妻が家出!離婚を迫られた時に離婚回避する方法

ある日突然妻が家を出て、離婚をしたいと要求された時、あなたがこれに応じたくない場合には、どうすればよいのでしょうか。

妻が「離婚したい」と家出した

「浮気をしたとかDVがあったなどがあったわけでもないのに、ある日突然妻が家を出て行った」…。このように、夫にとっては到底納得できないようなドラマのワンシーンのような出来事は、実際にも多く起きています。

もし妻が離婚したい理由が、あなたの暴力や不倫であれば、どんなに離婚したくないと思っても、後々調停や裁判で離婚する方向で進んでしまうことがあります。

しかし、もしあなたが離婚したくないのであれば、離婚を前提に戦略を練るのではなく、何とか修復できるよう、検討すべきです。

(1)話し合いの機会をつくる

妻が別居し離婚を要求すると、別居→調停→訴訟と一気に離婚話が進むことがあります。当事者間で話し合う機会がほとんどないまま、離婚したい理由も分からず妻から一方的に離婚したいと主張されるだけということも、少なくありません。

思い当たる理由もなくいきなり妻に家出をされた夫にとっては、最終的に離婚するかどうかにかかわらず、納得できないことも多いはずです。

したがって、まずは冷静になり妻と話し合いの場を持つようにしましょう。
まずは妻に連絡をとって冷静に離婚したいと思った妻の話に耳を傾けるようにしましょう。そして、妻の気持ちに配慮しながら、夫婦関係を修復する方法を探ることが重要です。
もし、「勝手に家を出るなど、妻がわがままだ。自分に謝罪すべきだ」と感じているのなら、復縁の可能性は薄いと言わざるを得ません。
もしかしたら、そのようなあなたの態度や言動に嫌気がさして離婚を決意したのかもしれません。したがって、「どうすれば復縁できるか」を妻の立場に立って考え、謙虚な態度で話し合うようにしましょう。

ただし、妻が離婚の気持ちを固めると、家を出る前から弁護士に相談していて、転居先の住所を秘密にし、離婚の話し合いや調停申し立ての時期や方法を決めていることも少なくありません。

このような場合には、すぐに弁護士に相談して調停などに向けた準備を進めてください。

(2)無理やり連れ戻すのはNG

妻が家を出て行ってしまった場合には、別居期間中に夫がどのような行動をとるかは、今後調停や裁判のなかで離婚の成否を決める重要な要素になります。

感情的になるのは分かりますが、妻が勝手に家を出たことに怒り、妻の親や妻の友人に怒りをぶつけて居所を聞き出そうとしたり、子どもを無理やり連れ戻そうとするのは、絶対NGです。このような感情的な行動をとれば、離婚を避けるどころか離婚を早める結果になるものです。

子どもを無理に連れ戻そうとすると、その後の親権争いで不利になってしまうことがありますので、避けてください。

ただし、子どもが妻からDVを受けているなどの事情がある場合には、家庭裁判所に子の引き渡し請求の調停を申し立てます。すぐに引き渡しを望むなら、仮処分としての審判前の保全処分も申し立てるようにします。

この申立てが認められると、仮ではあっても、強制的に連れ去った親は子供を引き渡さなければなりません。

引き渡しは、子どもに配慮した間接強制(自主的に引き渡す)が一般的で、即座に引き渡さないと金銭的なペナルティーが科せられます。

(3)婚姻費用は払うべき

別居期間中の夫・妻の態度は、後々調停や裁判で婚姻破綻認定の要素にもなります。婚姻破綻が認められるのは、①別居期間中に、夫が妻に婚姻費用を支払っていないこと、②別居期間中に、婚姻修復の努力をしていないこと、③別居期間中に、夫が事前に妻の合意を得ることなく子どもに会いに行ったり、妻の家を訪問したりするなど、身勝手な行動をとったことなどがあります。

したがって妻と離婚したくない場合には、別居期間中に妻の気持ちを考え、妻との関係修復の努力をするようにします。

特に、別居期間中に妻に婚姻費用(生活費)を支払い、メールや手紙をこまめに送り、節度をもって妻や子供と交流をするようにしましょう。

婚姻費用とは、別居期間中に夫婦の一方が他方に支払う生活費です。子どもがいる場合は、妻子の生活費ということになります。婚姻費用の額は、妻子の収入によります。

婚姻費用については、妻子から「婚姻費用分担の調停」の申立てをされる前に、算定表を参考にし弁護士と相談して、妥当な額の婚姻費用を妻に振り込むことが重要です。

▶ 婚姻費用/夫婦のみの表

▶ 婚姻費用/子1人表(子0~14歳)

▶ 婚姻費用/子1人表(子15歳以上)

▶ 婚姻費用/子2人表(第1子及び第2子0~14歳)

▶ 婚姻費用/子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)

