未成年の子どもがいる夫婦が離婚する時には、父母のどちらか一方を親権者と決める必要があります。親権者の記入がない離婚届は受理されません。
それでは、離婚する時に親権者はどのように決めるのでしょうか。
Contents
親権者とは
親権とは、未成年者の子どもに対する親の責任や義務をいいます。
親権を「親が子どもと暮らせる権利」と思っている人もいますが、法的には権利だけでなく義務も伴うことになります。
親権者となった親は、子どもの利益を守るために子どもの養育や身の回りの世話をし、しつけ・教育をしたりする他、子どもに財産があれば子どもの代わりに財産を管理します。
親権には、「身上監護権」と「財産管理権」があります。
身上管理権とは、子の身の回りの世話、しつけ、教育などをすることで、さらに①居所指定権②懲戒権③職業許可権④身分上の行為の代理権などに分けられます。
身上管理権
①居所指定権…子の住む場所を指定する権利
②懲戒権…子どもを叱る権利
③職業許可権…子dもが職業に就くことを許可する権利
④身分上の行為の代理権…認知の訴え、15歳未満の子の氏の変更、相続の承認・放棄など
財産管理権
子どもの財産を管理する
財産に関する法律行為を子どもに代わって行う
親権者を決めなければ離婚できない
未成年者の子どもがいる夫婦が離婚する場合には、親権者をどちらにするか決める必要があります。親権者が決まらないと、離婚届は受理されません。
協議で決まらない場合には、調停を申し立てることになります。
親権者でなくても養育費を支払う義務はあある
親権者となららない場合も、離れて暮らすことになっても、子どもの扶養は親の義務です。子どもが社会人になって独立するまでの養育費を支払う必要があります。
離婚後、離れて暮らす親の養育費不払いが問題となっていますが、多くの場合「別れた相手に交渉するのが気が重い」という理由から、養育費を諦めてしまうことが多いようです。
しかし、養育費は親の義務であると同時に子どもの権利でもあります。諦めずに支払いを要求するようにしましょう。
▶ 養育費を支払わない時に、支払わせる方法(ケース別まとめ)
親権者以外に監護者を決めることもある
親権者にならないと、子どもと一緒に住めないと思っている人もいますが、親権者以外に監護権を決めれば、子どもと一緒に暮らすこともができます。
監護者とは、身の回りの世話、保育だけを親権から別にすることをいいます。
たとえば、「父親として親権は譲れないが、子どもが小さいので育てるのは母親のもとで育てる」というような場合には、父親が親権者、母親が監護者となります。
しかし、親権者と監護者が対立した時には、子どもを巻き込んだトラブルになってしまうので、実際に親権者と監護者を切り分けるケースは少ないようです。親権者と監護者を分ける場合には、離婚届に記載する必要はありませんが、離婚協議書や厚生書には、必ず監護者について明記する必要があります。
離婚する時の親権者の決め方
親権は、「別れた相手に子どもを渡したくない」という、感情的な話し合いになってしまうことがありますが、第一には子どもの幸せを考えて決めるべきです。
もし、親権者について話し合いがまとまらなければ、調停で話し合うことになります。
(1)夫婦で話し合う
まずは、夫婦間でできるだけ冷静に協議をします。
どちらの親も、子どもを愛する気持ちに変わりはありません。その子の幸せのためにはどちらが親権者となるのが良いのか、冷静に判断するようにしましょう。
なお、子どもの親権者となりたいなら、別居する時には必ず子どもを連れて行くようにしましょう。「後で引き取ろう」と子どもを置いて家を出てしまうと、その後引き渡しを拒否されることもあります。また、後日調停を申し立てた場合にも、実際に子どもの面倒を見ている側が有利になります。
(2)親権者がきまらない時は調停
夫婦間で親権者の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てます。親権者指定の調停だけ申し立てることもできますが、離婚調停を起こす方が、養育費などの他の問題も解決できます。
離婚調停を起こすか、親権者指定調停を起こすかについては、弁護士に相談することをおすすめします。
家庭裁判所で重視されること
家庭裁判所の調停では、親の健康状態や生活態度、監護度能力や経済的な環境など、さまざまな事情を考慮します。また、子どもの意向や年齢、性別、環境の変化への適応性なども重視されます。
子どもの年齢別親権者の目安
家庭裁判所では、親権者について子どもの年齢も重視します。
胎児の場合には、原則として母親が親権者になり、出産してから双方で話し合いをすることになります。
10歳未満の場合には、母親の役割が重視されるため、母親が親権者になることが多くなりますが、それ以上は子どもの意思も尊重されます。
子どもが15歳以上になれば、必ず子どもの意見を聞き、その意思が尊重されることになります。
親権者を決める時のトラブル
親権者を決める際には、さまざまなトラブルが起こることがあります。
自分に不利にならないように、予め、起こりうるトラブルについて理解しておきましょう。
母親でも親権者になれないことがある
乳幼児の場合には、母親が親権者となるケースがほとんどです。
しかし、母親の生活態度に問題があったり、監護能力に問題があったりすれば、父親が親権者に指定されることもあります。また、「後から子どもを引き取りに戻ろう」と1人で家を出てしまうと、母親が不利になることがあります。その間に父親と子どもが安定した生活を送っていれば、その事実が重視され、母親が親権者になれないことがあります。
子どもを連れ去られた
離婚の協議中や離婚調停の間に、子どもを一方の親が連れ去ってしまうことがあります。「妻が勝手に出て行った」「子どもに会わせてもらえない」など、理由はさまざまで、こうなると自力で連れ戻すのは難しくなってしまいます。
この場合には、まず家庭裁判所に「子の引き渡し請求」の調停、審判を申し立てます。すぐに引き渡しを望む場合には、仮処分として審判前の保全処分を申し立てます。
申し立てには、申立書及びその写し1通と、未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)が必要になります。
子の引渡し調停の申立書の記載方法については、以下の記載例を参考にしてください。
離婚後親権者を変更したい
離婚後に、一度決めた親権者を変更することはできます。
ただし、父母の話し合いで勝手に決めることはできません。親権者を変更する場合には、家庭裁判所の許可が必要となりますので、親権者変更の調停、審判を申し立てます。
親権者変更の調停の申立書の記載方法については、以下の記載例を参考にしてください。
▶ 家庭裁判所「親権者変更調停」
父母がどちらも親権者になりたくない
父母双方が、子どもの引き取りを押し付け合う場合もあります。
この場合にも、家庭裁判所に親権者指定の調停、審判を申し立てて、家庭裁判所の判断に委ねることもできます。その結果、親権者となっても子どもの面倒が見られないという場合には、親権者変更の許可を申し立てることができます。
子どものためにも、児童相談所や弁護士に相談してアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
以上、親権の意味や親権者の決め方、親権者について話し合いがまとまらなかった時の解決方法などについてご紹介しました。
親権は、身上監護権と財産管理権があり、親権者以外に監護者を決めることもできます。
ただし、親権者と監護者が対立した時には、トラブルに発展することがあるので、あまりおすすめはできませんが、やむを得ない事情がある場合には弁護士などに相談したうえで、親権者と監護者を分けるのも一つの方法です。
なお、夫婦間で親権者について話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の調停を利用することを検討しましょう。
なお、親権者となった後でも、親権者を変更することもできます。その場合には、親権者変更の調停を申し立てます。
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