妻がDVをでっち上げた!弁護士が教える5つの注意点とは

妻が「夫からDVを受けた」と主張し、子どもを連れて家を出てしまった場合でも、現在の司法の運用を前提にする限り、妻子を家に連れ戻すことはできませんし、妻子の生活費である婚姻費用(生活費)の支払いをしなければなりません。

また、DVの主張が認定されてしまうと、離婚する時に慰謝料を請求される可能性もあります。

妻の主張が、でっち上げである場合には、到底納得できるものではありません。

では、このように妻が主張してきたら、どのように対処すればよいのでしょうか。

妻がDVを主張された時の対処法

「妻が子どもを連れて、突然家を出ていき、離婚したいと言ってきました。さらに妻は、『夫から激しい暴力を振るわれた』と主張しているようだ」という、男性からの相談は年々増えてきています。

しかし、夫が暴力など振るっていないのに、妻がDVを主張している場合も少なくありません。暴力だけでなく、夫が怒鳴ったり高圧的な態度をとったりしたなど、身体的な暴力だけでなく、言葉による暴力やパワハラ的な言動をされたと主張してくることもあります。

(1)DVが認定されると不利になる

現実に夫が妻に暴力を振るっている場合には、暴力は離婚原因となりますし慰謝料を請求される可能性があります。また、子どもとの面会交流ができなくなる可能性もあります。
したがって、DVの主張が事実でない場合には、徹底的にDVがなかったことを主張し、立証する必要があります。

特に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下、DV防止法)による保護命令が出てしまうと、これを後から覆すことは非常に難しくなります。
したがって、可能な限り早い段階で事実を確認して反論することが重要です。

(2)証拠の有無を検証する

まずは、妻が主張しているDVの内容を慎重に精査し、証拠があるか検討します。
録音や録画の証拠があれば、夫のDVは認定されてしまい、民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」(婚姻の破綻)があるとされ、妻から離婚したいと請求された場合には、離婚が認容されるでしょう。

したがって、まずは証拠があるか否かを確認することが大切です。

(3)徹底的にDVがないことを主張する

もし、DVの事実がないのであれば、離婚したいと言われても離婚に応じる必要はありません。また、離婚に応じるとしても、慰謝料を支払う必要はありません。
むしろ、妻のでっち上げによる離婚であることを明確にできれば「妻が、慰謝料を支払うのが筋である」という態度で臨むこともできます。

(4)子どもが連れ去られたら「子の引き渡し」の申立てを

子どもがいる場合には、妻が子どもを連れて家から出て行ってしまうことも多々あります。
なかには、妻が浮気をして離婚したくなったからと言って、夫のDVをでっち上げ、子どもを連れて家を出てしまい、婚姻費用を要求してくるケースもあります。

しかし、離婚をする際に親権を得るためには、子どもを手許においている親が有利になりますから、もし親権をとりたいなら早急に子どもを取り戻したいところです。

子どもを連れ去られた場合の対策としては、以下の3つの方法があります。

①家庭裁判所に子の引き渡しを求める調停または審判を申し立てる
②家庭裁判所に、監護者の指定を求める調停または審判を申し立てる
③早急に子どもを取り戻したい場合は、家庭裁判所に審判前の保全処分を求める

③の「審判前の保全処分」とは、裁判所が正式な審判を下す前に仮処分として子どもの引き渡しを命じてくれるものです。
調停の場合は、話がまとまらなければ自動的に審判に移行します。また、子の引き渡しは最初から審判を申し立てることもできます。

もし、妻による子どもの連れ去りが違法と判断されれば、その後親権について「妻の連れ去りは、不当な行為」として、親権者としての適格性が疑われ、夫が親権者となる可能性が出てきます。

(5)DVが虚偽の場合は、こちらが慰謝料請求できる

前述したとおり、DVの事実がないのに、妻がDVをでっち上げてきた場合には、妻に対して慰謝料を請求することができます。もし、妻が浮気をしていてその証拠がある場合には、妻だけでなく浮気相手にも慰謝料を請求することができます。

DV防止法に基づく保護命令が出されたら

妻が夫の暴力を主張する場合、離婚する前にDV防止法に基づく保護命令の申立てをすることがあります。
妻が警察署や市区町村役場の相談窓口で、夫の暴力を訴えると、警察署などは保護命令の申立てについて説明するので、妻がその指導に従って、申し立てをするからです。

(1)すぐに弁護士に相談する

妻から保護命令の申立てがあった場合、裁判所は原則として審尋期日を指定して、夫に連絡をします。保護命令事件は、速やかに審理する必要があるので、審尋期日は申し立てから1週間後くらいです。また、審尋期日の延期は原則として認められません。

したがって、審尋期日の呼び出しがあったら、すぐに弁護士に相談してください。そして、反論書面や証拠を準備しましょう。

(2)保護命令の要件を理解する

反論書面や証拠を準備する際には、保護命令が出る要件を理解しておくことが重要です。保護命令が発令される要件は、以下の3つです。

①配偶者からの身体に対する暴力を受けた者または配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた者(被害者)が
②配偶者からのさらなる身体に対する暴力により
③その生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと

そして、保護命令事件では、被害者が上記の要件に該当する事実を証明しなければならす、疎明だけでは足りないとしています。

(3)反論の準備を整える

前述したとおり、保護命令が発令されるためには、被害者の側で暴力を受けたことや、今後もその恐れがあることを証明しなければなりません。

しかし実際には、医者の診断書や傷・あざの写真、被害者の陳述書程度の証拠で、DVの事実が認定されてしまいます。
したがって、夫は妻の診断書による傷が、夫の暴力によるものではなく、妻が自分で転んだ結果によるものであることなどの事実を、具体的に反論することが必要です。

なお、DV防止法は、配偶者からの暴力を「身体に対する暴力」だけでなく、「心身に有害な影響を及ぼす言動」と定義しています。

しかし、実際妻が主張するDVには、必ずしも前記の定義に該当しない程度の、夫の精神的な暴力や暴言、パワハラなどの主張がされることもあります。

長い婚姻生活において、主張される暴言などについていちいち反論することは非常に困難です。さらに、細かい出来事については夫が記憶していないことも多く、反論することをくだらないと思い、諦めてしまうこともあります。

しかし、諦めてしまってはこちらに非がある状態で離婚することになり、慰謝料を請求されることもあります。さらに、子どもの親権を得ることは絶望的になり面会交流もかなわなくなってしまう可能性があります。

したがって、反論の必要性を理解して、記憶をたどりながら丁寧にひとつひとつ反論していくことが必要です。

まとめ

以上、妻からDVとでっち上げられた時に注意したいポイントなどについてご紹介しました。妻からDVを主張されても、裁判所や警察がそのまま鵜呑みにすることはありませんが、DV防止法に基づく保護命令が発令されてしまうことがあります。

したがって、一刻も早く弁護士に相談し、まずは保護命令が出ないように対処をしましょう。