調停離婚とは|調停離婚の進め方・8つのメリットと3つのデメリット

調停離婚とは、離婚することに夫婦の一方が応じなかったり、離婚条件について話がつかない場合に、家庭裁判所に調停を申し立てて、離婚の話し合いを進めて成立する離婚のことをいいます。

この記事では、調停離婚の意味やメリット・デメリットについてご紹介します。

調停離婚とは

調停離婚とは、離婚について話し合っているなかで相手の合意が得られず協議離婚ができない場合に、家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立てて、この調停で話し合いを重ねて離婚することをいいます。

調停は、裁判官または家事調査官、調停委員による調停委員会が、夫婦双方の言い分をそれぞれ聞いて、必要に応じて調整案を提示しながら解決策を探っていきます。

合意ができて調停が成立すると、離婚が成立します。これが「調停離婚」です。

(1)調停離婚と協議離婚の違い

協議離婚とは、夫婦の話し合いで成立する離婚です。
協議離婚も調停離婚も、夫婦で話し合いを行い、合意すれば離婚が成立するという点では同じです。

ただし、協議離婚は当事者間で話し合いって離婚することについて合意し、離婚届を役所に成立すれば離婚が成立しますが、調停離婚は家庭裁判所の調停を経て調停が成立し、調停調書に離婚が記載された時に離婚が成立するという点で異なります(※ただし、その後離婚届の提出は必要です)。
さらに、離婚調停を経て作成された調停調書に記載された約束は、約束が守られなかった時に強制執行できるという強い効力があります。

また、協議離婚は相手の署名・捺印の他、2名の証人が必要ですが、調停離婚の場合には調停調書があれば、離婚届に相手の署名捺印は不要です。

(2)調停離婚と裁判離婚の違い

離婚調停と離婚裁判の最も大きな違いは、話し合いによる解決か裁判官の判断による解決かという点です。

ただし、調停はお互いの合意がない限り離婚は成立しません。しかし、離婚裁判では夫婦の一方が「離婚したくない」と拒否しても、裁判上の離婚原因が認められれば、判決で離婚が成立します。ただし、離婚裁判で判決が出された場合、その結果に不服がある当事者は高等裁判所に控訴することができますので、裁判をすればすぐに決着がつくというわけではありません。

また、調停も裁判も裁判官が関与する点では同じですが、調停では裁判官が前面に出ることはあまりなく、主に調停委員の背後で当事者間の話し合いを調整するのに対して、裁判では裁判官自身が前面に出て、裁判の進行を取り仕切り最終的な判断を下すという点でも異なります。

なお、日本では当事者間の話し合いがまとまらないからといって、調停を経ないで裁判を起こすことはできません。これは「調停前置主義」という規定があり、調停を申し立ててからでないと裁判に進めないという規定があるからです。
したがって協議離婚が困難な場合には、まずは離婚調停を申し立てることになります。

調停離婚の8つのメリット

調停離婚は、夫婦で話し合いができない場合に調停委員という第三者を交えて話し合いができる、離婚だけでなく親権や慰謝料、財産分与、養育費など離婚条件についても同時に話し合うことができるので、離婚後のトラブルが少ないなど、多くのメリットがあります。

(1)相手を話し合いの場につかせることができる

夫婦間で話し合いをして特にトラブルがなければ、協議離婚は成立します。しかしなかには、相手が離婚の話し合いにすら応じようとしないケースもあります。

このような時に調停を利用すれば、まずは相手を話し合いの席につかせることができます。
離婚調停を申し立てると、家庭裁判所から相手に呼出しの通知が送付されます。裁判所からこのような呼び出しがあれば、ほとんどの人はそれを無視することなく、調停にきてくれます。また、無断欠席すれば調停委員の心証を悪くするだけでなく、5万円以下の罰金を科せられることもあります。

つまり、相手が離婚の話し合いに応じようとしない時には、離婚調停を申し立てれば話し合いの場につかせることができるのです。

(2)第三者を交え冷静に話し合いができる

離婚問題について夫婦間で話し合おうと思っていても、冷静に話し合いを進めるのはむずかしいものです。ついつい感情的になってしまうことも多いでしょう。
このような時に、離婚調停では第三者である調停委員が介入し問題点を整理してくれるので、冷静に話し合いを進められることが期待できます。

(3)相手と直接顔を合わせなくても話し合いができる

相手からモラハラを受けていたり暴力を受けていたりする場合には、「相手と直接顔を合わせるのが怖い」「言いたいことも言えなくなってしまう」ということもあるでしょう。
そのような場合には、離婚調停を申し立てる際に「相手と顔を合わせたくない」という希望を伝えれば、当事者が同席することなく、調停員がそれぞれから話を聞いて当事者にその話を伝えて調停を進めていく、という調停の進め方をしてもらうことができます。

