妻からのハラスメント|離婚したいと考えた時の注意点

妻からの暴言・暴言、ハラスメントに悩み、離婚したいと考えた時、妻がすぐに離婚に応じてくれれば、離婚原因は特に関係なく協議離婚が成立します。

しかし、妻が離婚を拒絶したり財産分与などで相場以上の要求をされたりした時には、調停や裁判などで話し合うことになります。

妻の暴言・暴言、ハラスメントの証拠がある場合には、妻側も最終的には離婚を覚悟するでしょうし、相場以上の財産分与を要求されることもありませんし、妻に慰謝料を請求できるケースもあります。

妻からのDV、ハラスメントが増えている

「妻から罵られる日々を過ごしている」「毎日、妻に罵倒されている」「妻が、毎日殴ってくる」など、妻からの暴力や暴言、ハラスメントを理由として離婚を考える男性が増えています。

なかには、体調がおかしくなり心療内科に通ったところ、うつ病と診断された深刻なケースもあります。

(1)共働きが増えたことが原因?

従来は、DV離婚といえば夫の妻に対する暴言、暴力が圧倒的に多数でした。
しかし最近は、妻の夫に対する精神的暴力、ハラスメントなどを原因として離婚を考えるケースが増えてきました。

これは、働いて経済力がある妻が増え、男女の賃金格差が縮小してきていて、女性の社会的経済的地位が向上したことから、家庭内における夫婦間の力関係にも影響を与えてきたことが原因ではないかと言われています。

(2)男性自身の羞恥心や抵抗感

一般的には、DV等の被害者は女性であるという考えがまだ強いため、女性は被害を訴えやすいと言われています。一方で、男性が「女性から虐待や暴力を受けている」と被害を訴えることは、男性自身に羞恥心や抵抗感があることが多いものです。警察や裁判所でも男性の被害を軽く見る傾向があります。

しかし、それでも妻からの精神的暴力が我慢できず心身に異常をきたすような状態が続くようであれば、妻と話し合って妻の態度や言動を改めてもらうか、離婚を検討するのもやむを得ないでしょう。
そして、妻の暴言や暴力、ハラスメント等を原因として離婚をしたいと考える場合には、警察や裁判所を納得させるために、その事実を主張、立証するための証拠が大変重要になるということになります。

(3)妻からのDV、ハラスメント離婚事例

妻の夫に対する暴言・暴力、ハラスメントなどがある場合には、民法770条1項5号の事由を認定する重要な事情となります。

過去の判例では、東京高判昭和58年8月4日の事案が参考になりますので、ご紹介しましょう。

妻は、商社に勤務する夫の帰宅が遅いことなどを理由として、夫に腹を立て、夫が夜風呂から出てベランダに出ている間に内側からガラス戸の鍵を全部閉めて入れないようにし、一晩中タオルを持っただけの裸でベランダに放置しました。

また、夫に対して「遅くに帰ってきて、うるさい」「酒の匂いが不快だ」と言って、子供用の二段ベッドで寝るよう強要したり、夫の背広やネクタイをハサミで切ったりしました。
さらには、夫が寝ている時にペーパーナイフを持って襲い掛かり、夫の腕や額に軽傷ではあるものの、傷をつけたり、夫に水、味噌汁、ミルクなどをかけたりしました。

また、妻は夫の勤務先の上司に「商社は家庭を破壊する。犯人は会社である」と主張して、当時著名であった中絶禁止法に反対しビル解禁を要求する女性解放連合に応援を求めて、これが週刊誌に掲載されたことから、夫は会社を退職することになってしまいました。

高裁では、結婚生活が破綻した原因は、妻が夫に対して「仕事の内容、繁忙さに対する無理解な態度」があったこと、そして「夫に対して、異常、冷酷ともいうべき虐待があったもの」と認められ、妻の態度が結婚生活を破綻させたものとして、夫の離婚請求を認めました。

DV妻と離婚したいと思ったら

これまでもご紹介してきたように、妻の暴言・暴力、ハラスメントを理由として離婚したいと思う場合には、これらを主張、立証するための証拠が大変重要になります。
なお、夫が妻の暴言・暴力、ハラスメントを主張すると、妻側も「夫も暴言を吐いた」「夫が無理解なことが理由だ」などを主張してくることがありますので、それに対する反論も準備しておく必要があります。

(1)暴言、虐待、ハラスメントの証拠

妻の暴言や暴力、ハラスメントなどが、日常的に行われている場合には、それらの行為がいつ行われたのか、どのような暴言を吐かれたのかなど、夫の記憶が明確でない場合も多く、その証拠もない場合があります。

特に、暴言についてはどのような状況でどのような表現で言われたのかが非常に重要になりますから、「日頃から、ひどいことを言われている」などといった抽象的な主張をしても、主張として不十分です。

そこで、その会話の録音や録画などの証拠をしっかり集めるようにしましょう。録音や録画は、後々調停や裁判などでかなり決定的な証拠となります。

なお、妻の暴言や暴力、ハラスメントが原因で精神的に多大な打撃を受けた場合には、心療内科や精神科を受診して診断書をもらっておきましょう。録画や録音に加えて診断書があれば、強力な証拠となります。

(2)妻に対する慰謝料請求

妻の暴言や暴力、ハラスメントが原因で精神的な打撃を受け、それが原因で離婚したい場合には、妻に対して慰謝料を請求することができます。
慰謝料を請求する時にも、同様に、妻の暴言などを立証するための証拠が重要です。
また、妻の暴言などが原因でうつ病などの精神疾患に罹患し、通院や入院することになった場合には、離婚慰謝料とは別に、暴言などの不法行為による慰謝料、医療費、逸失利益などの損害賠償請求をすることっもあり得ます。

(3)早めに弁護士に相談する

妻の暴言などを理由として離婚する場合には、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。妻に「君の暴言が我慢できないから、離婚したい」と言ったところで、話し合いがスムーズに進むとは思えません。

逆に「あなただって暴言を吐いた」「あなたの稼ぎが悪いからだ」などと主張してくることもあります。
なかには、証拠がないことを利用して「暴言など一度もない」「逆に、あなたの方が暴言を吐いた」と反論してくる女性もいるほどです。

したがって、早めに弁護士に相談して、どのように証拠を集めるべきか、慰謝料はどれくらい請求するか、不法行為の損害賠償や医療費はどのくらい請求できるのかなどを知り、十分な準備をしてから離婚を切り出す方が、有利に離婚話を進めることができます。

なお、不法行為の損害額は、交通事故による慰謝料や逸失利益の損害額に準じて算定されることになる可能性があります。これも、相場などについて事前に弁護士に相談しておく方がよいでしょう。

まとめ

以上、妻の暴言や暴力、ハラスメントが原因で離婚する場合に注意したいポイントなどについてご紹介しました。
妻の暴言や暴力、ハラスメントを主張するためには、それらの行為を立証するための証拠が必要であり、証拠があれば慰謝料を請求する時も有利になります。
なお、証拠がない場合でもあきらめる必要はありません。

裁判所で、妻の暴言などを認めてくれなくても、婚姻関係が破綻しているということ自体を認めてもらえれば、夫の離婚請求を認める可能性も高くなります。

いずれにせよ、精神的に追い詰められてしまう前に、一度弁護士に相談してみましょう。