離婚時の年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金の記録を、離婚した夫婦の間で分割する制度です。
ここで注意したいのは、「相手が将来受け取る年金の半分をもらえる制度」ではないという点です。
年金分割を行うと、婚姻期間中の厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の記録が分割され、その記録をもとに将来の老齢厚生年金などが計算されます。
国民年金の老齢基礎年金そのものを分割する制度ではなく、相手の年金全体が半分になるわけでもありません。
また、年金分割は専業主婦・専業主夫だけの制度ではありません。夫婦ともに会社員として働いていた場合でも、婚姻期間中の厚生年金記録に差があれば、共働き夫婦が年金分割を利用するケースがあります。
「共働きだから年金分割は関係ない」と決めつけてしまうと、離婚後に確認すべき権利を見落とす可能性があります。
共働き夫婦も年金分割を利用できる
年金分割というと、「会社員の夫と専業主婦の妻」という夫婦を想像する人もいるでしょう。しかし、実際には夫婦の働き方ではなく、婚姻期間中にどのような厚生年金記録があるかが重要です。
夫婦とも会社員でも、給与や賞与、加入期間に差があれば、婚姻期間中の標準報酬の記録にも差が生じます。
さらに、妻の標準報酬記録の方が多ければ、妻から夫へ記録が分割される場合もあります。
年金分割は「夫から妻へお金を渡す制度」ではありません。性別や親権の有無ではなく、婚姻期間中の厚生年金記録を基準として処理されます。
年金分割の対象は厚生年金の記録
年金分割の中心となる対象は、婚姻期間中の厚生年金の算定基礎となった標準報酬月額・標準賞与額の記録です。
主に対象となるのは、次の記録です。
- 会社員などの厚生年金記録
- 公務員や私立学校教職員などに係る厚生年金・旧共済年金制度の対象となる記録
- 婚姻期間中の標準報酬月額
- 婚姻期間中の標準賞与額
一方、次のような年金・資産は、離婚時の年金分割制度によって直接分割されるものではありません。
- 国民年金の老齢基礎年金
- 国民年金基金
- 確定給付企業年金(DB)
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 個人年金保険
厚生年金基金については少し注意が必要です。年金分割の効果が及ぶのは、厚生年金基金が国に代わって支給していた厚生年金の報酬比例部分などであり、基金独自の上乗せ給付まで一律に年金分割されるわけではありません。
また、企業年金やiDeCoなどが年金分割制度の対象外だからといって、離婚時に一切考慮されないとは限りません。夫婦の財産関係によっては、年金分割とは別に財産分与の問題として検討が必要になる場合があります。
自営業者やフリーランスとして国民年金だけに加入していた期間には、分割対象となる厚生年金記録はありません。
たとえば、夫が婚姻期間を通じて自営業で国民年金のみに加入し、妻が会社員として厚生年金に加入していた場合、妻の厚生年金記録が年金分割の対象となる可能性があります。
夫が自営業だからといって、妻が夫の老齢基礎年金を半分受け取れるわけではありません。
分割されるのは現在の年金額ではない
年金分割で分けるのは「年金額」そのものではありません。
婚姻期間中の標準報酬記録を一定の割合で分割し、分割後の記録をもとに、それぞれの厚生年金額を計算し直す制度です。
そのため、たとえば元配偶者の老齢厚生年金が月額12万円だからといって、「最大6万円を毎月受け取れる」という計算にはなりません。
老齢厚生年金には、婚姻前の加入記録や離婚後の加入記録に基づく部分も含まれています。これらは年金分割の対象にはなりません。
また、老齢基礎年金そのものを半分にする制度でもありません。
加給年金や振替加算も「金額を夫婦で分割する」という仕組みではありません。ただし、離婚や厚生年金記録の変更によって受給要件などに影響するケースがあるため、すでに年金を受給している場合は年金事務所で確認した方がよいでしょう。
なお、すでに老齢厚生年金を受給している人について年金分割が行われた場合は、原則として年金分割をした月の翌月分から、分割後の標準報酬をもとに年金額が改定されます。
合意分割と3号分割の違い
離婚時の年金分割には、大きく分けて「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
名前は似ていますが、対象となる期間、割合の決め方、相手の同意が必要かどうかが異なります。
共働き夫婦の場合でも、過去に第3号被保険者だった期間があれば、1組の夫婦について合意分割と3号分割の両方が関係することがあります。