(4)自分の請求が妥当か判断できる

離婚の話し合いでは、相手の主張や自分の主張が妥当なものなのか分からず不安になることもあるでしょう。なかには「この家の名義は自分だから、財産分与はしない」という相手の主張をうのみにしてしまい、不利な条件のまま協議離婚をしてしまうケースも多々あります。

離婚調停では、調停委員の意見を聞きながら法的にも公正で妥当な結論になることを目指しますので、一方的に不利な条件で離婚をすることを避けることができます。

相手の主張に納得できず裁判所の考えを知りたいと思えば、「調停案」を出してもらうこともできます。
「調停案」とは、当事者の言い分を前提に調停委員会で妥当な解決は何かについて判断し、決められた解決策のことをいいます。裁判所が「妥当である」と考えている解決策を提示してもらうことができるので、相手や自分の請求が妥当か客観的に判断することができるというわけです。

(5)相手が開示しない財産を調査できる

離婚するという点については双方の合意ができていても、慰謝料や財産分与などの離婚条件が争点になることがあります。
離婚の意思を固めたら、なるべく早く相手がどれだけの財産を持っているか把握しておくことをおすすめしますが、話し合いのなかで財産開示を求めても、相手が財産の全容を明らかにしないことがあります。なかには、勝手に名義を変更したり処分したりされることもあります。

このような時には、離婚調停で調停委員会から当事者双方に対して保有する財産について明らかにするよう求めてもらうことができます。つまり、離婚調停では、裁判所の力を借りて相手に財産を開示させ調査ができるようになるのです。

なお、調停中に相手が財産を処分したり、財産の名義を変更したりする心配があれば、調停とは別に保全処分を申し立てることもできます。

(6)親権や慰謝料、養育費なども同時に解決できる

離婚調停では、離婚するか否かだけでなく、親権や慰謝料、養育費などの離婚条件についても調停委員のアドバイスを聞きながら話し合うことができます。
「慰謝料はもらえるのか」「もらえるとしたらいくらなのか」「子どもの親権者はどちらにするか」「養育費はいくらもらえるのか」などについて、過去の判例やデータを提示されながら話し合うことができるので、当事者間で話し合うよりも効率よく離婚の話し合いを進めることができます。

(7)調査官に調査してもらうことができる

子どもがいる場合には、親権や面会交流について争いが生じることがよくあります。
このような時、家庭裁判所の調査官が環境調査や子どもの意向調査を行うことがあります。
家庭裁判所調査官は社会学や心理学の専門家で、「子どもの幸せのためには、どちらが親権者になるべきか」「面会交流は、どのように行われるべきか」などについて、実際に家庭を訪問したり子どもに面談したりして調査し、裁判官宛に報告書を作成します。

このように、離婚調停では、家裁調査官の意見を聞くことができるというメリットがあります。

(8)約束が守られない場合は強制執行できる

離婚調停で決められた約束は、調停調書という公的な書類に記載されるので、守られやすくなります。また、調停調書がある場合には、財産分与や慰謝料、養育費について取り決めた内容が守られなかった場合には強制執行をすることができます。

※協議離婚でも離婚協議書を作成し「強制執行認諾文言付き公正証書」にしておけば、強制執行することができます。

▶ 養育費を支払わない時に、支払わせる方法(ケース別まとめ)

調停離婚の3つのデメリット

多くのメリットがある調停離婚ですが、調停離婚にもデメリットや限界があります。
調停離婚を検討している際には、調停離婚の3つのデメリットも知ってから手続きを進めるようにしましょう。

(1)手間と時間がかかる

夫婦の間で話し合いがまとまれば、離婚届を役所に提出するだけで離婚は成立します。

一方、調停離婚の場合は家庭裁判所の手続きを利用するので、調停を申し立て期日指定を受けて、期日に出席して協議を行い調停が成立すれば、はじめて離婚が成立します。調停期日は、平日の日中に行われますので、平日になかなか仕事を休めないという人は、スケジュール調整が難しいこともあるでしょう。

また、1回の調停でかかる時間は1~2時間ですが、申し立てから最初の調停期日に入るまで、1カ月程度かかりますし1回の期日で調停が成立することはほとんどなく、2、3回は裁判所に行かなければならないケースがほとんどです。

したがって、仮に調停がスムーズに進み1回の期日で成立しても離婚成立まで1カ月以上はかかることになり、2、3回の期日が必要となる場合には、3カ月程度の時間がかかることになります。

(2)相手が応じなければ調停は成立しない

調停では、当事者双方から話を聞くことが義務づけられています。
したがって、相手が調停に応じなければ解決の道を探りようがなく、結果として調停が不成立になる確率が高くなります。

裁判所としても、無断欠席を黙認しているわけではなく相手に出頭勧告を出したり、家庭裁判所の調査官が訪問して説得したりします。それでも相手が応じなければ、5万円以下の罰金を科します。

