協議離婚に弁護士は必要か?弁護士費用の相場はどのくらい?

協議離婚は、夫婦間の話し合いのみで解決する離婚の方法で、日本でもっとも多いのはこの協議離婚です。

ここでは、協議離婚を弁護士に依頼するべきケースとそのメリット、弁護士費用の相場についてご紹介します。

協議離婚に弁護士は必要か

協議離婚とは、離婚時のさまざまな条件について、お互いの話し合いで自由に決めることができ、双方が合意すれば離婚をすることができます。

話し合いが終わったら、離婚届に必要事項を記入して、離婚届を市区町村役場に提出します。離婚届が受理されたら、離婚が成立します。

争いがなければ必要ない

協議離婚は、離婚理由が何であれ夫婦が合意すれば、離婚することができます。
したがって、双方とも離婚する意思があり、財産分与や慰謝料、親権などの離婚条件について話し合いがスムーズに進めば、手間や費用もかからず離婚することができます。したがって、話し合いがスムーズに進み、弁護士に依頼しないで協議離婚するケースも多々あります。

早めに相談した方が有利にはなる

夫婦のどちらかが離婚に合意しなければ、いつまでも離婚することはできません。また、離婚することには合意しても、離婚条件面が折り合わず、なかなか離婚できない場合もあります。

また、協議離婚をした後それぞれに別の生活が始まると、離婚時に決めたはずの約束が守られないケースが非常に多いのが現状です。

また「もっと慰謝料をもらえたはずなのに」「年金分割を忘れた」などのトラブルも起こりがちです。

このような離婚後のトラブルを回避するためには、協議離婚をする場合でも早めに弁護士に相談する方がよいこともあります。また、場合によっては調停に進むことも検討しましょう。

協議離婚に弁護士が介入するメリット

弁護士というと、調停や裁判になってから依頼するものとイメージする人も多いと思いますが、協議離婚においても弁護士が介入した方がよいケースも多々あります。

弁護士が介入することで早期解決が可能になりますし、相手との交渉を弁護士が行ってくれるので、精神的なストレスから解放されるというメリットもあります。

離婚後のトラブルを回避できる

離婚を急ぎ、あまりに十分な話し合いをせずに離婚してしまうことがあります。
すると、「離婚時に取り決めた慰謝料や養育費が支払われない」「取り決めた面会交流が約束通り実施されない」というトラブルが起こりやすくなってしまいます。

このような離婚後のトラブルを避けるためには「離婚したい」と思った時点で弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に依頼することで「親権はとれるのか」「養育費は、いくらもらえるのか」「財産分与となる対象は何か」「慰謝料はもらえるのか、もらえるとしたらいくかなのか」など、離婚前に知っておいた方がよい知識や離婚時の疑問について、適切なアドバイスをうけることができるからです。

離婚後に後悔しないように、自分に有利な離婚条件を取り決めることができますし、相手と交渉して有利な条件を引き出すことができるようになります。

また、離婚の交渉を有利に進めるための証拠集めや、別居する際の注意点、子どもの親権をとるための対策などについて、細かくアドバイスを受けることができます。

親権や養育費の問題
子どもがいる場合に、親権、養育費、面会交流について話し合いがまとまらないというケースがあります。
養育費については、月々の養育費だけではなく、将来の高校や大学への進学の際に必要となる出費も視野に入れる必要があります。
弁護士に相談すれば、このような将来予想される出費も視野に入れたうえで、アドバイスを受けることができます。また、取り決めた内容が離婚後も確実に実行されるように、対策をとってもらうことができます。

慰謝料請求
相手の浮気や暴力などが原因で離婚する場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。弁護士に早めに相談すれば、慰謝料の交渉を行う際に効果的な証拠が何か、どのようにその証拠を集めればいいかなどについて、アドバイスをもらうことができます。そして、それらの証拠を提示しながら、有利に交渉を進めることができます。

財産分与
弁護士に相談することで不動産、預貯金、株、家具などのなかで、何が財産分与の対象である共有財産にあたるかが分かります。また、財産分与について話し合いがまとまらない場合にも、法的根拠を示して財産分与を請求すると、相手が納得する場合があります。

早期解決が可能となる

一方が離婚に反対していたり、財産分与や慰謝料の額で話し合いがまとまらなかったりする場合でも、弁護士が介入して法的な根拠を示しながら離婚条件を提示したり、相手が妥協しやすい解決策を提示したりすることで、スムーズに協議が進むことはよくあります。
また、「弁護士が介入してきた」ということが心理的なプレッシャーとなり、早期解決したいという気持ちになるという効果もあるようです。

精神的なストレスが軽減される

弁護士が介入することで、相手と直接話したり顔を合わせたりすることを避けることができますので、精神的なストレスが軽減されます。
とくに、相手のパワハラやモラハラが原因で離婚をしたいという人は、相手と交渉するのが難しいケースがほとんどでしょう。
この場合には、離婚を考えた時点ですぐに弁護士に相談するようにしましょう。

「その場の雰囲気に流されて、不利な条件で合意をしてしまった」「ストレスに耐えられなくなり、財産分与や慰謝料の請求を諦めてしまった」というような事態も避けることができます。

調停や裁判などにスムーズに移行できる

協議離婚がまとまらず、調停・裁判に移行する場合も、協議離婚から弁護士に相談していれば、手続きなどもすべて任せることができますし、調停委員を説得するための材料などもそろえることができます。

