婚前契約書(プレナップ)の効力と作成するメリット

婚前契約書(プレナップ)

婚前契約書(結婚契約書)は、プレナップとも言われるもので、これから結婚して夫と妻になるふたりの間で、権利と義務を明確にするための契約です。
結婚前に婚前契約書(プレナップ)を作成しておくと、家事の分担、生活のルールなどの身近な決まりをつくることができますし、結婚にともなう義務に違反したときに約束を守るように、主張することができます。

また、離婚したときに備えて共有財産の分割と分割割合や慰謝料の請求、子どもができた場合の親権と養育費などについて取決めておくと、離婚時のトラブルが少なくスムーズに離婚することができることも期待されています。

婚前契約書(プレナップ)とは

婚前契約書/結婚契約書(プレナップ)とは、結婚する前のに結婚後の家事分担や家計の管理、生活する上でのルール(外食、酒、たばこ、風呂など)、財産分与や離婚の条件などについての取り決めについて書面にしたものです。
契約書といっても、日本ではそんなに堅苦しいイメージではなく、「幸せな結婚生活を送るための二人の決意表明」のような意味合いももっています。
日本では、まだあまりなじみがありませんが、アメリカでは結婚をする5組に1組が交わしているほどポピュラーなものです。

婚前契約書(プレナップ)のメリット

婚前契約書のメリットは多々ありますが、もっとも大きいメリットは以下の2点といえるのではないでしょうか。

1. お互いの考えを確認できる
2. 離婚時のトラブルを回避できる

お互いの考えを確認できる

婚前契約書(プレナップ)では、結婚した後の金銭的な問題や、実家や親せき付き合い、親との同居する可能性や介護の問題など、今後の生活をするうえでのルールを話し合って取り決めておきます。結婚前にはイメージできないような結婚後のさまざまな問題をクリアにすることができ、さらにお互いの考えを確認しておくことは、結婚後に大きな影響を及ぼします。

結婚生活は、夫婦2人だけの問題だけではありません。生活をするということは、恋愛感情だけで続けていけるほど、甘いものではないのです。
結婚生活において、お互いが「相手に求めるレベル」「相手に期待していること」「親に関する考え方」を確認しておくことは、とても大切な意味を持つはずです。

離婚時のトラブルを回避できる

結婚する時には、離婚をすることなど考えることはないかもしれませんが、人生には何が起こるか分かりません。万が一離婚することになったときでも、婚前契約書で慰謝料、財産分与、年金分割などについて取り決めておくと、その内容をもとに協議することができるので、離婚手続きをスムーズに進めることができます。

婚前契約書(プレナップ)のデメリット

結婚後のさまざまなルールを話し合っているなかで、互いの意見が一致せず結婚が先延ばしになったり、場合によっては、結婚しないという選択肢をとる可能性もあるでしょう。しかし、「結婚前に、お互いの考えをはっきりさせたおかげで、不幸な結婚生活を回避できた」と考える人も多いようです。

特に、家事の分担や子育てに関する考え方、実家との関り方の習慣の違いは、長い結婚生活で大きなストレスの原因となります。
これらの考え方が決定的に違うと、結婚生活を続けていくことは難しくなってしまいます。お互いに話し合った結果、どうしても埋められない溝があると感じるなら、結婚を先延ばしにして冷却期間を設けるか、結婚自体を考えるきっかけとするのも良いかもしれません。

婚前契約書(プレナップ)の作成方法

婚前契約書は、記載内容や書式に特にルールがあるわけではありません。記載する内容や書式など自由に決めることができます。
作成したら、同じ内容のものを2通作成し、2人の自筆署名と押印を入れると完成します。

