養育費の増額請求|養育費算定表16年ぶり見直しで増額傾向

子どもを育てていくうえでは、予想外のことが起こるのは当然です。
進学によって教育費が増加することがありますし、病気、事故などによって医療費が増加することもあります。

このようにやむを得ない事情である時には、養育費の増加を請求することができます。

この記事では、一度取り決めた養育費を増額できるケースと、養育費増額請求の方法についてご紹介します。

養育費の増額を請求できる時

離婚後、父母はその経済力に応じて養育費を分担します。
一度取り決めた養育費は、ある程度先の見通しをしたうえで決められるものですから、当然に変更することはできません。

しかし、子どもが成人する前の間には、さまざまなことが起こります。

たとえば、高校や大学進学などでとくに費用がかかる時期がありますし、病気などで医療費がかかることもあります。
また、親権者側の事情が変わることもあるでしょう。

このような事情がある時には、離婚する際に(もしくは離婚後に)協議や調停・審判などで養育費の額を取り決めた場合でも、事情が変更したことを理由として養育費の増額を求めることができます。

養育費のように、年々子どもの成長につれて費用が変化するものを、絶対に変更できないとすると、養育する親にとって不公平になる恐れがあるからです。

なお、養育費の増額が認められるケースとは、主に以下のような場合です。

・ 子どもの進学や授業料の値上げによって教育費が増加した
・ 子どもの病気やけがで多額の医療費がかかった
・ 受け取ってる側の病気やけがで収入が減った
・ 受け取ってる側がリストラや会社の倒産で収入が減った
・ 支払う親の収入が増加した

(1)子どもの成長で費用が変化した時

子どもの進学や習い事などで教育費が増加して、取り決めた養育費の額では足りないといった事情がある場合には、養育費の増額を請求することができます。

ただし、子どもが進学し学費がかかるようになったことを理由に増額を求めた事案について、「そもそも子どもの学費が多少増加する程度のことは、養育費決定に際して十分に考慮されている」として、養育費増額請求が認められなかった事例もあります。

したがって、実際に教育費が増加し、当初取り決めた養育費では足りないということをきちんと主張できるだけの資料をきちんと用意しておくようにしましょう。

(2)子どもの医療費の増加

子どもの病気やけがで、多額の医療費がかかったという場合には、養育費を支払う側の親にも当然その費用を負担する義務がありますので、それを理由として養育費の増額を請求することができます。
医療費の領収書などは、きちんと保管しておきましょう。

(3)監護者の失業、病気

養育している親(監護者)が病気やケガで収入が低下したり、リストラや会社の倒産などで収入が低下した場合には、収入が多い親にそれを理由として養育費の増額を請求できます。

(4)そもそも養育費が低すぎた

養育費を取り決めた場合でも、そもそもその取り決めた養育費の額が低すぎるというケースもあるでしょう。
また、取り決めた時には養育費を支払う側の親の収入が低く、やむを得ずその金額で決めたものの、親も年齢と共に収入がアップすることもあります。

このような場合には、協議や調停・審判などで養育費の額を取り決めた場合でも、事情が変更したことを理由として養育費の増額を求めることができます。

(4)一時金を受け取った場合も請求できる

離婚時に、養育費を一時金の形で受け取ることがあります。
このような場合でも、その後前述したような増額理由があり養育費が必要になった時には、改めて養育費を請求することができます。

養育費が16年ぶり見直し

養育費の額に法的な規定はありませんが、調停などで養育費の額について話し合われる際には、東京・大阪の裁判官が共同研究の結果、作成した養育費算定表が、参考資料として活用されています。
ただし、この養育費算定表については、以前から「低額すぎる」との批判がありました。そこで、16年ぶりに見直しが行われ、2019年12月23日に、新しい養育費算定表が発表されました。

最高裁の司法研修所は、離婚後に支払う子どもの養育費を裁判などで決める際に使われる算定表の改定版をまとめ、二十三日付の研究報告書で公表した。見直しは十六年ぶり。収入から必要経費を差し引く算出方法に大きな変更はないが、。現行表には、改定版で改善が期待される。

(1)月1~2万円増額傾向

新しい算定表では、収入から必要経費を差し引く算出方法については、大きな変化はありませんが、社会情勢や物価水準の変化、税制を反映して、支払う側などの年収によっては、月1万~2万円程度増えるなど、全体的に増額傾向となりました。

