子供への虐待|迷わず離婚を決意すべき5つの理由

子供への暴力・虐待は、いかなる理由があっても決して許されることではありません。
虐待を受けて育った子供には、さまざまな障害が出ることが分かっています。

また、虐待を放置していれば、とり返しのつかないことにもなりかねません。実際、虐待による死亡事例件は年々増加傾向にあります。

虐待から子供を守るためには、とにかく一刻も早く加害者から子供を引き離すことです。相談先もサポートしてくれる機関もたくさんあります。

子供を守れるのは、あなたしかいません。
ぜひ勇気を出して大切な子供を守るために行動を起こして下さい。

子供への虐待は絶対NG

殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶるなどの身体的な虐待だけでなく、家に閉じ込める、言葉によって脅すなどの行為は、絶対に許されない虐待行為です。
これらの暴力は、必ず繰り返されるようになり、しかもエスカレートしていきます。

児童虐待は、深刻な社会問題となっていて、政府でもさまざまな施策をとっています。しかし、児童虐待防止法施行前の平成11年度の11,631件に比べ、平成24年度は66,701件と、5.7倍に増加しています。

虐待者は、実母が最も多く、57.3%、次いで実父が29.0%となっています。実父以外の父は、6.2%、実母以外の母は、0.8%となっています。

▶ 厚生労働省「児童虐待対策の現状と今後の方向性」

「しつけのため」は通用しない

「これは、しつけだ」「この子の将来のためを思って、やっているんだ」と言い訳をして、子供を殴ったり蹴ったりする親がいます。

虐待を責めると、殴ったり蹴ったりすることは認めるものの、「子供が悪いことをしたら、怒るのは当然で、言うことを聞かなければ叩くのはしつけだ」と主張するわけです。
また、親子の間で「嘘をついたり約束を破ったりしたら、叩く」と約束していて、子供も納得しているのだと主張することもあります。

しかし、このような行為はしつけでもなく教育でもありません。許されないただの暴力です。「しつけだ」とか「本人に必要な教育だ」などという言い訳を、決して許さないでください。

本人も虐待と思っていない場合も

虐待をしている本人は、言うことを聞かない子供をしつけているつもりで、自分が子供に危害を加えているという自覚が、全くないケースもあります。

「この程度なら、口で注意するのと変わらない」「ちょっと、小突いた程度だ」と感じているだけで、自分の暴力をそれほどでもないと思っているところもあります。
しかし、繰り返しますが、殴る、蹴る、投げ落とす、家に閉じ込める、言葉によって脅すなどの行為は、虐待です。本人がそれほど力を出していないつもりでも、小さな子供の身体は傷つきますし、時として生命さえ奪ってしまうのです。

虐待の種類

子供への虐待は大きく分けて以下の4つあると考えられています。

・身体的虐待
・ネグレクト
・性的虐待
・心理的虐待

児童相談所における児童虐待相談対応件数の中で最も相談件数が多いのが、身体的虐待が35.3%、次いで心理的虐待が33.6%、ネグレスト(育児放棄)が、28.9%、性的虐待が2.2%となっています。

(1)身体的虐待

身体的虐待とは、殴る、蹴る、平手で叩く、ものを投げつける、首を絞める、縄などにより一室に拘束するなどの虐待を行うことです。
児童虐待の中で、最も多いのがこの「身体的虐待」です。

(2)ネグレクト

ネグレクトとはいわゆる育児放棄のことです。
十分な食事を与えなかったり、病気になっても病院に受診させなかったりすることはネグレストにあたります。
親がパチンコに夢中になり目を離したため、車内で子供が熱射病になり亡くなる事故がありますが、これもネグレストが原因の痛ましい事件です。

ネグレクトの具体的な事例
・充分な食事を与えない。
・病気になっても病院に受診させない。治療を受けさせない。
・子供を放置する。放置したまま深夜に外出する
・風呂や歯磨き、下着を取り換えるなどの衛生行為をさせない
・学校や幼稚園に行かせず満足な教育を受けさせない
・コミュニケーションをとらない。無視する
・家の外に出したまま走り去ったり、泣き叫ぶ子供を車内に閉じ込めたりする

(3)性的虐待

性的虐待とは、親が子供に性的な関係を強要することです。
子供だと、性的虐待を受けても自分の身に何が起きているのか理解できないケースが多々あります。
自分でおかしいと思い勇気を出して親や友達に話しても、嘘だと思われ信じてもらえないこともあります。

