退職金も離婚時の財産分与の対象|分与の計算方法は?(過去判例付き)

財産分与とは、結婚後に夫婦で築いた財産を、離婚する時に分け合うことをいいます。
厳禁や預貯金、不動産、生命保険金の他、すでに支払われた、あるいは将来支払われることが分かっている年金、退職金も含まれます。

この記事では、これらの財産分与の対象となる共有財産のうち、退職金を財産分与する際のポイントについてご紹介します。

退職金も夫婦の共有財産

熟年離婚においては、退職金を離婚時の財産分与に含めることができるかどうかは、大きな問題です。
結論からいえば、退職金も財産分与の対象となります。退職金は、賃金の後払いという性質があるため、それも夫婦の協力によって得た財産と考えることができるからです。

つまり、夫が家庭の外で働いて賃金を得ることができるのは、妻が家事や育児を引き受けているからだと考える以上、将来の退職金についても、妻の寄与度が認められるという考えによるものです。

全額が分与対象ではない

退職金が財産分与の対象となるといっても、その全額が分与の対象となるわけではありません。退職金の場合には、婚姻期間に対応する金額部分だけが共有財産とみなされ、分与の対象となります。

たとえば、妻が専業主婦で夫が勤続年数40年で婚姻期間は30年だったとします。この場合には、婚姻期間30年に対応する退職金の部分が、共有財産となります。

将来的な退職金の場合は?

まだ支払われていない将来的な退職金について、財産分与の対象となるかどうかは、状況によって異なります。
退職金が支給される可能性が低ければ、現時点の離婚で財産分与の対象に含めるのは、当事者に不利益を与える恐れがあります。

厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査の概況」によれば、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は80.5%となっていて、退職金制度がない企業が増えつつあるという背景もあります。

▶ 厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査の概況」

したがって、定年退職が間近で、退職金が支払われることがほぼ確実である場合には、それを財産分与の対象に含めるというのが一般的です。

将来的な退職金はどう分配する?

過去には「将来○○会社から、退職金を受領した時には、その2分の1を支払え」とした判決もありますが、これは被告に十分な資産があっても信用できる場合でなければ、本当に支払われるか不安になることもあるでしょう。

したがって、将来の退職金の満額から、中間利息を控除して現時点の価値に引き直して計算したうえで、「では、夫婦でどのように配分するか」という決め方をするのが、普通です。

退職金の財産分与計算方法は?

将来の退職金をどのように分配するかは、夫の寄与度、妻の寄与度を比較検討して決めるしかありません。夫に高度な特殊の専門的技量があるために高額の退職金が支払われるという場合には、妻の寄与度は40%、30%と下がる可能性もあります。

妻が専業主婦の場合、以前は30%程度しか寄与度が認められなかったのですが、最近は家事労働や内助の功に対する寄与度が高く評価され、50%とすることが多くなりました。

また、年金については夫婦で半分ずつ分けるという離婚が増えていることを考えれば、退職金についても、半分ずつ分けるという前提で財産分与を認める判例が増えてくるものとみられます。

たとえば、妻が専業主婦で夫が勤続年数40年で2,000万円の退職金をもらい、婚姻期間は30年だったとします。この場合には、婚姻期間30年に対応する退職金の部分(2,000万円÷40年×30年=1,500万円)が、共有財産となります。
もし夫婦の財産分与の割合が2分の1ずつだったとすれば、1,500万円÷2=750万円を妻が受け取ることができるということになります。

夫:勤続40年
妻:専業主婦
婚姻期間:30年
退職金:2,000万円

2,000万円÷40年×30年=1,500万円…夫婦の共有財産
1,500万円÷2=750万円…夫と妻で2分の1ずつ分ける場合

退職金の財産分与-過去事例

退職金を財産分与の対象とするか否かは、定年まであとどれくらいかなど、個々の状況によって異なります。

定年退職は、まだまだ先の話という場合には、退職金が支払われるかどうか不確実なので、財産分与の対象とならないこともあります。

定年まで6年(東京地裁)

裁判例では、以前は定年があと2~3年であれば退職金が支払われるのはほぼ確実として、財産分与の対象として計算するとしていましたが、過去の判決では、夫の定年が6年後という事例で、財産分与の対象となるとしたケースもあります(東京地裁 平成11年9月3日)。

定年まで10年

定年まであと10年前後も残しているような事例では、そもそも退職金が支払われるかどうかも分かりませんので、将来の退職金の支給を前提として財産分与を計算することは、なかなか厳しいということになります。
ただし、絶対に無理というわけではないので、「確実に支払われる」という特別な事情があれば、弁護士に相談してみましょう。

まとめ

以上、退職金を財産分与に含める際の注意点についてご紹介しました。
すでに支払われた退職金については、夫婦の協力によって得た財産と考え、財産分与の対象となります(ただし、婚姻期間に対応する金額部分のみ)。また、将来の退職金が財産分与の対象となるか否かは、定年退職が間近か、ほぼ確実に支払われるかなど、個々の状況によって異なります。

また、寄与度が30%か50%かなども、状況によって異なりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。