調停や裁判になった時にはすでに別居していることが多いものですが、別居をした後では、有利に離婚するために必要な証拠を揃えるのが困難なケースも多々あります。
また、別居期間が長く調停になった時には、すでに財産分与の対象となる財産を相手が勝手に処分してしまったというトラブルも避けることができます。

協議離婚に強い弁護士の選び方

協議離婚をする際にも、財産分与や親権などについて複雑な事情を抱えている場合には、早い時期から弁護士に相談しておくと、有利に離婚をすることになります。
協議離婚がまとまらず離婚調停や離婚裁判となった場合には、専門的な法律の知識がある弁護士がいるといないとでは、結果が大きく異なります。
しかし、弁護士であれば誰でもよいわけではありません。
ここでは、協議離婚について弁護士に依頼する場合に注意するべきポイントをご紹介します。

真剣に相談を聞いてくれる

相談した時に話を途中で遮ったり、「離婚したいの?」「財産はどれくらい」など結論だけを聞こうとする弁護士は、後々コミュニケーションがとりづらくなる可能性があります。相談者が時に感情的になっても、根気よく最後まで話を聞いてくれる弁護士とは信頼関係委が築けますし、夫婦間のプライベートなことも隠さず話ができるようになります。

話が分かりやすい

法律用語や過去の判例などについて、分かりやすく解説してくれるか否かも重要なポイントです。相談者の希望に沿って見解を説明し、方針を提示しなぜその方針で進めるべきかをていねいに説明してもらえば、自分の状況を正確に知ることができますし、早めに対策をとることができるようになります。

なお、医師に内科、外科と専門分野があるように、弁護士にも専門分野があるので、離婚事件について豊富な経験や実績があるかも、あわせて確認するようにしましょう。

こまめに報告をしてくれる

相手から連絡があったり事態が変化したりした時に、すぐに連絡をくれることも、弁護士を選ぶ際には大切です。
こまめに報告をくれて、それについて説明をしてくれる弁護士でなければ、長く付き合っていくことは難しくなります。

弁護士費用が明確

弁護士費用は、大きな出費となります。したがって、最初に料金について明確な説明を受けていれば、後々トラブルを避けることができます。事前に費用の説明や見積書の提示を受けて、追加費用が発生する時にはどのようなケースかについても、細かく説明を受けておくことをおすすめします。

無理に離婚を勧めない

弁護士に離婚の相談をしたからといって、必ず離婚をしなければならないものではありません。
「離婚すべきか迷っている」という場合でも、その気持ちに寄り添って必要な知識や対策をアドバイスしてくれる弁護士は、心強い相談相手になってくれるのではないでしょうか。

実際、離婚する決心がつかない場合でも、離婚前に知っておいた方が良い法的知識は多々あります。
「離婚を進める前に、どのような事を話し合っておかなければならないのか」「慰謝料や養育費の相場観はどれくらいか」「親権が獲得するためには、どうすればいいのか」など、といったご質問についても、分かりやすく説明してくれる弁護士を選ぶようにしましょう。

弁護士費用の相場

以前は、弁護士の報酬基準が規定されていましたが、現在は個々の弁護士が事案に応じて報酬を決めています。これは、個々の事情によって解決までの難易度やかかる時間が変わってくるからです。

なお、弁護士費用がまったく捻出できない場合には、法テラスに相談しましょう。収入や資産などの条件をクリアすれば、弁護士費用を立て替えてくれる民事法律扶助制度を利用することができます。
立て替えた費用は、原則として分割返済しなければなりませんが、事情によって返済が免除される場合もあります。

▶ 法テラス「民事法律扶助業務」

相談は5,000円程度(無料のケースもあり)

初回相談は、30分5,000円~1万円程度が相場で、以降30分ごとに5,000円~2万5,000円かかるのが相場ですが、無料相談を実施している事務所もあります。最初に電話やメールで問い合わせた時に、確認するようにしましょう。

協議離婚の着手金

着手金とは、結果に関係なく弁護士に依頼した時点で支払う費用のことをいいます。
手付金とは違い、手続きを進めるために必要となる費用で、20万円~30万円程度が相場です。

協議離婚の報酬

報酬金とは、成功の程度に応じて支払う費用のことをいいます。
成功報酬という意味合いなので、完全に敗訴した場合には、支払は生じません。
報酬金は、20万円~30万円が相場です。

協議離婚の手数料・実費

手数料とは、契約書や申立書などの書類作成に必要となる費用です。
実費とは、交通費や通信費、保証金、収入印紙医大などの必要経費です。

▶ 日本弁護士連合会「市民のための 弁護士報酬ガイド」

まとめ

以上、協議離婚で弁護士を介入させるメリットや、弁護士費用の相場についてご紹介しました。離婚する際にトラブルがなく話し合いがスムーズに進めば、協議離婚に弁護士を介入させる必要はないでしょう。
ただし、離婚後の無用なトラブルを回避するためには、一度は弁護士に相談しておいた方が安心です。また、離婚条件についても有利に交渉できる可能性が高まります。
弁護士を選ぶ上では、離婚を専門にしている弁護士を選ぶようにします。弁護士にも専門分野がありますので、離婚分野の経験と実績が豊富な人を選ぶようにしましょう。
また、調停や裁判になった場合には長期にわたって、弁護士との関係が続くことになりますので、相性が合うか否かも重視するようにしましょう。

できれば、複数の弁護士に面会して実際に話してみて、相性がよく信頼できると感じた人に依頼するようにしましょう。
なお、離婚成立後に離婚協議書や公正証書の作成や立会いだけを依頼することもできます。その場合は弁護士費用をおさえることも可能となるはずです。