さらに、父親が加害者の場合、母親は被害者の子供でなく加害者である父親の味方をすることすらあります。

性的虐待を受けた子供の多くは、大変深刻なPTSDと診断されることがあり、大人になっても傷跡は何年、何十年も消えません。

長い間不眠、過度の警戒心、ちょっとしたことに激怒するなど、情緒的に苦しみ続けるケースも多いのです。

性的虐待は、「魂の殺人」といわれます。もし、子供が性的な虐待を受けていることに気づいたら、1分でも早く加害者から子供を遠ざけてあげましょう。

(4)心理的虐待

必要以上に大声で怒鳴る、暴言を浴びせる、正当な理由がないのに無視し続ける、兄弟間で差別をするといった行為は、心理的虐待にあたります。

このような心理的虐待の被害者は、自尊心や判断力が低下し、行動や思考までコントロールされている場合が多くあります。

子供への虐待|離婚を決意すべき5つの理由

子供が虐待を受けていることに気づいたら、迷わず離婚を決意してください。
子供への虐待は、絶対に許されない行為です。子供の成長に深刻な影響を与えますし、取り返しのつかない事態になることもあります。

(1)学習意欲の低下

親から虐待を受けた子供の中は、知的発達の遅れや学習の遅れを指摘されることもあります。

DVや虐待による心理的な影響から学業に集中できなかったり、意欲が低下するために学習が遅れる傾向があります。不安や恐怖、悲しさや怒りを抱える生活を送りながら、さらに成績が上がるよう求められれば、精神的なダメージを受けるのは当然かもしれません。

このような子供は、加害者と別居して安定した家庭生活を送り必要なセラピーを受けることで回復し、突然成績が伸びる子供もいます。

(2)自己肯定感の低下

虐待された子供は、自己肯定感が非常に低下するケースが多く見られます。
たとえば、子供が他人に向かって物を投げたら「相手を傷つけるかもしれなから、そういうことをしてはいけない」と教えるのがしつけです。

しかし、この時「人に物を投げるなんて、お前はクズだ」「だから、お前はだめな人間なのだ」と言えば、これはしつけではありません。

子供は、「お前は、ダメな人間だ」という言葉に傷つき、自分が悪いから虐待されるのだと思い込みます。そして、それが自己肯定感を低下させます。何をしても「自分はだめだ」と自信をなくし、人の顔色を窺い、その場しのぎの嘘を繰り返すようになってしまいます。

また、親から暴力や暴言を受けて育った子供は、過度の不安感を持ち、うつ、引きこもりなどの症状を引き起こすケースも多々あります。

(3)栄養失調・発育不良

ネグレスト(育児放棄)があれば、当然栄養・感覚刺激の不足による発育障害を引き起こします。
また、愛情不足から成長ホルモンが抑えられた結果、成長不全を起こすことがあります。こうした子供は、一時保護をすることで、短期間で大幅に身長が伸びたり体重増加を示したりすることがあります。

また、身体だけでなく、心にも深い傷を受け、落ち着きのない行動をとるようになることもあります。受けた心の傷は、PTSDとして残り、思春期などに問題行動を起こすケースも少なくありません。

▶ 厚生労働省「子供虐待対応の手引き」

(4)暴力は世代連鎖する

親から暴力を受けた子供は、暴力で問題を解決することを学習するので、自分自身も攻撃的・衝動的な行動をとり、力で問題を解決しようとします。
実際、子供を虐待する親の多くは、自分自身も子供の時に暴力を受けていたことが分かっています。

これは、子供に対する虐待ではなく、たとえば父親が母親を虐待していた場合も同じです。
父親が母親を力で支配している姿を日常的に見ていると、子供は「暴力をもって、支配的な関係を築くこと」が普通のことだと思ってしまいます。そして、人間関係を支配するために、暴力をふるうようになってしまうのです。

さらに、父親が母親に暴力をふるう環境で生活してきた子供は、母親を無力な弱者とみなす傾向があります。

父親がそうしていたように、母親を「子供をしつけることができないダメな親」と見て、父親の方が「優れた親である」と思い込んでしまうのです。

母親を否定し侮辱の対象として見てしまった結果、自分が成長して思春期を迎えた時には、母親に暴力をふるったりするケースもあります。

この忌まわしい連鎖を断ち切るためには、一刻も早く加害者から引き離すことです。
そして、暴力への理解を深め、お互いに尊重し合い対等である人間関係を認識させることが非常に重要です。

(5)取り返しのつかなくなる可能性

児童虐待によって子供が死亡した件数は、高い水準で推移しています。

平成15年には25人、平成16年には50人、平成17年には56人、平成18年には61人…。

なぜこの子たちを救えなかったのでしょうか?

