子供の認知|意味・手続き方法・効果まとめ

認知

「嫡出子」とは「婚姻中に生まれた子」のことで、「非嫡出子」は「婚姻関係のない男女間に生まれた子」のことです。
内縁関係や事実婚、未婚のカップルに子どもが生まれた場合、その子供は「非嫡出子」ということになりますが、この時男性がきちんと認知の手続きをすれば、父と子の間に法律上の親子関係が生じることになります。

認知されると、子の戸籍に父親の名前が記載され、法的にも父親に養育費を請求することができますし、父親からの相続もできるようになります。

この記事では、子どもを認知する意味や、手続き方法、認知の効果についてご紹介します。

認知とは

通常、未婚の女性が子どもを産んだ場合には、子どもは「非嫡出子」となり、母親の戸籍に入り母親と同じ姓を名乗ることになります。

非嫡出子とは婚姻関係にない男女間に生まれた子どもですが、非嫡出子は認知されていないと、法律上の父親は不明ということになります。

認知とは、このような「非嫡出子」と父親との間で法律上の親子関係を発生させること(民法779条)をいいます。

父と子の間に法律上の親子関係が生じる

男性が認知の手続きをすると、父と子の間に法律上の親子関係が生じます。
認知をしていなければ、親子関係がいかに明白であっても、法的には他人と同じです。

戸籍には認知の事実が残る

非嫡出子は、父親と法律上の親子関係にないため、出生後は母親の戸籍に入り、母の氏を名のります。この際に子の戸籍の「父」の欄は空白です。
しかし認知されることで、子の戸籍に父親の名前が記載されることになります。

認知の効果

子どもが認知されるメリットは、父と子の間に法律上の親子関係が生じるという点だけではなりません。法律上親子関係が生じることで扶養義務が生じ、養育費の請求ができるようになりますし、父親からの相続もできるようになります。

養育費が請求できる

認知されることによって法律上の親子関係が生じることになり、父親には扶養義務が発生します。したがって、母親は父親に対して子どもを養育していくために必要な費用として、養育費を請求することができるようになります。
認知の効力は、子の出産時にさかのぼって生じることになるので、過去に母親が負担した養育費についても、父親が負担すべき部分を請求することができるようになります(ただし一定の限界がある場合もあります)。

扶養義務は親にも子にも生じる

先ほど、認知することによって父に扶養の義務が生じ、養育費を請求することができると説明しましたが、この扶養義務は、子にも生じます。

たとえば父親が年を取って経済的に困窮し子から援助を受ける必要が出てきたときには、父親が子どもに扶養を求めることができることにもなります。

このような事情もあることから、子が成年に達している場合には、子の承諾がなければ認知をすることができないことになっています(民法782条)。

子は相続人となる

認知されることで、父親が死亡した場合には、認知された子は父親の法定相続人としてその財産を相続できる権利を有します。
以前は、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされていましたが、平成25年9月5日からは実子と同じ相続分となりました。

認知の種類

認知は、生まれてから手続きをすることもできますし、母親の承諾を得られれば、妊娠中に認知の手続きを行うこともできます。
認知の手続きは、大きく分けて「任意認知」「強制認知」「胎児認知」「遺言認知」の4つがあります。

任意認知

任意認知とは、子の父が行う認知のことです。
子どもが生まれる前に認知をしようとする場合には、母親の承諾が必要です(民法783条)。
また、子が成年に達している場合には、子の承諾がなければ認知をすることができません(民法782条)。

裁判(強制)認知

裁判(強制)認知とは、父親が認知をしてくれない時に、母親などの法定代理人の請求によって裁判でなされる認知のことをいいます(民法787条)。

いきなり訴えを提起するのではなく、原則としてその前に家庭裁判所に認知調停を申立てることになります。
認知調停では、親子関係を客観的に証明できない場合にDNA鑑定が実施されます。
DNA鑑定の結果、裁判所がその合意を正当なものと認めた時に「合意に相当する審判」がなされます。調停を申立てた側が、調停を取り下げて実際に認知届を提出すれば、任意認知となります。

審判に不服がある場合は、2週間以内に即時抗告の手続きを行うことにより、高等裁判所で再審理させることができます。認知訴訟を提起して、強制的に認知をさせることになります。

胎児認知

胎児認知とは、子どもが母親のお腹の中にいる胎児のうちに認知することです。
通常の認知と違って、父が胎児認知するためには、母の承諾が得る必要があります。
胎児認知も、誕生後は、通常の認知と同じ効果があります。
認知届は母親の本籍地の役所に届け出る必要があります。認知届の子どもの名前の欄には「胎児」と記入し、そのほかの欄も空欄で問題ありません。

遺言認知

認知は、遺言によって行うこともできます(民法781条2項)。
遺言による認知を行った場合には、遺言執行者が認知届を役所に提出する必要があります。したがって、遺言認知を行うためには遺言で遺言執行者の指定をしておくとよいでしょう。
遺言執行者の指定がない場合には、遺言者の死亡後に家庭裁判所に、遺言執行者を選任してもらう必要があります。

認知の手続き:認知届の提出

胎児の場合には、まだ公的な名前や住所がありません。そこで、認知届の名前の欄には「胎児」と記載して、性別や生年月日、住所などの欄は空欄にしておきます。
そして、「その他」の欄のところで、胎児を認知する」を選択します。
前述したとおり、胎児認知の場合には、母親の承諾は必要です。
ですから、胎児認知の場合には、母親の同意書や承諾書などの書類を作成しておくか、認知届の「その他」の欄に「この認知届を承諾する」と記載して署名押印する必要があります。

胎児認知の場合の認知届

認知の手続きを行う際には、以下の書類が必要です。

・ 認知届
・ 母の承諾書(認知届のその他欄に記載でも可)
・ 本籍地以外で出す場合には父・子の戸籍謄本
・ 届出人の印鑑
・ 届出人の身分証明書
・ 和解調書など

認知届

認知の拒否・取消しが認められるケース

生まれてくる子どもが実子(親と血縁関係で結ばれた子)であれば、認知をする必要があります。しかし、実子でない場合には認知を求められても応じる必要はありませんし、認知を拒否されたり、母親に父の子であると嘘をつかれた場合などは、認知の取消しが認められるケースもあります。

拒否が認められるケース

生まれてくる子どもが実子でない場合は、認知を求められても応じる必要はありません。。しかし、自分では実子ではないと思っていても、相手が調停を申し立てる可能性はあります。そして、その際にDNA鑑定を求められることがあります。

この時DNA鑑定を拒否すると、その後訴訟となった場合に不利になってしまう可能性もありますので、実子でない自信があっても、DNA鑑定は受けておいた方がよいでしょう。

取消しが認められるケース

認知をした場合でも、以下のような場合には、認知を取消すことが可能です。

・母親に父の子であると嘘をつかれた場合
・父が自分の子であると誤解した場合
・父が子と血縁関係にないことを知っていた上で任意認知をした場合

実子でない子を認知してしまい、その認知を取消すためには、さまざまな手続きが必要となりますし、証拠が必要になることもあります。どのような手続きが必要で、どのような証拠を集めるべきなのかについては、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

以上、認知の意味や効果、認知届の作成方法などについてご紹介しました。
認知は、子どもの養育費を請求するためにも必要な手続きです。もし相手が認知を拒否するようであれば、、認知調停を申し立てましょう。ただ、認知を求められても実子ではないという自信がある場合には、弁護士等に相談して適切に対応することが必要です。