合意分割とは
合意分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録について、当事者の合意または裁判手続によって按分割合を決め、記録を分割する制度です。
原則として、2007年4月1日以後に離婚等をした人が対象です。
婚姻自体が2007年4月1日より前から続いていた場合でも、要件を満たせば婚姻期間中の記録が分割対象になります。
按分割合とは、分割対象となる夫婦双方の標準報酬の合計のうち、年金分割後に「分割を受ける側」が持つ割合です。
上限は50%です。
ただし、ここでいう「50%」は、相手の年金を50%受け取るという意味ではありません。
年金分割のための情報通知書には、按分割合を決めることのできる範囲が記載されます。下限は夫婦それぞれの対象期間標準報酬総額によって異なり、分割を受ける側の持分を分割前より減らす割合を設定することはできません。
夫婦間で割合について合意できない場合は、家庭裁判所に「年金分割の割合を定める審判又は調停」を申し立てることができます。
共働き夫婦の年金分割では、この合意分割が中心になります。
3号分割とは
3号分割とは、国民年金の第3号被保険者であった期間について、原則として相手の同意を得ることなく、相手方の厚生年金記録を2分の1ずつに分割できる制度です。
第3号被保険者とは、厚生年金に加入している会社員や公務員などに扶養されている、原則として20歳以上60歳未満の配偶者をいいます。
3号分割の対象となるのは、2008年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間です。
また、制度上は原則として2008年5月1日以後に離婚等をした人が対象となります。
対象期間について相手との合意は必要なく、分割割合は2分の1ずつです。
ただし、離婚しただけで自動的に年金記録が分割されるわけではありません。第3号被保険者であった人から年金分割を請求する必要があります。
また、分割される側が障害厚生年金の受給権者で、3号分割の対象期間がその障害厚生年金額の計算の基礎となっている場合など、3号分割が認められないケースもあります。
「専業主婦だったから自動的に3号分割される」という理解は誤りです。
第3号被保険者として登録されていなかった期間や2008年3月31日以前の期間は、3号分割の対象にはなりません。
共働きでも3号分割の対象になることがある
現在は共働きでも、婚姻期間の一部に第3号被保険者だった時期があれば、その期間について3号分割が関係することがあります。
たとえば、結婚後は会社員として働き、出産を機に退職して配偶者の扶養に入り、第3号被保険者となった後、再び会社員として厚生年金に加入したケースです。
この場合、婚姻期間中には「自分自身が厚生年金に加入していた期間」と「第3号被保険者だった期間」が混在します。
2008年4月1日以後の第3号被保険者期間については3号分割の対象となり、それ以外の婚姻期間中の厚生年金記録については合意分割が関係する可能性があります。
さらに、合意分割を請求した婚姻期間の中に3号分割の対象期間が含まれている場合には、3号分割についても請求があったものとみなされます。
つまり、合意分割と3号分割が関係するからといって、必ず2回別々に申請しなければならないわけではありません。
共働き夫婦の年金分割はどう計算する?
共働き夫婦の年金分割では、夫婦それぞれの将来の年金月額を足して2で割るわけではありません。
「夫の年金10万円、妻の年金6万円だから、8万円ずつになる」という仕組みでもありません。
計算のベースになるのは、婚姻期間中の夫婦双方の「対象期間標準報酬総額」です。
対象期間標準報酬総額は、対象期間中の標準報酬を生年月日に応じた再評価率などによって現在価値に換算し、合計したものです。
この金額と、情報通知書に記載された按分割合の範囲を確認して、合意分割では最終的な割合を決めます。
共働き夫婦の年金分割の計算例
分かりやすくするために、婚姻期間中の対象期間標準報酬総額が次のようになっていたとします。
- 夫:6,000万円
- 妻:3,000万円
夫婦の合計は9,000万円です。
を50%とすると、分割後は妻側の持分が全体の50%となるため、対象期間標準報酬総額は夫婦それぞれ4,500万円相当になるイメージです。
この例では、夫側の記録から妻側へ1,500万円相当の標準報酬記録が移されることになります。
ただし、1,500万円が現金で支払われるわけではありません。
あくまで将来の厚生年金額を計算するための「年金記録」が変更されます。
また、実際の対象期間標準報酬総額は単純に給与を足した金額ではなく、標準報酬や再評価率などを用いて算出されます。