さまざまな事情は違えど、子供を虐待死させた親の多くが、「自分が子供を虐待して死なせるわけはない」「これは、しつけだ」「これくらいは、暴力じゃない」「自分は、子供を愛している」…本気で、そう思い込んでいたのです。そして、その結果、かけがえのない生命を奪ってしまったのです。

もし、夫や妻が子供を虐待している姿を見て「あれは、しつけだ」と思っているなら、今すぐその考えを改めてください。
子供を守りたくても、自分も暴力を受けていて口を出せないなら、ぜひ相談支援センターや警察を頼ってください。

可愛い子供の生命を守るためにも、ぜひ勇気を出してください。

子供への虐待|相談先・支援サービス

子供への虐待に気づいたら、勇気を出して児童相談所、市区町村の担当窓口、福祉事務所に相談しましょう。また、弁護士や民間のサポート団体に相談するなど、あらゆる手段をつくして子供を守りましょう

「離婚したいと言ったら、何をされるか分からない」と思うなら、まず家を出てから離婚を申し出ることです。直接話し合いをするのは避けてください。

最寄りの配偶者暴力相談支援センターや警察などに、すぐに相談してください。一時的に滞在できる施設を紹介してくれますし、離婚や就職などの支援もしてくれます。

離婚調停になった場合でも、調停委員に依頼すれば、裁判所で相手と出くわさないようにしてもらえますので、相手と直接話し合いをする必要はありません。

それに、子供への虐待は、「法律が定めた離婚原因」の「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたります。子供への虐待があったことを立証できれば、裁判になったとしても離婚することができます。

(1)児童相談所虐待対応ダイヤル「189」

児童相談所虐待対応ダイヤル「189」は、虐待かもと思った時に、すぐに児童相談所に通告・相談ができる全国共通の電話番号です。

「189」」にかけると、近くの児童相談所につながり、相談することができます。相談は、匿名で行うこともできますので、相談内容に関する秘密は守られます。

▶ 厚生労働省「児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について」

(2)DV相談ナビ「0570-0-55210」

「DV相談ナビ」に電話すれば、最寄りの相談窓口を紹介してもらうことができます。希望する場合には、電話を相談窓口に直接転送してもらうこともできます。
また、必要に応じて一時保護施設に保護してもらうこともできます。さらに、加害者に避難先を知られないよう、自治体に住民基本台帳の閲覧制限を求めるなどのサポートも行ってくれます。

全国統一ダイヤル「暴力相談ナビ」
0570-0-55210

▶ 内閣府「配偶者暴力相談支援センター 」

(3)警察「#9110」

緊急事態だと思われる場合には、躊躇することなく、「110番」に連絡をしてください。
もし緊急ではない場合には、警察の相談ダイヤルである「#9110」にかけてみましょう。
全国どこからでも、「#9110」にかければ、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながります。

状況に応じて、法テラス、児童相談所や女性相談所などの専門の機関への引き継ぎや紹介をしています。

▶ 政府広報オンライン

(4)弁護士

児童虐待の相談は、弁護士にすることもできます。
弁護士というと、弁護士費用が気になる人も多いと思いますが、法テラスに相談すれば、弁護士費用を立て替えてくれる民事法律扶助制度を利用することもできます。
相手と直接交渉したくない、財産分与や慰謝料もきちんと請求したいという場合には、早めに弁護士に相談した方が、有利に離婚を進めることができます。

まとめ

以上、子供の虐待がある場合には、すぐに離婚を決意すべき理由をご紹介しました。
子供が虐待されている時、一刻も早く避難して安全確保をしてください。
「自分の家庭は、大丈夫」などという根拠のない楽観論や世間体、配偶者への恐れなどから判断が遅れると、重大な事態に至ってしまうことがあります。

一人で子供を育てることに不安を感じる人もいるかもしれませんが、ひとり親を支援してくれる制度はたくさんあります。

▶ ひとり親家庭が利用できる制度・手当・支援まとめ

子供の未来のためにも、そして大切な生命を守るためにも、ぜひ勇気を出して第一歩を踏み出していただきたいと思います。