親権者変更ができるケースと親権者を変更する方法

いちど決めた親権を変えることはできますが、父母の都合で勝手に変更することはできません。
しかし、親権者が適任でないとわかった場合や親権者が長期入院したなどの事情がある場合には、家庭裁判所に調停もしくは審判を申立てることで親権者の変更を求めることができる場合があります。

この記事では、親権者の変更が認められる場合や、親権者変更の調停・審判の申し立ての方法についてご紹介します。

離婚後に親権者変更は可能?

いちど決めた親権は父母の都合で勝手に変更することはできません。
親の都合で親権者を簡単に変更できてしまうと、子供の成長に悪影響があると考えられるからです。

しかしいちど決めた親権者は永久に変更できないかというと、そういうわけでもありません。離婚後に事情が変わり、子どもの成長に悪影響があると認められる場合には、親権者を変更することも可能です。

「監護者の変更」との違い

親権の「身上監護権」と「財産管理権」を分けて、親権者と監護権者に分ける場合があります。
監護権者は、親権の「身上監護権」のなかの養育に関わる部分を有する人のことです。親権者と監護権者を分けると子どもに影響を与えることもあるので、実際には監護権者を指定するのは非常にレアなケースといえます。

監護者は、親権者と異なり戸籍に記載されません。そこで、父母の話し合いと合意だけで決めることができます。話し合いが難しい場合には、家庭裁判所に子の監護者変更の調停・審判を申し立てます。この申し立ては、親族に限らず第三者でも起こすことができます。

「親権変更」と「親権喪失」と「親権停止」の制度の違い

親の責任を果たしていない親権者から子どもを守るためには、親権者を変更することが一番です。しかし、それができない場合には親権を喪失させるという方法があります。親権喪失の審判申立は、子どもの親族の他、自動相談所所長や検察官などの第三者も行うことができます。
審判が確定すると、親権者に代わる後見人を選任し、監護者を決めることができます。

この親権喪失は、親子関係の断絶にもつながるため、法改正によって創設されたのが期限付きで親権を制限できる「親権停止制度」です。
親による親権の行使が困難な時や、親権の行使が不適当で子どもの利益を害する時には、親権を制限して親から子どもを一時的に引き離すことができます。

▶ 政府広報オンライン「児童虐待から子どもを守るための民法の「親権制限制度」

親権者の変更が認められるケース

家庭裁判所で親権の変更が認められる事例は、親権者が死亡した場合や行方不明になった場合など、さまざまです。ただし、それ以外にも以下のような理由があれば、子どもの福祉や利益のために好ましくないという場合には、親権者の申し立てをすることができます。

(1)親権者が適任でないとわかった場合

親権者が育児放棄をしていたり、暴力や虐待をしているなどの場合はもちろんですが、経済的に余裕がなくなり、教育を十分に受けさせていない場合や子どもに労働を強制している場合なども、親権者として適任でないとして親権者の変更を申立てる理由になります。
子どもへの虐待は大きく分けて以下の4つあると考えられています。

①身体的虐待
身体的虐待とは、殴る、蹴る、平手でうつ、ものを投げつけるなどの虐待のことです。

②ネグレクト
ネグレクトとは、いわゆる育児放棄です。十分な食事を与えなかったり、病気になっても病院に受診させなかったりするのは育児放棄にあたる可能性があります。

③性的虐待
性的虐待とは、親が子どもに性的な関係を強要することです。

④心理的虐待
身体に直接虐待を与えなくても、無視し続ける、兄弟間で差別をするといった行為は、心理的虐待にあたる可能性があります。継父や継母との仲が悪い場合も心理的虐待に含まれることがあります。

⑤子どもに労働させている
子どもに労働を強制していて、それが適切でない場合には、親権変更の理由になることがあります。

⑥親権者の入院・海外転勤
親権者が長期入院することになったり、海外転勤を命じられたりして、育児が事実上不可能となった場合には、親権変更が認められることがあります。

(2)親権者ではないほうの親が世話をしている場合

実際には親権者ではないほうの親が世話をしているという場合には、親権者の変更を申立てることができます。
つまり、離婚時に親権をとれなくても、子どもと暮らし続けていれば親権者になれる可能性があるということになります。

>(3)子どもが親権者変更を望んでいる場合

子どもが心から親権者変更を望んでいる場合には、子どもが親権者変更の申立てをすることができます。

親権者変更調停の手続き

親権者を変更するためには、家庭裁判所の許可が必要です。
家庭裁判所の許可を得るためには、家庭裁判所に調停または審判を申立てる必要があります。
調停の申し立ては、原則として現在の親権者の住所地の家庭裁判所に申立てを行います。
調停や審判の結果、新たに親権者になった人は、成立した日から10日以内に市区町村役場で親権者変更の届出をする必要があります。

この時、新しく親権者になる人の戸籍がある市区町村役場に、家庭裁判所の調停調書謄本(審判書謄本)の他、確定証明書が必要です。

親権者変更調停申立てに必要なもの

親権者変更調停申立てに必要な書類は以下のとおりです。

・親権者変更調停申立書
・当事者目録
・連絡先等の届出書
・事情説明書
・進行に関する照会回答書
・申立書及びその写し1通
・申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
・相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)
・未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

また、子ども1人につき収入印紙1200円分、連絡用の郵便切手800円程度が必要となります。

親権者変更調停申立書の記載方法については、以下を参考にしてください。

親権者変更調停の申立書記載例

▶ 家庭裁判所「親権者変更調停の申立て」

親権者変更調停で重視されること

親権者を変更できるのは、家庭裁判所が子どもの福祉や利益のために、「親権者を変更するのが適当である」と認める時です。具体的には養育の熱意や経済力、新たな配偶者の意思や経済力、子どもの意思などを考慮して決められます。

どれだけ愛情を注がれているか、養育についてどんな意向を持っているかという点のほか、就学の有無、子どもの性格、養育環境、子どもの年齢などが調査されます。
なお、子どもが15歳以上の場合には、裁判所は子ども本人の意思を確認して尊重する傾向があります。また、父母間で親権者変更について合意があるというのも判断材料となります。

親権者が行方不明の場合は「親権者変更審判」

親権者が行方不明などの場合には、子どもの住所地に審判を申し立てます。この場合には、子どもの祖父母など、親族でも申請することができます。

申立書の他、事情説明書などの添付書類の他、子ども1人につき収入印紙1200円分、連絡用の郵便切手800円程度が必要となります。

まとめ

以上、親権者が変更できるケースや親権者変更調停の申し立て方法についてご紹介しました。離婚後の親権者変更は難しく、親の都合だけではできません。親権者を変更するためには、まずは親権者変更の調停あるいは審判を申し立てる必要があります。
なお、親権者が行方不明の場合には、審判の申し立てを行います。この場合には、子どもの祖父母などの親族でも、申し立てを行うことができます。

1件のコメント

ただいまコメントは受け付けていません。