からの命令に相手が従わない場合には「履行勧告」「間接強制」という手段が取られる場合もあります。

面会交流とは

面会交流は、離婚や別居によって子どもと離れて暮らすことになった親が、定期的に子どもと会ったりメールや電話で交流したりすることをいいます。
面会交流は親の権利と考えられがちですが、子どもの都合に合わせ頻度や時間を考慮して、慎重に決めることが大切です。

面会交流のトラブルを防ぐためには

面会交流は、養育費や親権とともに、離婚時に父母の協議で取り決めておくことが必要です。取り決めをしておかないと、一方が子どもに会わせようとしなかったり、もう一方が勝手に子どもと会おうとするなど、トラブルに発展するケースがあります。

このようなトラブルを防ぐためには、面会の頻度や時間、会う場所の条件などについて取り決めて、離婚協議書などに記載して公正証書にしておくことをおすすめします。

面会交流について取り決めていない場合

離婚する際時に面会交流の実施について明確な取り決めがないと、離した後に正当な理由もなく面会交流が拒否される場合があります。
確かに子どもに暴力をふるう恐れがある場合や、子どもが面会を拒否している時には、面会交流は認められませんが、面会交流が子どもにとって有益であれば、それを拒むことはできません。

面会交流は、離れて暮らす親の権利であると同時に子どもの権利でもあります。ですから「明らかに子どものマイナスである」という場合以外は、原則として面会交流を拒むことはできません。

面会交流について、離婚時に取り決めをしていない場合に、面会交流求める時には、以下の方法を検討します。

(1)まずは話し合う
(2)面会交流請求調停を申立てる

(1)まずは話し合う

面会交流を円滑に実行してもらうためには、子どもを世話している親の協力が不可欠ですから、まずは当事者間で冷静に話し合い、解決するのが最も理想的な方法です。
「なぜ自分が会いたいと思うのか」ということと、「面会交流が子どもにとっても必要であると考えていること」をしっかり説明してみましょう。

なお、子どもに会わせてもらえないからといって、相手を脅したり嫌がらせをするのはNGです。そのような事実があると、後に調停を申し立てた時に立場が不利になってしまいます。結果として、面会交流を制限されてしまうこともあるので、注意してください。

(2)面会交流請求調停を申立てる

面会交流の申し入れが拒否されているような状態では、そもそも話し合うこと自体が困難な場合もあるでしょう。
なかには「電話しても出ない」「面会したいというメールを送っても返信もない」というケースもあります。

このように、話し合いが難しい場合や、話し合いにすら応じないという時は、家庭裁判所に面会交流を求める調停(面会交流調停)を申立てます。

調停では、調査官が子どもの生活状況や精神状態などを調査したうえで、面会交流をさせるよう、調停委員がアドバイスします。この時、面会交流が認められない特段の事情がない限りは、面会交流が勧められます。

調停がまとまらない場合には、審判に自動的に移行して、最終的には裁判所が面会交流を認めるべきか否か、認める場合にはどのような条件で面会交流を行うか、などを決めることになります。

面会交流調停の申立書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。申立書の記載方法については、以下を参考にしてください。

面会交流調停
面会交流調停申立書記載例

▶ 家庭裁判所「面会交流調停」

離婚協議書など作成している場合

協議離婚で、離婚協議書などの公正証書を作成した場合や、調停離婚で調停調書があり、面会交流をさせることが決まっていたにもかかわらず、その取り決めが実行されない場合には、取り決めた内容を実行するように勧告や命令をしてくれます。

面会交流についての取り決めが実行されないときの対処法は、以下のような方法があります。

・ 相手に要求する
・ 履行勧告・履行命令
・ 再度の調停申し立て
・ 間接強制
・ 損害賠償請求
・ 親権者の変更

(1)相手に要求する

まずは元配偶者に連絡をとって、離婚協議書や離婚調停等で決めたとおりに、面会をさせてくれるよう要求してみましょう。
この時、感情的に「自分の権利である」と主張しても、スムーズに話し合いがまとまりません。逆に後で自分の立場が悪くなってしまうこともあります。