そのため、源泉徴収票の年収を足し算するだけで正確な年金分割額を計算することはできません。
婚姻期間中に3号分割の対象期間が含まれる場合には、その期間について3号分割を行ったものとして標準報酬を調整したうえで、合意分割の按分割合の範囲が計算されます。
「最大50%」という数字だけを見るのではなく、まず年金分割のための情報通知書を取得することが重要です。
年金分割をしても年金をすぐ受け取れるわけではない
年金分割を行っても、その場で現金が振り込まれるわけではありません。
分割された標準報酬記録は、将来、その人の老齢厚生年金などを計算する際に使われます。
老齢厚生年金を受給するためには、本人自身が受給資格期間や支給開始年齢などの要件を満たす必要があります。
年金分割によって標準報酬記録を受け取ったからといって、元配偶者と同じ年齢から年金を受け取れるようになるわけではありません。
また、年金分割によって得た「離婚時みなし被保険者期間」だけで、老齢基礎年金などの受給資格期間を満たせるとは限りません。受給資格そのものは本人の年金記録を基準として判断されるため、分割後の見込額だけでなく受給要件も確認しておく必要があります。
年金分割の申請方法
年金分割は、離婚協議書に「年金分割する」と書けば終わる手続ではありません。
合意分割の場合は、情報通知書を取得し、按分割合を決め、離婚後に標準報酬改定請求を行うという流れが基本です。
3号分割も、相手の同意こそ原則不要ですが、自動的に処理されるわけではありません。
手続は年金事務所や街角の年金相談センターなどで行います。共済組合や私学事業団に加入していた期間がある場合には、加入記録に応じた窓口での確認が必要になることがあります。
(1)年金分割のための情報通知書を入手する
合意分割を検討する場合は、まず「年金分割のための情報通知書」を取得します。
情報通知書には、主に次の情報が記載されています。
- 年金分割の対象となる期間
- 夫婦それぞれの対象期間標準報酬総額
- 按分割合を定めることのできる範囲
ここで注意したいのが、分割後の年金見込額が誰の情報通知書にも自動的に記載されるわけではないという点です。
日本年金機構では、原則として50歳以上の人や障害厚生年金の受給権者など一定の人が情報提供を請求する際に希望すれば、分割後の年金見込額の試算を受けられる制度があります。
対象となる人は、按分割合50%の場合、分割しなかった場合、希望する按分割合の場合などの試算を依頼できます。
情報提供は離婚前でも離婚後でも請求できます。
離婚前に夫婦の一方だけが請求した場合は、原則として請求者本人にだけ情報通知書が交付されます。そのため、離婚前に一人で請求したことが相手へ通知される取扱いではありません。
一方、離婚後に一方だけで請求した場合は、原則として請求者と元配偶者の双方に情報通知書が交付されます。
情報通知書を請求する際は、一般的に次の書類などを用意します。
- 年金分割のための情報提供請求書
- 基礎年金番号通知書、年金手帳など基礎年金番号を確認できる書類、またはマイナンバー関係書類
- 戸籍謄本・戸籍抄本など婚姻期間を確認できる書類
婚姻期間を証明する戸籍関係書類は、原則として請求日から6か月以内に交付され、婚姻日や離婚日などを確認できるものが必要です。
事実婚期間について情報提供を求める場合には、住民票など事実婚関係を確認できる資料が必要になることがあります。
(2)合意分割の割合を決める
情報通知書を確認したら、記載されている按分割合の範囲内で、年金分割の割合を決めます。
夫婦間で合意できれば、年金分割を行うことと按分割合を明らかにした書面を作成します。
年金分割の割合を証明する方法には、たとえば次のものがあります。
- 公正証書
- 公証人の認証を受けた私署証書
- 日本年金機構の「年金分割の合意書」など、年金分割と按分割合について双方が合意したことを示す書面
離婚協議書に年金分割について記載する場合も、「年金分割をする」だけではなく、少なくとも年金分割を請求することと請求すべき按分割合が分かるようにしておく必要があります。
特に注意したいのは、夫婦が作った私文書を持っていけば、どちらか一方だけで必ず年金分割を申請できるわけではないことです。
日本年金機構の合意書を利用して請求する場合は、原則として当事者双方がそろって年金事務所へ出向く必要があります。それぞれ代理人を立てることは可能ですが、所定の委任状や本人確認書類などが必要になります。
一方、公正証書や公証人の認証を受けた私署証書など、所定の要件を満たす書面がある場合には、一方から請求できることがあります。
相手と離婚後に連絡を取りたくない場合は、離婚前の段階でどの形式の書面を作るかまで考えておくことが重要です。
(3)年金事務所などで分割を請求する