婚前契約書の内容は自由

婚前契約書には、決められた書式はありません。用紙のサイズも自由で箇条書きでも構いません。
記載する内容も自由です。
一般的には「浮気をしたときのペナルティ」「家計の管理についてのルール」「実家への帰省」「お互いの両親の介護」など結婚生活を送るうえでのルールや、離婚したときに備えて共有財産の分割と分割割合、慰謝料の請求、子どもができた場合の親権と養育費などについて取決めをしておくケースが多いようです。

婚前契約書の例文

婚前契約書では、お互いの実家、両親の介護や同居の問題など自由に記載することができます。

・収入と家計について
夫と妻はそれぞれの収入の70%を家計に入れ、その合計額で家計を運営していくことにします。家計の管理は妻が行います。残りの30%については、夫と妻がそれぞれ管理します。

夫の収入は、その100%を共有の家計として管理し、妻は家庭の仕事に専念します。妻の家事・育児は、夫を補助する対価として認識されます。

財産と負債について
夫と妻は、すべての財産を夫婦の共有財産とします。
負債については、夫と妻で話し合い、夫婦の共有財産から返済していくこととします。

相続について
妻または夫の死亡によって結婚が解消された場合には、財産はすべて生存する配偶者が相続します。なお、相続については50歳の誕生日にお互いに遺言書を作成し、以降1年ごとに内容を見直すこととします。

親の介護について
夫と妻は互いの両親に介護が必要になった場合には、夫と妻が協力しながら互いの両親を献身的に介護するものとします。

親との同居について
夫と妻はお互いの両親との同居はしないこととします。
万が一同居が必要になった場合には、改めて考慮するものとし、当然に同居すべきという前提には立たないものとします。

不貞行為について
浮気をいちどでもした場合には、有責配偶者は500万円の慰謝料を支払うものとします。
有責配偶者には親権は認めず、第三者を介入させてただちに離婚協議を開始するものとします。

離婚の慰謝料について
離婚することになった場合には、離婚の原因をつくった側は相手に対して金○○万円を支払います。この際には、離婚協議書を作成し公正証書とすることに積極的に協力します。
離婚時の財産分与額について
離婚することになった場合には、財産分与額は協議によることとしますが、基本的には共有財産を夫婦で2分の1ずつ分割するものとします。

離婚時の年金分割ついて
年金分割の割合は2分の1とすることに合意します。

公正証書にしておくとよい

しかし、このままでは取決めをただ記載しただけの私文書にすぎず、法的な効力はほとんどありません。
たとえ結婚後に、婚前契約書の取り決めを破られたとしても、「約束したではないか」と主張することもできなくなってしまいます。

そこで、婚前契約書を公証役場に持っていき、公証人に『公正証書』を作成してもらい、その中に強制執行認諾の約款を付け加えておくと、たとえば生活費や離婚後の養育費などの支払いが滞った時に強制執行が可能となる場合もあります。

弁護士などの専門家に依頼すべき?

婚前契約書は、2人で自由に作成することができますが、もし法的に効力を持たせたいなら、弁護士などの専門家に依頼しておく方が、無難です。

婚前契約書を作成する際は、権利義務が明確になるように作成しなければなりませんし、違法な契約や公序良俗に反する内容が記載されていると、無効になってしまうからです。
弁護士に相談すれば、何が財産分与の対象となるのか、離婚時のトラブルを避けるためにはどのような事項を盛り込むべきなのか分かります。

幸せな結婚生活を送り、離婚時のトラブルを避けるためにも、婚前契約書の作成は弁護士などの専門家に依頼したうえで、公正証書にしておいたほうが安心です。

まとめ

以上、婚前契約書(プレナップ)についてご紹介しました。
幸せな結婚生活のためには、お金のこと、仕事、生活スタイル、住まいの計画、家事分担、お互いの実家など、さまざまな問題を協力しながら乗り越えていくことが必要になります。そして、乗り越えていくためには、2人で話し合うことが何より大切です。
婚前契約書(プレナップ)は、結婚する2人に「話し合うことの大切さ」を教えてくれるものといえるかもしれません。