弁護士を介入して相手に伝えてもらったり、元配偶者が受け入れやすいように「第三者立会いのもとで、面会交流する」など、面会交流の条件を柔軟にして提案したりすると、効果がある場合があります。

(2)履行勧告・命令

正当な理由がないのに、元配偶者が、話し合いにも面会交流の要求にも応じようとしない場合には、家庭裁判所に「履行勧告」を申立てることができます。

履行勧告を申立てると、家庭裁判所が元配偶者から意見を聞くなどして事情を調査します。その結果、裁判所が「子どもを会わせないのはおかしい」と判断すれば、裁判所が履行勧告書を送付したり、元配偶者を家庭裁判所に呼び出して、直接履行勧告・履行命令を行ったりします。

(3)間接強制

裁判所の履行勧告にも履行命令にも従わない場合には、間接強制を申立てる方法もあります。
間接強制とは「1か月に1度は面会させよ。違反した場合にはその都度10万円を支払え」というような内容を裁判所から命令し、約束をきちんと守らせようとする制度です。

間接強制が認められたとしても、それは「約束を守らないなら金銭を払え」という意味での間接的な強制にすぎません。元配偶者が、制裁金を払ってでも面会交流を強固に拒否したら、実現は困難になってしまいます。
それどころか、このような法的手続きをとったことでさらに態度が硬化して、かたくなに面会交流を拒否するようになり、子どもが深く傷つく可能性もあります。

したがって、間接強制を申立てるよりは再度の調停を申し立てる方が効果的なケースもあります。

(4)再度の面会交流調停の申し立て

履行勧告をしても効果がない場合には、面会交流について再度調停を申立て、そこで以前の調停で決めた面会交流について、実現するための調整を行う方法を検討します。

とくに離婚後しばらくの間は子どもに面会をできていたのに、突然面会を拒否されるようになった場合には、離婚後の事情の変化によって、元配偶者が対応できなくなっただけという可能性もあります。

このような場合であれば、再度調停で面会交流の条件について調整することで、面会交流を実現できる場合があります。

(5)損害賠償請求

面会交流を取り決めたにもかかわらず、正当な理由なく面会交流の実施を拒んだことを理由に、慰謝料請求ができる場合もあります。

過去の判例でも、父が子どもに月1回面会し、また6か月に3回面会したり旅行できるという約束をしたにもかかわらず、それが十分守られなかったというケースで、慰謝料約500万円の支払いを命じた判例があります。

「被告が原告に対して一郎との面接交渉を拒否したことは、親権が停止されているとはいえ、原告の親としての愛情に基く自然の権利を、子たる一郎の福祉に反する特段の事情もないのに、ことさらに妨害したということかできるのであって、前項で検討した諸事情を考慮すれば、その妨害に至る経緯、期間、被告の態度などからして、告の精神的苦痛を慰謝するには金五〇〇万円が相当である」(平成26年12月4日福岡家庭裁判所審判)。

(6)親権者変更

正当な理由もなく面会交流を拒否され続けた場合には、親権者の変更の申し立てができる場合もあります。
実際、面会交流について取決めをしたにもかかわらず親権者である母親が、離婚後の父親に子供を面会させないことを理由として、父親に親権者が変更された事例があります(平成28年3月29日・千葉家裁松戸支部)。
ただし、離婚後親権者のもとで生活してきた子どもの環境に再度変化を与えることになるので、親権者の変更が認められるのは、かなり困難であるということも、覚悟しておきましょう。

まとめ

面会交流は、子どもの気持ちを最優先に考えて取り決める問題です。
親の離婚は、子どもの気持ちや人生に大きな影響を与えます。子どもを夫婦間の感情でトラブルに巻き込まないよう、十分に配慮していきたいものです。

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