離婚した時の子どもの戸籍|必要な手続き

離婚した場合には、結婚して姓を変更した側(戸籍筆頭者でない側)が戸籍を抜けます。多くの場合、父親が戸籍筆頭者になっていますから、除籍されるのは母親です。

離婚して子どもを引き取ることになり、自分が親権者となった場合でも、子どもの籍は元の配偶者の籍のまま動くことはありません。

離婚した母親が子どもと同じ戸籍に入るためには、自分を筆頭者とする新しい戸籍をつくる必要があります。

離婚した時の子どもの戸籍と姓

離婚して一方が戸籍から抜けて、父母のどちらが親権者になっても子どもの戸籍は変わりません。そのまま元の配偶者の籍に残ります。

親子の血縁関係は、離婚によって抹消されるわけではないので、親権の有無に関係なく、子どもはどちらの籍にも入ることができるのです。

離婚直後の子どもの戸籍は以前のまま

戸籍筆頭者は、多くの場合父親ですから除籍されるのは母親です。そして、子どもは父親の籍に残ることになりますので、親権者が子どもと同じ戸籍にしたいなら、自分を筆頭とする戸籍を新たにつくる必要があります。

たとえ母親が親権者となって、そのことが離婚届に明記している場合でも、親権者と一緒に子どもの籍が自動的に移ることはありません。

子どもの戸籍や姓の変更は手続きが必要

子どもが、戸籍筆頭者の親(多くの場合、父親)と一緒に暮らすなら、戸籍も姓もそのままで問題ありませんが、除籍された親(多くの場合、母親)が子どもを引き取って自分の戸籍に移す場合には、新戸籍をつくったうえで手続きが必要になります。

子どもの戸籍や姓の変更に必要な手続きは、①姓の変更申し立てと②入籍届の2つです(※後述)。

離婚後の子どもの戸籍と姓パターン別手続き

婚姻中の戸籍筆頭者が父親だった場合、離婚後の子どもの姓と戸籍は、大きく以下の5つのパターンがあります。

(1)父親が引き取り子どもの戸籍と姓はそのままにする時
(2)子どもの戸籍と姓を旧姓に戻った母親の戸籍に移す時
(3)婚姻中の姓のまま子どもの戸籍を母親の戸籍に移す時
(4)母親が旧姓に戻った後婚姻中の籍に戻る時
(5)子どもが成人して戸籍を変更したい時

この記事では、この5つのパターン別に必要な手続きをご紹介します。

(1)父親が引き取り子どもの戸籍と姓はそのままにする時

父親が子どもを引き取る場合には、子どもの戸籍も姓もそのままなので、特に手続きは必要ありません。
ただし、子どもが15歳以上で母親の籍に入りたい、母親の姓を名乗りたいという場合には、親権者である父親が反対しても、子どもが自分で申請者となり、変更手続きを行うことができます。

(2)子どもの戸籍と姓を旧姓に戻った母親の戸籍に移す時

母親が親権者となって子どもを引き取り、母親が旧姓に戻った時には、母親を筆頭者とした新しい戸籍が必要となります。

家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立て、その審判所をもって本籍地あるいは住所地の役所で、子どもの入籍手続きを行います。

父親が親権者の場合には、父親の同意が必要です。ただし子どもが15歳以上で、母親と同じ戸籍の姓を望む場合には、自分が申請者となり変更手続きを行うことができます。

(3)婚姻中の姓のまま子どもの戸籍を母親の戸籍に移す時

離婚後の姓は、婚姻中の姓を選ぶこともできます。
離婚届は、原則として旧姓に戻ることを前提としていますから、その場合には離婚届とは別に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出する必要があります。

婚姻中の姓を選んで、自分の籍に子どもを移したい場合には、自分を筆頭者とした新しい戸籍をつくり、「子の氏の変更許可」を申し立てて、子どもの入籍手続きを行います。
「子どもの姓は変わらないのに、氏の変更許可が必要なのか」と思われる方もいると思いますが、法律上は同じ氏とはみなされません。

