義母が嫌い!そんな理由で離婚できる?

義母が嫌いな人、義母との関係が悪い人は、多いものですが、それが原因で離婚まで考えるとなれば、問題です。しかも、味方になってくれると思っていた夫や妻が、自分より親側について孤立してしまうと、夫婦関係が破綻することもあります。

この記事では、義母が嫌いで離婚まで考えているB子さん(32歳)のケースから、解決策を探ります。

義母が嫌いで離婚したい

義母が嫌いで離婚をしたいと思っても、それをやみくもに主張するだけでは離婚が受け入れられないケースが多いでしょう。離婚を避けるためには、夫婦できちんと話し合い、解決策を探るのが第一です。しかし、なかには夫や妻がろくに話を聞かなかったり「親の言うとおりにしろ」と親側についてしまって、頼りにならず孤立無援の状態になってしまうことがあります。

義母が嫌いという理由だけでは弱い

協議離婚(当事者間の話し合いによる離婚)や調停離婚(調停での話し合いによる離婚)の場合には、離婚の理由は問われませんが、離婚裁判まで発展すると、「義母が嫌い」という理由だけでは、離婚が認められる可能性が低いかもしれません。
ただし、度を越した嫌がらせを受けたり暴力を受けたりすれば、それが原因で離婚が認められたり、義母に慰謝料を請求できるケースもあります。

なお、裁判所の「令和5年 司法統計年報」によれば、「家族親族と折り合いが悪い」ことを理由に調停等を申し立てたケースは、夫が1,668件、妻が2,332件となっています。

申立ての動機 申立人
総数 15,192 41,652
性格が合わない 9,103 15,835
異性関係 1,817 5,362
暴力を振るう 1,320 7,711
酒を飲みすぎる 376 2,394
性的不調和 1,592 2,642
浪費する 1,748 3,550
病気 592 672
精神的に虐待する 3,252 10,881
家庭を捨てて省みない 720 2,537
家族親族と折り合いが悪い 1,668 2,332
同居に応じない 1,338 599
生活費を渡さない 738 12,040
その他 3,242 4,974
不詳 756 3,751

>裁判所「令和5年 司法統計年報」より離婚ラボが作成

B子さん(32歳の場合)

B子さん(32歳の場合)は、知人の紹介で夫(35歳)と2年前に結婚しました。
夫は長男だったので、実家を二世帯住宅に建て替えて夫の親と同居することになりました。

義母のダメ出し・嫌がらせがひどい

結婚当初は義母との関係も良く、うまくいっていたのですが、そのうち義母はB子さんのやることなすことすべてに、イヤミをいい、嫌がらせをするようになりました。

たとえば、B子さんの干した洗濯物をすべて洗い直しします。「汚れがとれていないから」というので、最初は「親切心からか」と思いましたが、洗い直すのは夫や子どもの洋服だけ。B子さんの洋服は干しっぱなしです。

また、B子さんの料理は口に合わないと言って、何を作っても捨てるようになりました。口に合わないからと言って義母が代わりに料理をするわけでもなく、イヤミのように宅配を頼みます。「お金がかかるから、やめてくれないか」と言っても、「ろくな料理も作れないくせに」と聞く耳を持ちません。

極めつけは、B子さんが掃除をした後に、ゴミ箱の中身がまき散らされていたことです。掃除したばかりのリビングにゴミをまかれ、義母に「これで、掃除したなんてよく言えるわね」と言われた時には、怒りで身体が震えたそうです。

近所の人たちにも、「家事を何もしない」「食事がまずい」「ハズレの嫁が来た」など、B子さんの悪口を頻繁に言うようになりました。

近所の人たちの冷ややかな目に耐えられず、B子さんは買い物で外出することさえ、苦痛になりました。

孫を甘やかす

子どもが生まれてからは、さらに義母の干渉が激しくなりました。
朝から子どもを奪うように連れていき、食事前にお菓子やジュースなどを与えます。
お風呂、食事などはB子さんの役目ですが、それ以外は義母が「お菓子をあげるよ」「ジュースをあげるよ」と言って連れて行ってしまい、B子さんが子どもと過ごす時間はほとんどありません。

「子どものために良くないから」とどんなに申し入れても、「ママは怖いね、おばあちゃんと一緒にいようね」と子どもに吹き込み、子どもも「ママは怖いね」と言うようになってしまいました。

夫は頼りにならない

B子さんは、家事に関するダメ出しは我慢できても、愛するわが子の育児については黙っていられず、夫に何度も相談しました。けれども、夫は「仕事で疲れているんだ」「うまくやってくれ」とろくに話を聞かず、最近は「お前は嫁の立場なんだから、母の言うことを黙って聞けばいいんだ」と言うのです。
「もう、夫は頼りになりません。私は孤立無援です。」B子さんは、このような経緯から、離婚を考えるようになりました。

まずは話し合って離婚を回避する努力をしよう

B子さんのケースでは、家事のやり方に過剰に干渉する義母に問題はあるものの、それ以上に夫の努力不足の問題が大きいといえます。
夫は、妻との話し合いに応じないだけでなく、家庭の平和を維持する努力もしようとしていません。
まずは、手遅れになる前に夫に「自分がどれだけ辛い立場か」ということを伝え、夫婦で話し合って解決策を探すのがいちばんです。