按分割合が決まったら、「標準報酬改定請求書」に必要書類を添えて年金分割を請求します。
rong>年金分割は、夫婦が合意しただけでは実施されません。
離婚協議書、公正証書、調停調書、審判書などに年金分割について記載されていても、年金事務所などへの請求手続が別途必要です。
合意分割を請求する場合の主な書類は、次のとおりです。
- 標準報酬改定請求書
- 基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類
- 戸籍謄本・戸籍抄本など婚姻期間や離婚日を確認できる書類
- 双方が生存していることを確認するための戸籍謄本・戸籍抄本・住民票など
- 公正証書、年金分割の合意書、調停調書、審判書など、按分割合を確認できる書類
双方の生存を確認する書類は、原則として請求日前1か月以内に交付されたものが必要ですが、標準報酬改定請求書にマイナンバーを記載することで省略できる場合があります。
裁判所の審判によって割合が決まった場合は、審判書の謄本または抄本に加えて確定証明書が必要です。
調停で決まった場合は、調停調書の謄本または抄本などを提出します。
家庭裁判所で住所や氏名の秘匿決定を受けている場合には、秘匿事項届出書面謄本や秘匿決定謄本などが必要になることもあります。
必要書類は合意方法や加入していた年金制度によって異なるため、実際に申請する前に年金事務所などへ確認してください。
参考:日本年金機構「離婚時に年金分割をするとき」
3号分割も請求手続が必要
3号分割では、対象期間について相手方の合意を得る必要はありません。
しかし、離婚届を提出しただけで自動的に厚生年金記録が2分の1になるわけではありません。
第3号被保険者であった人から、標準報酬改定請求書などを提出して請求する必要があります。
また、婚姻期間中に合意分割と3号分割の両方の対象期間が含まれている場合、合意分割を請求すると、3号分割についても請求があったものとみなされます。
そのため、必ず合意分割と3号分割を別々に申請する必要があるわけではありません。
年金分割の請求期限
2026年4月1日から、離婚時の年金分割について大きな変更がありました。
2026年4月1日以降に離婚等をした場合、年金分割の請求期限は、原則として離婚した日の翌日から起算して5年以内です。
従来は原則2年だったため、大幅に延長されています。
一方、2026年3月31日以前に離婚等をした場合は、従来どおり原則2年以内です。
「2026年4月から法律が変わったのだから、過去に離婚した人も5年になる」というわけではありません。
さらに重要なのは、5年以内に夫婦で合意すればよいのではなく、原則として期限内に年金事務所などで実際の年金分割請求を完了する必要があることです。
離婚協議書や公正証書を作っただけで安心していると、年金分割自体が行われないまま期限を迎える可能性があります。
家庭裁判所に申し立てた場合の期限の特例
年金分割の割合について家庭裁判所の調停や審判を利用している場合には、請求期限について特例があります。
たとえば、本来の年金分割の請求期限までに調停や審判を申し立てたものの、調停成立や審判確定が本来の期限を過ぎてしまった場合です。
一定の要件を満たせば、調停成立日や審判確定日などの翌日から起算して6か月を経過するまで、年金分割を請求できます。
また、本来の請求期限が満了する前6か月以内に調停が成立したり審判が確定したりした場合についても、成立・確定日の翌日から6か月という特例が適用される場合があります。
ただし、家庭裁判所へ申し立てれば期限が無期限になるわけではありません。
調停成立や審判確定の後にも、年金事務所などで年金分割の請求を行う必要があります。
また、分割について合意した後や裁判手続で按分割合が決まった後、実際の分割請求をする前に当事者の一方が死亡した場合には、一定の要件のもと、死亡日から1か月以内に限って請求が認められることがあります。
期限ぎりぎりのケースでは自己判断せず、年金事務所や弁護士などへ確認した方が安全です。
合意できないときは家庭裁判所に申し立てる
合意分割の按分割合について夫婦の話し合いがまとまらない場合や、相手が話し合いそのものに応じない場合は、家庭裁判所を利用できます。
離婚前であれば、夫婦関係調整調停、いわゆる離婚調停の中で年金分割の割合について話し合うことができます。
すでに離婚している場合は、「年金分割の割合を定める審判又は調停」を申し立てます。
2026年4月1日以後に離婚した場合は、原則として離婚した日の翌日から起算して5年を経過すると、この申立てもできなくなるため注意が必要です。
調停と審判の違い
調停では、裁判官と調停委員で構成される調停委員会を介し、当事者間で按分割合について話し合います。
