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離婚調停とは
離婚調停とは、夫婦間の話し合いがまとまらず離婚ができない場合に、家庭裁判所に申し立てる調停のことです。
調停では、裁判官と一般市民から選ばれた調停委員が夫婦の間に入って、夫婦それぞれの話を聞きながら、夫婦が合意することを目指しアドバイスなどをしてくれます。
(1)家庭裁判所に申し立てる
離婚調停は、家庭裁判所に申し立てます。
申し立てる裁判所は、相手方の「住所地」の家庭裁判所、もしくは夫婦が合意して決めた家庭裁判所です。
「住所地」とは、その人の生活の本拠で、本籍地とは関係ありません。
通常は、住民票に記載されている住所ですが、別居して別に借りたアパートがあったり実家に戻ったりしている場合には、そこが「住所地」になります。
たとえば、北海道で夫婦生活を送っていたものの、離婚をしたいと思って東京の実家に子どもと一緒に戻り、今は東京が生活の本拠となっているというようなケースで、妻が夫を相手方として調停を申し立てる場合には、夫の住所のある北海道の家庭裁判所で行う必要があります。
ただ、妻が幼児を抱えていたり、健康上の理由で北海道まで出向くのが難しいという事情があったりする場合もあるでしょう。
そのような事情がある場合には、本来であれば管轄外での調停は受け付けられませんが、裁判所で必要があると認めてもらえれば、東京家庭裁判所でも調停をしてもらうことができます。「単に遠くて不便だから」という理由では認められませんので注意が必要です。
また、平成25年より、遠隔地の当事者は電話またはテレビの会議システムによって、調停や審判の手続きを受けられることになりました。
ただし、離婚の合意や成立の期日には、出席をしなければなりません。
(2)離婚調停で必要な書類・費用
離婚調停を申し立てる際には、収入印紙1,200円と、呼出しのために使われる郵便切手が1,000円程度が必要です(切手代は家庭裁判所によって、多少の違いがあります)。
事件が終わり余った切手分は、返してもらえます。
これは、同時に慰謝料を100万円請求しても、500万円の財産分与を求めても、要求する金額に関係ありません。誰もが広く安心して調停を利用することができるように、という配慮からです。
申立てに必要な書類は、以下の通りです。
① 申立書及びその写し1通 ② 事情説明書 ③ 連絡メモ ④ 資料非開示の申出書(上記①~③で開示されたくないもの) ⑤ 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書) ⑥ 年金分割のための情報通知書(年金分割割合についての申立てが含まれている場合) |
調停申立書の作成は、それほど難しいものではありません。書き方については、以下のひな形を参考にしてください。分からない点があれば、家庭裁判所窓口の職員に質問すれば、ていねいに教えてもらうことができるはずです。
また、「事情説明書」については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
あわせてご覧ください。
離婚調停で勝つために知っておきたい10個のコツ
離婚調停を申し立てる前には、いろいろと準備をしなければならないことがありますし、離婚調停で勝つためには、さまざまな工夫が必要です。
ここでは、離婚調停で勝つために最低限知っておきたい10個のコツについてご紹介します。
(1)事情説明書のポイントを理解する
事情説明書とは、裁判所が調停で充実した話し合いをするために、あらかじめ当事者の基本的な情報を、調停委員に知っておいてもらうために提出をするものです。
離婚調停を申し立てる際には、申立書とともに、夫婦関係や未成年のお子さんの事情などを書いて、家庭裁判所に提出する必要があります。
事情説明書は、裁判所が相手から希望があれば、相手に見せる可能性があります。したがって、相手を刺激するようなことは書かないように注意して、事実関係を客観的かつ端的に記載するようにしましょう。
また、子どもの親権が欲しいのであれば、「現在、お子さんを主に養育している人は誰ですか」という質問について「□申立人」にチェックをしておきたいところです。なぜなら、親権者を認定する際には、「これまで、夫婦のどちらが主に子どもを監護してきたか」が重要視されるからです。
自分や相手方以外の人(たとえば自分の両親など)が監護している場合には「□その他」にチェックをして、「申立人の両親が監護しています」と記載するようにしてください。
「事情説明書」の書き方については、以下の記事で各項目ごとに記載事例を掲載し、注意点についても詳しくご紹介しています。
あわせてご覧ください。
(2)陳述書を作成する
陳述書とは、事情説明書では伝えきれなかった言い分を記載する書面です。
「調停の限られた時間内では、冷静に要領よく話す自信がない」という場合には、言い分を陳述書にして提出しましょう。
陳述書には、これまでの経緯や、自分が望む離婚条件などを記載します。
時系列に整理して、内容ごとに見出しをつけるなどして工夫するのもおすすめです。
相手への不満や恨み、グチは書かないように注意して、自分に不利になることには触れないようにします。
離婚調停の陳述書の書き方については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
(3)服装は清潔感のあるものにする
離婚調停に訪れる際の服装については、とくにルールなどがあるわけではありませんから、必ずしもスーツである必要はありませんし、夏はクールビズでもOKです。ただし、服装は清潔感のあるものを選び、裁判官や調停委員への印象が良くなるような、落ち着いた服装にしましょう。
場違いなファッションや、飾り立てたおしゃれは避けた方が無難です。お金に関する問題を扱うことが多いので、浪費している印象を与えかねない派手な服装やメイク、アクセサリーは避け、露出の多い服装も控えるようにしましょう。
(4)自分の主張を明確にする
