「子どもはいらない」という妻と離婚をする5つのステップ

「上昇志向が強い妻が、子どもは欲しくないというので、離婚したい」…このような、男性からの相談が増えています。

子どもをつくるかつくらないかは、夫婦にとって重大な問題ですが、それを理由に離婚することはできるのでしょうか。

子どもはいらないという妻と離婚できるか

子どもをつくる、つくらないという問題は、夫婦にとって重大な問題です。
しかし、妻が子どもを欲しがらない、もしくは夫が子どもを欲しがらないため、夫婦仲が悪くなり、離婚を考えるケースがあります。

今回は、子どもを欲しがらない妻との離婚を考えている男性からの離婚相談についてご紹介します。

(1)妻が承諾するなら離婚できる

離婚について相談される方のなかには、離婚原因(浮気や暴力など)がないと離婚することができないと誤解している方がいらっしゃいます。
しかし、日本では協議離婚が認められているので、夫婦が離婚について合意し、市区町村役場に離婚届を提出して受理されれば、離婚は有効に成立するのです。

したがって、子どもがいらないという妻に対して「子どもがいない生活は考えられないので、離婚したい」と申し入れて、それに妻が応じれば、離婚は成立することになります。

(2)妻が承諾しない時は調停を利用する

妻が離婚に応じないため協議離婚が成立しない場合には、調停離婚の申立てをすることになります。
調停離婚とは、「相手が話し合いに応じない」「離婚については合意したものの、慰謝料や財産分与などの細かい部分で折り合いがつかない」と言った場合に、利用します。

調停では、家事審判官と調停委員が、第三者の立場で夫婦双方の話を聞いて、解決策を探りながら話し合いによる解決を目指します。

当事者同士だと感情的になってしまいますが、調停委員が介入することで冷静に話し合いを進めることができるというメリットがあります。

(3)離婚訴訟となった時の注意点

調停を重ねても、離婚の合意ができない時や、慰謝料などの離婚条件について折り合いがつかない時、相手が調停に出席しない時には、調停は不成立となります。
離婚調停が不成立に終わった場合でも、夫婦にとって離婚が相当と思われる場合には、まれに裁判所から審判が下されることもあります(審判離婚)。

そのうえで、やはりどうしても離婚をしたい場合には、家庭裁判所に裁判を起こします。
離婚裁判を起こせるのは、民法770条1項で定める離婚原因がある場合に限られます。民法770条1項で定められた離婚原因のことを「法定離婚事由」といいます。

民法第770条
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

このうち、裁判で最もよく主張されるのが5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」です。
婚姻を継続し難い重大な事由は、一般的に①当事者の離婚意思、②客観的事情から認定されます。

そして、この客観的な事情は、別居や当事者の有責行為(浮気や暴力など)によって判断されます。

「妻が子どもはいらないと言っている」ということが、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると主張することはできないので、その前に別居など「夫婦関係が破綻している」という客観的な事情がある方が、裁判で離婚が認められやすくなるでしょう。

子どもはいらないという妻と離婚をする5つのステップ

子どもがいらないという妻と、離婚したい場合には、話し合い、別居、調停申し立て、離婚訴訟提起と段階を踏んで事を進める必要があります。

(1)まずは話し合いをする

子どもをつくるかどうかは、人生観の問題であって、いずれが正当であるということはできません。子どもをつくらずに夫婦がそれぞれに自己実現をはかることも十分あり得る話です。
また、子どもを産み育てることで自分自身が成長できるという面もあります。

妻は子どもを産むのが当然であるというものではなく、子どもができないことで離婚できるということはあり得ません。したがって、妻が仕事を優先し子どもを産まないとしても、それは離婚訴訟において離婚原因とは認められません。

しかし、夫がどうしても子どもが欲しいと思っている場合には、妻との価値観の違いがどうしても受け入れがたい場合もあるでしょう。

その場合には、自分がどうしても子どもが欲しいということを主張して、妻との考え方の違いをよく話し合ってみましょう。そして、妻に、これ以上夫婦生活を続けることが互いの人生にとって良くないことを分かってもらえるよう説得をすべきでしょう。

なお、費用はかかりますが、協議離婚について弁護士に依頼をして、相手と交渉をしてもらうこともできます。

(2)別居をする

夫の離婚したいという意思が変わらない場合には、一般的には離婚調停の申立て前に、妻と別居する方が望ましいでしょう。

妻と同居しながら離婚調停を行うのは、互いの精神的な負担が大きいですし、前述したとおり、民法770条1号の「婚姻を継続し難い重大な事由」があるか否かは、一般的に①当事者の離婚意思、②客観的事情から認定されますが、婚姻が破綻しているかの認定については、別居期間が重要な要素となるからです。

別居については、夫婦のどちらかがこれまで住んでいた自宅を出ることになりますが、妻が離婚に応じない場合には、妻が自宅を自ら出ることはあまりありませんので、夫が自宅を出ることを決断しましょう。

夫が家を出て別居し、そのうえで離婚したいと言えば、夫の離婚意思が固いということを妻に知らせることができ、妻の態度が変わることもあります。

(3)証拠を確保する

もし、妻が浮気をした、暴力を振るったなど、他の離婚原因がある場合には、客観的な証拠を確保しましょう。別居前に妻が浮気をしたのであれば、密会の現場を撮った動画や写真が証拠となります。また、暴言や暴力があれば、具体的な内容を録音したもの、ケガの状態を撮った写真、医師の診断書などが証拠となります。

(4)調停を申し立てる

別居をして、それでも妻が離婚に応じない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てます。申し立ては、原則として相手の住所地を管轄する家庭裁判所に必要な書類を提出します。郵送も可能です。夫婦が合意で決めた家庭裁判所でも構いません。

調停の申立てに必要なのは、申立書とその写し1通、夫婦の戸籍謄本などです。
相手に知られたくない情報などがある場合は「非開示の希望に関する申出書」、年金分割の申立てを含む場合は「年金分割のための情報通知書」、収入印紙1,200円、連絡用の郵便切手などです。

申立書の記載例については、以下を参考にしてください。

調停の申立書調停となった場合には、夫の言い分をまとめた事情説明書や陳述書を提出することになります。

なお、事情説明書や陳述書の書き方については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

▶ 事情説明書(離婚調停)の書き方(例文付き)

▶ 離婚調停の陳述書|書き方・注意点(サンプル付き)

(5)裁判を起こす

調停が不成立となり、それでも離婚したい場合には、離婚訴訟を起こすことになります。「妻が子どもを望まない」ということは、妻の有責行為とはいえないので、民法770条1項5号「婚姻を継続し難い重大な事由」と主張するためには、別居期間が長期に及んで、その間夫婦関係を修復する働きかけがされていないことが重要となります。

では、どの程度の別居期間であれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかについては、事案によって異なりますので一概には言えませんが、過去の判例では、3~4年程度の別居期間では不十分であると判断されることもあります。

ただし、婚姻関係が比較的短い夫婦の場合には、別居期間が同居期間を超えていれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められることもあります。

まとめ

以上、子どもを作りたくないという妻と離婚したい時の注意点や、段取りについてご紹介しました。
子どもをつくるか否かは、夫婦にとって重大な問題ですのでまずは当事者間で真摯に話し合いをして、協議離婚を目指します。そして、どうしても夫婦の意見が異なり妻が離婚に応じない場合には、別居、調停、訴訟提起と段階を踏んで事を進めていくようにしましょう。