合意が成立すると、調停調書が作成されます。
一方、審判では、裁判官が当事者双方の意見や年金分割のための情報通知書などを確認したうえで、按分割合を決定します。
年金分割の割合を決める手続については、「必ず先に調停を申し立てなければ審判を申し立てられない」という仕組みではありません。最初から審判を申し立てることも可能です。
ただし、審判を申し立てた場合でも、裁判所の判断によって調停手続が先行することがあります。
申立先の家庭裁判所
調停を申し立てる場合は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意して定めた家庭裁判所へ申し立てます。
審判の場合は、申立人または相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、あるいは当事者が合意して定めた家庭裁判所が申立先となります。
調停と審判では管轄のルールが少し異なるため、「離婚したときに利用した家庭裁判所へ出せばよい」と決めつけず、申立前に確認しましょう。
申立てに必要な書類と費用
全国共通の案内では、標準的な申立書類として次のものが挙げられています。
- 申立書および必要な写し
- 離婚後に交付された「年金分割のための情報通知書」
- 進行に関する照会回答書
- 必要に応じて送達場所等届出書
- 裁判所が追加で提出を求める資料
家庭裁判所に提出する情報通知書は、離婚後または事実婚関係解消後に交付されたものが必要です。
原本を裁判所へ提出するため、その後の年金事務所での手続に備えてコピーを手元に残しておくとよいでしょう。
申立てに必要な費用は、基本的に次のとおりです。
- 収入印紙1,200円分
- 連絡用の郵便料
審判を申し立てる場合は、審判確定後に確定証明書を取得するための手数料として、別途150円分の収入印紙が必要です。
郵便切手の金額や提出部数などは家庭裁判所によって異なるため、実際に申し立てる裁判所の最新案内を確認してください。
参考:裁判所「年金分割の割合を定める審判又は調停」
裁判所で割合が決まっても自動的には分割されない
家庭裁判所の調停や審判で按分割合が決まっても、その時点で厚生年金記録が自動的に書き換えられるわけではありません。
調停調書や審判書などを取得したうえで、年金事務所、各共済組合、私学事業団などの窓口で、年金分割の請求手続を行う必要があります。
「裁判所で決まった=年金分割が終わった」ではありません。
ここは年金分割で特に見落としやすいポイントです。
裁判所の手続が終了した後は、請求期限の特例が適用される場合も含めて、自分の期限を確認し、速やかに年金分割の手続へ進みましょう。
まとめ
離婚時の年金分割は、相手の年金を半分もらう制度ではありません。
婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録を夫婦間で分割し、分割後の記録を将来の老齢厚生年金などに反映させる制度です。
共働き夫婦でも対象になる可能性があり、「自分も働いているから関係ない」と考えるのは早計です。
共働きでも、まず情報通知書で確認する
年金分割には、当事者の合意または裁判手続によって割合を決める「合意分割」と、2008年4月1日以後の第3号被保険者期間について原則2分の1ずつに分割する「3号分割」があります。
共働き夫婦の場合でも、婚姻期間中の厚生年金記録に差があれば合意分割が関係する可能性があります。
また、現在は会社員として働いていても、婚姻期間の一部に第3号被保険者だった期間があれば、3号分割が関係することもあります。
2026年4月1日以後に離婚等をした場合、年金分割の請求期限は原則として離婚した日の翌日から起算して5年以内です。2026年3月31日以前に離婚等をした場合は、原則として従来どおり2年以内です。
期限が延びたとはいえ、放置してよい制度ではありません。
夫婦が合意した場合も、家庭裁判所で按分割合が決まった場合も、年金事務所などへの請求をしなければ年金分割は完了しません。
さらに、「按分割合50%」という数字だけを見ても、自分の年金が実際にいくら増えるのかは分かりません。分割対象となるのは婚姻期間中の標準報酬記録であり、婚姻前・離婚後の記録や老齢基礎年金まで50%になるわけではないからです。
離婚を検討している段階で、まず年金分割のための情報通知書を取得し、対象期間標準報酬総額と按分割合の範囲を確認することが第一歩です。
金額が大きい場合、婚姻期間が長い場合、企業年金や財産分与も絡む場合、相手と割合について合意できない場合などは、年金事務所に加えて弁護士などの専門家へ相談し、年金分割だけを切り離さずに離婚後の生活設計全体から検討するとよいでしょう。