しかし、それ以上はどうすることもできないので、相手がそれでも頑なに調停に応じなければ、調停を取り下げるか調停不成立として離婚裁判を起こすしかなくなります。

(3)戸籍に「調停による離婚」と残る

調停離婚をすると、戸籍に「調停による離婚」と記載されます。
離婚届に記載される離婚理由など気にしない、という人にはデメリットにはなりませんが、この記載をネガティブにとらえてしまう人からすれば、この点も調停離婚のデメリットといえるでしょう。

離婚調停の流れ

離婚調停は、ほぼ1カ月間隔で行われ、1回分の調停は通常2~3時間かかります。結論が出るまでは、3、4カ月かかるケースがほとんどですが、離婚条件について揉めているケースでは、1年ほどかかるケースもあります。

(1)家庭裁判所に申立書を提出

調停離婚は、まず家庭裁判所に離婚調停の申立をすることから始まります。
離婚調停の申立とは、家庭裁判所に「調停申立書」を提出することです。

調停申立書の作成は、それほど難しいものではありません。書き方については、以下のひな形を参考にしてください。分からない点があれば、家庭裁判所窓口の職員に質問すれば、ていねいに教えてもらうことができるはずです。

▶ 裁判所「家事調停の申立書」

(2)調停期日が決められる

家庭裁判所に離婚調停を申し立てると、①調停委員が選任され、②調停期日が決定し、③当事者が呼び出され、④調停期日が実施され、⑤調停の成立・不成立という流れで進行していきます。

担当の調停委員が決まると、調停期日が決められます。調停を申し立てた申立て人には、家庭裁判所から候補日時の打診がされますので、その際にスケジュール調整をします。

(3)第1回調停期日

第1回調停期日では、家庭裁判所に出かけて窓口で名前を告げて受付をします。
申立人の場合には、申立人待合室で待ち、相手方は相手方待合室で待ちます。つまり、申立人と相手方は顔を合わせなくて済むように、配慮してもらうことができます。

離婚調停では、調停委員が申立人から話を聞き、その後相手から話を聞くというように交互に話を聞いていきます。

調停で、手続き説明などで相手と同席で説明するよう求められることもありますが、相手と顔を合わせるのが嫌な場合には、その旨を調停委員に伝えれば同席を無理強いされることはありませんので安心してください。

(4)2回目以降の期日

調停期日は1回で終わることもありますが、3回程度かかることが多いようです。
2回目以降の調停期日は、3~4週間後に行われることが多いようです。

2回目の調停期日では、第1回調停期日で聞いた相手の言い分に対する自分の考えをまとめておくと、調停がスムーズに進むこともあります。

2回目の期日で合意が成立しないが、今後の調整で合意が成立する可能性があると調停委員会が判断した場合には、3回目の期日を調整することになります。

(5)調停の成立・不成立

当事者双方が争点について合意した場合には、当事者間の合意内容が調停調書に記載され、調停が成立します。

話し合いがまとまらず、これ以上調停を続けても合意が成立する見込みがない場合には、「調停不成立」となり、調停が終了します。

離婚調停の心構え

離婚調停と聞くと、緊張する人も多いと思いますが、話し合いを行う場なので自然体で臨めば大丈夫です。

(1)離婚調停に持っていくもの

調停に行く際には、調停申立書、事情説明書、添付書類、その他個々に必要な書類を持参します。

おすすめしたいのが、これまで夫婦の間で起きた出来事や、なぜ離婚したいと思ったのかという具体的な事実を紙にまとめておくことです。
事前に用意することで自分自身の考えがまとまりますし、緊張しているなかでも冷静に自分の要望を主張することができるようになります。

(2)だらしない服装は避ける

服装はスーツでなければならないわけではありませんが、清潔感を心がけ、だらしない服装などは避ける方が無難です。
そのほか派手な服装や高価な装飾品などは、浪費家という印象を与えてしまうこともあるので、避けるようにしましょう。

(3)むやみに反発しない

調停委員のご機嫌をとる必要はありませんが、調停委員も人間なのでよい印象を持たれる方が調停が有利に進むことが期待できます。
「調停委員が言っているのだから、受け入れるしかない」と思う必要はありませんが、自分の要望が通らないからといって、むやみに反発するのも避けましょう。

もし自分がどうしても納得できなければ、その納得できない理由を伝えて、回答を持ち帰り、弁護士に相談してよく検討したうえで次回期日に回答しても構いません。

まとめ

以上、調停離婚の意味や調停離婚のメリット・デメリット、調停離婚の主な流れや心構えなどについてご紹介しました。
離婚問題に直面した場合には、大変なストレスを感じるものです。できる限り話し合いを早く済ませたいと思うのは当然です。
しかし、取り決めをきちんとしなかったばかりに、その後の生活が苦しくなってしまう方も多くいらっしゃいます。
自分の当然の権利を知らなかったために不利な条件で離婚してしまったり、必要な取り決めをせずに離婚後に後悔することがないよう、離婚調停を上手に利用することをおすすめします。