夫と話し合って義母の干渉をやめさせる

味方になってほしい夫が親側についてしまい、孤立無援の状態が続けば、夫婦関係の破綻を招くほど、深刻な問題に発展します。
真剣に離婚を考えていることを伝え、夫から義母に干渉を控えるよう伝えてもらいましょう。あるいは、B子さんが義母と頻繁に顔を合わせなくても済むように、両親との同居を解消することも検討してもらいましょう。
その時には、一方的に義母への不満を主張するだけでなく、「自分も態度を改めるから」という姿勢も見せるのがおすすめです。
「お互いに歩み寄る」という姿勢を見せることで、相手の態度が軟化することが期待できるからです。

別居を申し出る

夫とも話し合いができず、親の干渉に耐えられない場合には、離婚も仕方ないという覚悟を決めて、別居を申し出て相手の様子を見てみましょう。
何が何でも離婚したいというのではなく、「このまま、義母の干渉にあなたが無関心でいるなら」という条件をつけて、離婚を申し入れてみましょう。

この時、必ず子どもを連れて出ること。最終的に離婚をすることになった時、子どもが義母や夫との生活している場合には、子どもの親権を取られてしまうことがあります。
「とりあえず別居して、子どもは後で迎えに行こう」と思っていても、子どもを引き渡してくれないなどのトラブルが起こることもあります。

なお、別居中の生活費について心配になると思いますが、別居中の生活費(婚姻費用といいます)は、夫に請求することができます。
夫婦には、状況にかかわらず夫婦である限り、生活費を請求することができ、夫婦が婚姻費用を分担しなければならないのは、別居中でも変わりません。

もし別居後に相手が支払ってくれない場合には、早めに請求しましょう。それでも支払ってくれない場合や金額が折り合わず話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てます。

調停では、調停委員が立ち会って、夫婦の資産や収入、子どもの年齢などの事情を考慮して、話し合いをすることになります。

どうしても離婚したい時には、調停や裁判

別居しても夫が態度を改めず、夫が話し合いに応じなかったり、家庭の平和を維持するための努力を全くしない場合には、離婚を請求することになります。

離婚する際には、子どもの親権や養育費、面会交流、財産分与や慰謝料など、当事者間で話し合わなければならない事項が多々あります。できれば相手と話し合いをする前に、弁護士に相談して、「どのように進めるべきか」「どのような証拠を集めておくべきか」についてアドバイスを受けておくとよいでしょう。

離婚調停を利用する

離婚調停とは、調停委員が夫婦双方の言い分を聞き、事情を踏まえながらさまざまな解決策を提案する形で進められます。

離婚調停の申し立ては、原則として相手方の住所を管轄する家庭裁判所で行います。申立書は、戸籍謄本などの必要書類を添付して提出します。
もし、相手と同席したくないと思う場合には、調停委員に事前にそのことを申し出れば、同席を避けることもできます。

夫婦関係調整調停(離婚調停)の申立書の記載方法については、以下の記載事例を参考にしてください。

なお、離婚調停については、下記の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

▶ 離婚調停の申立て方法|申立法は?必要書類は?

▶ 離婚調停を有利に進めるポイント|服装は?有利になる書類は?

離婚裁判になった時に備える

調停でも夫が離婚を受け入れなかったり、離婚条件について話し合いがまとまらなかったりして調停不成立になり、それでも離婚したいという気持ちがあれば、離婚裁判に進むことになります。
ただし、離婚裁判に進むためには、民法770条の5つの法定離婚原因のいずれかに該当する必要があります。

民法第770条
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

B子さんの場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」を主張することになりますが、義母との不和だけが理由の場合には、離婚が認められる可能性が低いかもしれません。

そこで、義母との不和を解決しようとしない夫の態度で、婚姻関係が破綻したことを主張することになります。この場合には、仮に裁判になった時でも離婚が認められる場合があります。

裁判になった時には、どれだけ有利な証拠があるかが、勝敗を大きく左右します。

義母のイヤミや嫌がらせを記録した日記、相手との話し合いを録音したテープや動画、夫が話し合いに応じようとしないメールの履歴などは、夫が改善のための努力をしないという、有効な証拠となります。
また、B子さんがストレスから心身に支障をきたし精神科を受診するようなことがあれば、この時医師から診断書をもらっておきましょう。これも、裁判の際に有力な証拠となります。

義母に慰謝料を請求できるか

義母にイヤミを言われた、嫌がらせをされた、結婚生活に干渉された、悪口を言われたという程度では、義母に慰謝料を請求するのは難しいです。
ただし、度を過ぎた嫌がらせを受けたり暴力を受けたりした場合には、話は別です。その事実を立証することができれば、請求が認められることがあります。

ただし、この場合にも重要なのは証拠です。
暴言や暴力などの記録は、必ず残しておきましょう。

まとめ

以上、義母が嫌いで離婚を考える時の解決策について、ご紹介しました。
義母が嫌いでも、夫婦関係が破綻していないのであれば、まずは夫婦間で話し合いをするのが大切です。もし相手が話し合いに応じなくても、別居をすると相手の態度が変わることもあります。
別居をする時には、婚姻費用を請求すること、そして子どもを連れて別居をすることが大切です。別居をして様子を見ても、状況が変わらないようであれば、調停や裁判を考えることになります。