そこで、母親が婚姻中の姓を選択し、子どもを自分の籍に移す時にも、子の氏の変更許可と入籍届が必要となります。

(4)母親が旧姓に戻った後婚姻中の籍に戻る時

離婚した時には旧姓に戻った母親が、子どもの戸籍を自分の戸籍に移すために婚姻中の姓に変えたい、という場合もあるでしょう。
その場合には、婚姻中の姓を名乗るための届け出が必要となります。そして、この時も子の氏の変更許可と入籍届が必要となります。

(5)子どもが成人して戸籍を変更したい時

両親が離婚して母親の姓に変更したという場合でも、子どもが希望する場合は満20歳から21歳の1年以内に役所の戸籍係に届を出せば、父親の戸籍に戻ることもできます。
なお、この時には自分を筆頭者とする戸籍を新たにつくることもできます。これを「分籍」といいます。分籍しても親と絶縁するという意味ではありませんが、2度と親の戸籍には戻れなくなります。
十分検討してから、手続きを行うようにしましょう。

子どもの戸籍や姓の変更手続き

これまで、子どもの戸籍や姓の変更には、氏の変更許可と入籍届が必要になるとご紹介してきましたが、ここでは、具体的な手続きの中身をご紹介します。

子どもの氏の変更許可を申し立てる

家庭裁判所に子どもの氏の変更許可を得る手続きをとります。
子どもが満15歳未満の場合には、法定代理人である親権者が申立てます。

子どもの姓を変更する手続きは、親権者でなければできませんから、相手に親権があるときは、相手から申立ててもらう必要があります。

子の氏の変更許可の申立てに必要な書類

申し立てに必要な書類は、以下のとおりです。

①申立書
②標準的な申立添付書類
•申立人(子)の戸籍謄本(全部事項証明書)
•父・母の戸籍謄本(全部事項証明書)(父母の離婚の場合、離婚の記載のあるもの)

子の氏の変更許可の申立書の記載方法

子の氏の変更許可の申立書の記載方法は、子どもが15歳以上か15歳未満かで異なります。15歳以上の場合には、子ども本人が、15歳未満の場合には、親権者が行います。

以下の記載例を参考にしてください。

子の氏の変更許可の申立書(15歳以上)

子の氏の変更許可の申立書(15歳以上)

子の氏の変更許可の申立書(15歳未満)

子の氏の変更許可の申立書(15歳未満)

▶ 家庭裁判所「子の氏の変更許可」

入籍届を行う

変更許可の申請書類に不備がなければ、審判書が交付されます。
家庭裁判所で変更許可の審判所をもらったら、役所の戸籍係で入籍手続きを行います。

入籍届に必要な書類

入籍届に必要な書類は、以下のとおりです。

①家庭裁判所の氏の変更許可の審判書謄本
②入籍届
③子どもの戸籍謄本
④入籍する親の戸籍謄本(本籍地でない場合)※本籍地であれば不要
⑤届出人の印鑑

入籍届は、子ども1人につき1枚必要で、用紙は役所でもらうことができます。
この時、子どもの現在の本籍地でない場合には、子どもと入籍する親の戸籍謄本と、親権者である届出人の印鑑も必要になります。
この入籍届は、代理人でも行うことができますが、その場合には入籍届に届出人の印鑑が必要になります。また、代理人が身分証明書の提示を求められることもあります。

まとめ

以上、離婚した時の子どもの姓と戸籍を移す時に必要な手続きを、パターン別にご紹介しました。母親が子供を引き取る場合には、家庭裁判所の許可が必要で、変更許可の審判書謄本を持って入籍届の手続きを行う必要があります。

子の氏の変更許可や入籍届は、簡単に行うことができますので、家庭裁判所や役所で相談しながら、早めに手続きを行うことをおすすめします。