日本人配偶者と離婚|在留資格はどうなるのか

日本人である妻や夫と結婚した外国人が日本で生活していたものの、その後離婚することになった場合には、通常の離婚手続き以外に在留資格についても、検討しておくことが必要となります。

日本人配偶者と離婚した時の在留資格

日本人の妻や夫と結婚した外国人は、離婚をすると日本にいられなくなってしまうから、離婚できないという相談は、年々増えています。なかには「日本にいられなくなると子共に会えなくなってしまうから、離婚できない」という相談もあります。

また、離婚後に定住者の在留資格を取得したいという思惑から、子どもの親権者になることを強く希望する人もいます。

日本に住む外国人が、日本人の配偶者と離婚する時には、在留資格が深く関係することになるので、問題点を明確にしておくことが大切です。

(1)そもそも在留資格が取り消される場合とは

平成16年の出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正によって、「特定の事由が生じた場合または判明した場合」には、在留期間の途中であっても、在留資格が取り消される制度がもうけられました。さらにその後の改正で、取消事由が追加されています(入管法22条の4第1項)。

この入管法で離婚に関連して問題となるのは、同項7号で、「日本人の配偶者」または「永住者の配偶者」として在留資格を有する外国人が、配偶者としての生活や活動を継続して6カ月以上行わない場合には、在留資格が取り消される場合があるとしています。

この「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6カ月以上、行わない場合」とは、たとえば、外国人が日本人の配偶者と離婚した場合や死別した場合など、婚姻が社会生活上の実質的基礎を失っている場合などをいいます。

したがって、配偶者から暴力を受けたために一時的に施設に避難している場合や、子どもの養育などやむを得ない事情のために配偶者と別居して生活しているなど、正当な理由がある場合には、在留資格が取り消されることはありません。

また、離婚調停や離婚裁判の途中である場合も、それを理由に在留資格が取り消されることはありません。

(2)別居中の在留資格はどうなるか

前述したとおり、やむを得ない事情があって日本人の配偶者と別居している時には、在留資格は取り消されません。
しかし、正当な理由がなく長期間別居している場合には、在留資格の変更申請が不許可となる場合があります。

過去の判例では、日本人夫と4年8カ月別居しているタイ人妻の在留資格変更申請の不許可処分が適法であるとされたケースがあります。

このケースでは、「日本人との間に婚姻関係が法律上存続している外国人であっても、その婚姻関係が社会生活上の実質的基盤を失っている場合には、その者の活動は日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということはできない」としています。

つまり、法律上は結婚していても別居期間が長期間にわたり、実質的には結婚していると言えず、また婚姻関係が修復する見込みがない場合には「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えていないとして不許可となる可能性があるということになります。

(3)3年以上程度の婚姻は「定住者」の可能性

日本人配偶者との離婚によって、「日本人の配偶者等」の在留資格がなくなったら、当然在留資格がなくなるというわけではありません。

「日本人の配偶者等」の在留資格がなくなった場合でも、他の在留資格の該当性があれば、その在留資格への変更許可申請をすることができるからです。

(1)外国人の夫(妻)が日本人の実子を養育する場合
入国管理局の平成8年7月30日の通達「日本人の実子を扶養する外国人親の取扱についての通達」によると、以下の①~③の要件に該当する場合には、「定住者」の在留資格への変更が許可されると規定されています。

①日本人の嫡出子又は日本人の父から認知されている子の親であること(なお、日本人父の認知は必要だが、子の日本国籍取得手続きが完了している必要はない)

②当該子どもが、未成年で未婚であること

③当該外国人が親権を持っていて、現に相当期間看護養育をしていること
つまり、たとえば日本人の妻が子の親権者となった場合には、外国人の夫はこの要件に該当しないことになります。「定住者として在留資格がないと、日本人の実子との面会交流ができなくなる」という懸念がありますが、子どもとの面会交流が定住者としての在留資格取得にどの程度影響するかについては、今のところ明確になっていません。

(2)上記以外で、定住者の在留資格に変更できる場合
法務省入国管理局は、「日本人配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への在留資格変更が認められた事例、認められなかった事例を、ウェブサイトで公表しています。

事例を見ると、在留期間が長く、かつ日本人実子に対して毎月3万円の養育費の支払いを継続しているなど、さまざまな事情が考慮されていることが分かります。

「定住者」への在留資格変更許可が認められた事例

「定住者」への在留資格変更許可が認められなかった事例

▶ 法務省「「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への在留資格変更許可が認められた事例及び認められなかった事例について」

国際結婚の解消|知っておくべきこと

国際結婚をした夫婦が離婚する場合には、国によって離婚に関する法律が異なることから、在留資格以外にもさまざまな問題が生じます。
たとえば、「調停や裁判はどこで行われるのか」「どの国の法律が適用されるのっか」などです。また、金銭的な問題や子どもの問題は、深刻な問題に発展するケースもあります。

(1)裁判所は相手の住所地

日本では、約9割が協議離婚(話し合いによる離婚)ですが、協議離婚を認める国は台湾、中国、韓国などごく少数に限られ、国によって手続きが異なります。
また、協議離婚が認められない国では、夫婦間の協議で離婚による話し合いがまとまっても、離婚の成立自体が認められません。

したがって、国際結婚をした夫婦が離婚する場合には、最初から調停を申し立てて、審判離婚か裁判離婚の方法をとるなど、最初から裁判所を介しておくとよいでしょう。

調停、裁判は、原則として相手の住所地の裁判所に起こします。
相手が外国人であっても、日本に住んでいるのであれば、日本で調停、裁判を起こすことができます。

もし、相手が外国に住んでいる場合には、その国の裁判所に訴訟を起こさなければなりません。ただし、外国人と結婚して日本に住んでいたのに、相手が家族を放置して勝手に帰国したり国外通報になったりした場合には、日本での裁判が認められます。

(2)財産分与や養育費はシビアになる

慰謝料や財産分与の請求については、どの国の法律によるかが問題となります。
日本の法律が適用されるなら、配偶者の国籍に関係なく権利のあるものは請求することができます。
ただし、相手が日本から出て行ってしまうと養育費や慰謝料が支払われなくなったという問題は後を絶ちません。これらの問題を解消するのは、かなり難しいということも知っておきましょう。

(3)子どもの親権や面会交流

子どもが母親と同じ日本国籍であれば、日本の法律が適用されます。しかし、子どもが父親と同じ外国籍であれば、その国の法律が適用されます。

実際には、相手が子どもを連れて自国に戻ってしまったり、現地で離婚が成立しても子どもの日本への出国が認められなかったりするケースがあります。

まとめ

以上、日本人配偶者と離婚したり別居したりした時に、在留資格がどうなるのかについてご紹介しました。
日本人の配偶者等の在留資格を持つ外国人が、離婚する場合には、在留期限を確認して在留期間後は定住者の在留資格への変更をすべきです。

また、在留資格の更新請求が許可されないのではないかという不安から、別居の事実などを隠したりするのは絶対NGです。

もし、在留資格の更新や子どもの親権について不安がある場合には、早めに弁護士に相談して、必要な手続きを行うようにしましょう。