離婚調停の前には、まずは自分が何を求めているのか、相手に何をしてほしいのかを明確にしておくことが大切です。「何を求めているか」を明確にして相手に伝えることは、話し合いの出発点と言えるからです。
子どもの親権、面会交流、養育費のほか、財産分与、慰謝料についてどのような希望を持っているのか、離婚後の生活をシミュレーションしながら希望をまとめます。
離婚調停を申し立てているのですから、相手は「自分は離婚を要求されているのだ」ということは理解しているでしょうが、親権や養育費、面会交流や財産分与、慰謝料の請求などについては、双方の認識が食い違っていることが多いものです。
そこで、自分が相手に何を望むのかを明確にして、調停委員を通じて相手に伝えてもらうことを意識しましょう。
たとえば、「子どもの親権はほしい」「養育費は子ども1人あたり5万円」「財産分与は、預貯金の半分」など、具体的に希望を明確に伝えるようにします。
そして、慰謝料を請求する場合には、その理由(不倫をした」「暴力をふるった」など)とあわせて証拠などについて準備をしておきます。
不倫の証拠については、下記の記事を参考にしてください。
DVの証拠については、下記の記事を参考にしてください。
(5)自分の主張を裏付ける証拠を用意する
調停は、あくまでも「話し合い」ではありますが、調停を進める時には「調停が不成立となり裁判になった場合には、どのような結論になるのか」も意識して進めていくことが大切です。
互いの主張が食い違っていて調停で話し合いがまとまらずに裁判になれば、裁判官は証拠や経験則に基づいて判断することになります。
たとえば、暴力があった場合には、調停でも後々裁判になった時のことを意識して、その事実を伝えていくことが必要です。
したがって、離婚を考え始めたら、暴力や不倫の証拠はできる限り集めておきます。そして、その証拠のコピーを最初の調停期日に提出するようにしましょう。
下記の記事では、離婚理由別に有効な証拠や注意点について詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
▶ 悪意の遺棄は民法770条の離婚事由|慰謝料は請求可能?証拠は必要?
(6)相手の言い分と自分の主張の違いを整理する
自分の主張や希望を相手がすべて了承してくれれば、それで調停は成立します。
しかし、たいていはそんなに簡単にはいきません。
そこで、まずは相手が主張してきそうなことを予想して自分の主張と食い違いそうなところを整理しておきます。また、調停が始まったら相手がどのような回答をしたのか、調停委員を通じてよく確認します。
以下のような表にしてまとめると、自分でも状況を把握しやすくなるでしょう。
相手の希望と自分の希望の食い違いを「争点」といいますが、この争点をどのように調整するかが、調停のポイントとなります。相手がどのような理由から、自分の希望を受け入れないのかを明確になったら、どのような証拠を出せば相手が納得するのか検討していきます。
(7)争点があれば主張を裏付ける証拠を提出する
たとえば、前述の表の場合、養育費について自分の主張と相手の主張に2万5,000円の差額がありますが、現在かかっている子どもの費用の明細や自分の給与明細を示して、「なぜ、月5万円の養育費が必要であるのか」という根拠を示していきましょう。
また、相手が暴力をふるったことについて認めていない場合には、暴力があったかどうかが争点となりますので、その事実を裏付ける証拠(診断書や動画、メモ、第三者の証言など)がないか再度考えて、あれば提出するようにします。
(8)お互いが納得できる解決策があるか検討する
自分の主張やその理由、それを裏付ける証拠の提出などによって、相手が自分の希望を受け入れてくれることもあります。その際には、それで合意が成立し、調停が成立します。
たとえば、慰謝料を500万円請求していて、当初は相手が払わないと言っていたところ、調停で話し合いをしたなかで、「300万円なら払う」と解決案が提出され、こちらがそれでよしとすれば、調停を成立させることもできます。
ただ、その提案で納得できない場合には、こちらからも解決策があるか検討するのもおすすめです。たとえば「300万円では納得できないが、400万円なら納得できる」などです。
「何が何でも500万円もらわなくちゃ気が済まない」という気持ちは十分理解できますが、早期解決を目指すなら、調停委員の意見なども受け入れたうえで、相手との妥協点を見出すのも一つの手です。
(9)調停委員に調停案を依頼してみる
当事者間でどうしても妥協点が見い出せなかった場合には、調停案を出してもらえませんか」と依頼してみましょう。
もちろん、調停案を出してもらったからといってその調停案を必ず受け入れる必要はありません。しかし調停案は、公平中立な調停委員会が、当事者双方の主張や提出された証拠を踏まえて、「この解決策がもっとも望ましいだろう」として提出されるものですから、検討する余地は十分あるといえます。
もし、調停案の内容が妥当なものなのかどうか分からない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
(10)調停案で納得できない時は代案を出す
調停委員会から出された調停案に納得できない場合には、その案を拒否しても問題はありません。ただ、調停案を受け入れることができない場合でも、単に「受け入れられない」とするのではなく、「この調停案をそのまま受け入れることはできないが、この部分を修正するなら、受け入れられる」と代案を考えて、それを調停委員に伝えてみましょう。
調停案を尊重したうえで出した代案を出すことで、調停委員が調整をしてくれて、調停が合意に至ることも多々あります。
まとめ
以上、離婚調停で勝つために知っておきたい10個のコツについて、ご紹介しました。
離婚調停は、離婚裁判と違い、不成立にすることもできますが、離婚に詳しい調停委員の意見を聞くことができるチャンスでもあります。
また、離婚調停が成立した場合の取り決めには法的効力があるので、離婚後のトラブルの予防にもなります。
当事者間で離婚の話し合いがまとまらなければ、離婚調停を上手に活用し、早期解決を目指し1日も早く新しい人生をスタートさせましょう。