▶ 婚姻費用/子2人表(第1子及び第2子15歳以上)

▶ 婚姻費用/子3人表(第1子,第2子及び第3子0~14歳)

▶ 婚姻費用/子3人表(第1子15歳以上,第2子及び第3子0~14歳)

▶ 婚姻費用/子3人表(第1子及び第2子15歳以上,第3子0~14歳)

▶ 婚姻費用/子3人表(第1子,第2子及び第3子15歳以上)

▶ 家庭裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(令和元年12月23日に公表)」

(4)別居期間が長くなると不利になる

別居期間が長いと、「結婚生活が破綻している」と認定されやすくなりますので、離婚したくない場合には、別居期間が長くなると不利になってしまいます。

どの程度の別居期間だと「結婚生活が破綻している」と認定されるかについては、一概にはいえませんが、1996年に法制審議会が決定した「民法の一部を改正する法律案要綱」によれば、「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしている時」としています。そこで、実務上は「別居期間5年」が、婚姻破綻を認める目安となってきています。

ただし、結婚生活がそれほど長くない場合には、別居期間が同居期間を超えていると、「結婚生活が破綻している」と認定されやすくなります。また、同居生活が20年、30年と長い夫婦の場合には、別居期間が5年以上であっても、破綻が認められない場合もあります。

いずれにせよ、離婚したくない場合には、できるだけ早く別居状態を解消するように妻を説得することが大切です。

なお、別居とは「婚姻の本旨に反する別居」のことですから、夫が単身赴任で別居していたり子どもの学校の必要性などから別居したりしている場合などは、通常は婚姻破綻の別居には該当しません。

(5)調停を利用することも考える

もし、妻との話し合いがスムーズに進まない場合には、調停や訴訟を利用して積極的に話し合いの場を作るようにしましょう。「家族の問題は、家族でなければ分からない」という考えもありますが、ほとんど話し合う機会も持てないまま、離婚することになっては後悔する気持ちが残ってしまいます。
たとえ離婚することになっても、十分な話し合いをすることができれば、納得することができるかもしれません。

調停というと、「離婚の話し合いの場」というイメージを持つ人もいますが、円満な夫婦関係を回復するための話合いをする場として利用することもできます。

夫婦関係調整調停は、原則として、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てますが、当事者が合意している時には、合意した家庭裁判所に申し立てることもできます。

申立書の記載方法については、以下を参考にしてください。

▶ 家庭裁判所「夫婦関係調整調停(円満)」

(6)子どもとの交流は積極的に図る

子どもがいる場合には、別居期間中も子どもと会って父親として教育したり愛情を示したりするようにしましょう。
ただ、子どもを連れて突然家出をするような妻は、別居期間中に子どもを父親に会わせたがらないこともあります。さらには、子どもを自分の所有物のように考えている妻もいます。

このような場合には、父親として家庭裁判所に面会交流の調停申し立てをするのが通常ですが、家庭裁判所の調停は時間がかかり、調停の間にさらに夫婦間の溝が深まり、親子関係にも影響が出てしまうことがあります。
そこで、面会交流の調停を申し立てる前に、できるだけ自然に子どもとの交流を図るよう、努力するようにしましょう。

クリスマスや誕生日には手紙やプレゼントを贈り、子どもの学校行事にもできれば参加したいものです。

(7)一旦離婚して復縁する手もある

自分が父親としても夫としても非がないのに、一方的に家出をし離婚したいと言われても納得できないものですが、調停で話し合いがつかず離婚訴訟までいってしまうと、互いの関係にさらに絶望的に壊れてしまうこともがあります。

そこで、泥沼化する前に、一旦妻の言い分を聞いて離婚して、関係をむやみに悪化させずに復縁のチャンスを待つのも一つの手です。

調停や裁判でもめると互いに悪口の言い合いになり、将来的に関係の修復は困難になります。離婚するのであればそれでいいかもしれませんが、将来的には妻との関係を修復したいのであれば、このような泥仕合は避け、円満離婚を目指し離婚後も良好な関係を続けるという手もあるということです。
実際、離婚したものの後日再婚したというケースは、いくつもあります。

ただし、妻の決心が固い場合には、復縁できないというリスクはあります。その場合には、離婚後に復縁を求めてしつこくすると、ストーカー規制法にひっかかることもありますので、その点は注意が必要です。妻の真意を推し量ったうえで、決意するようにしてください。

まとめ

以上、一方的に家出をした妻との関係を修復し、離婚を避けるための方法についてご紹介しました。別居期間中は婚姻費用を支払い、子どもとの面会交流に実施は、できるだけ自主的かつ自然に行うようにしましょう。

そして、妻との関係を修復したいという気持ちを冷静に主張し、妻の意見に耳を傾け、調停などを利用して積極的に話し合いの場を作るように、努力することをおすすめします。