(2)【最新版】ケース別養育費算定表

最新版の養育費算定表は、家庭裁判所のホームページで確認することができます。

▶ 養育費・子1人表(子0~14歳)

▶ 養育費・子1人表(子15歳以上)

▶ 養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)

▶ 養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)

▶ 養育費・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)

▶ 養育費・子3人表(第1子,第2子及び第3子0~14歳)

▶ 養育費・子3人表(第1子15歳以上,第2子及び第3子0~14歳)

▶ 養育費・子3人表(第1子及び第2子15歳以上,第3子0~14歳)

▶ 養育費・子3人表(第1子,第2子及び第3子15歳以上)

▶ 家庭裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(令和元年12月23日に公表)」

(3)養育費算定例

たとえば、夫(会社員)年収450万円で、妻(会社員)年収200万円で、子どもが1人の場合、従来の養育費は月2万円から4万円でしたが、改定後の養育費算定表では、月4万円~6万円に増額されています。

また、夫(会社員)年収550万円で、妻(自営業)年収250万円で、子どもが2人の場合、従来の養育費は月4万円から6万円でしたが、改定後の養育費算定表では、月6万円~8万円に増額されています。

養育費算定表の改定

養育費の増額を請求する方法

増額の請求は、内容証明郵便を送付したり相手に直接する方法が考えられますが、相手がこれに応じなかったり、そもそも話し合うことが困難である場合には、養育費の額の変更を求める調停を申立てることができます。

(1)相手に増額を請求する

養育費の増額を求める方法としては、まず支払いを受ける側が支払う側に、増額を請求することになります。
メールや電話などで相談しても話し合いに応じない場合には、内容証明郵便などで増額の請求を行ってみましょう。
そして、相手が増額に応じて話し合いがまとまったら、後々のトラブルを避けるためにも、その取り決めた内容を公正証書どにまとめておきましょう。

なお、養育費が増額される場合、「いつから増額されるか」が問題になります。
この点について法律の規定はなく、一般的には「相手に増額を申し入れた時」から増額されると考えられます。
増額請求に相手が応じないで、その後調停や審判で増額が決定した場合には、増額を申し入れた時期にさかのぼって増額が認められる可能性があることになります。

ですから、養育費の増額を求めたいときには、できるだけ早めに相手に連絡して増額したい旨の説明をすることをおすすめします。

(2)養育費増額請求調停を申し立てる

養育費の増額したい理由を説明しても相手の合意が得られない時には、家庭裁判所に「養育費の額の変更を求める調停」を申立てましょう。

調停や審判では、養育費を増額すべき事情の変更があるかについて、個別具体的な事情を考慮して判断されることになります。

【養育費請求調停申立ての必要な書類】
養育費請求調停を申立てる際には、下記の書類を提出する必要があります。
・申立書及びその写し1通
・未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・申立人の収入に関する資料
(源泉徴収票写し、給与明細写し、確定申告書写し、非課税証明書写し等)

【養育費請求調停申立ての必要な費用】
養育費請求調停を申立てる際には、下記の費用が必要です。

・収入印紙1,200円分(子ども1人につき)
・連絡用の郵便切手 800円程度(家庭裁判所によって異なります)

養育費請求調停の申立書の記載方法については、以下の記載事例を参考にしてください。

養育費請求調停の申立書の記載方法

(3)養育費を増額したい根拠を示す

養育費の増額を請求する時には、養育費を増額したい理由とその根拠をきちんと示すことが必要です。

審判となった際に養育費の増額を認めてもらうには「事情の変更」が必要ですが、この事情の変更が「ある程度重要なものである事情」である必要があり、かつ「変更前の養育費決定の際には前提とされていなかった事情」である必要があるからです。

子どもの教育費の資料や医療費の領収書などはきちんと保管して、相手と話し合いをする場合や調停の際に提示するようにしましょう。

なお、前述したとおり養育費算定表が16年ぶりに見直されたことで、それを根拠に「低額すぎる」と主張できる可能性もあります。

まとめ

以上、養育費の増額を請求できるケースと、増額を請求する方法についてご紹介しました。養育費を増額してほしい時には、増額を申し入れた時点から支払われることになるので、早めに請求をするようにしましょう。
そして、話し合いがまとまらない時には、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てましょう。

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