離婚の方法は、大きく協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つに分けることができます。
このうち「審判離婚」とは、裁判離婚と異なり審判後2週間以内に、夫婦のどちらかが異議を申し立てれば無効にできるため、実際にはあまり利用されていません。
しかし、2週間以内に異議の申し立てがなければ離婚は成立しますので、10日以内に離婚届を提出すれば離婚の手続きは終了します。
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審判離婚とは
審判離婚とは、調停が不成立の時に、家庭裁判所が調停に代わる審判を下して離婚を言い渡すことをいいます。
審判が下されるのは、これまで調停を重ねてきて、離婚を成立させた方が当事者のためであるとみられるにもかかわらず、一方的な意見や態度に固執するなどして、合意が成立する見込みがなく、かつ家庭裁判所が相当と認める時に限られます。
家庭裁判所は、調停委員の意見を聞き、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、双方にとって公平な結果となるよう、離婚その他(財産分与、親権者の指定、慰謝料など)を職権で行うことができます。
(1)調停に代わって下される審判
離婚調停で合意がなされず調停が不成立となった場合には、一般的には離婚訴訟(裁判)を提起することになります。
しかし、調停でほとんどの合意ができているのに、手続き上の支障があったり一方が感情的になったりしている場合などは、調停が不成立でも家庭裁判所が自らの判断で、審判を下すことがあります。これが審判離婚です。
(2)審判離婚の具体例
離婚調停の申立てのあった問題のほとんどが解決しているのに、慰謝料の金額だけ決まらなかったり、夫婦の感情的は反発が強かったりといった理由で調停が成立しないといったごくまれなケースに限られます。
審判離婚が下される具体例
①財産分与や慰謝料の金額、親権者の指定など一部に意見の違いがある場合
②夫婦の感情的な反発が強い場合
③早い結論が望ましい場合
④病気などの理由で、一方が調停に出席できない場合
⑤一方がわざと調停を引き延ばしている場合(詰めの段階で調停に出頭しないなど)
⑥自分勝手な態度を変えない
⑦一方が外国籍で、自国に戻る事情がある場合
⑧双方が審判を望んでいる場合
(3)審判離婚のメリット
審判離婚とは、調停不成立ではあるものの、実際にはほとんど合意ができている場合に下されます。審判が確定すれば、離婚裁判の確定判決と同じ効力を有します。
つまり、調停で話し合いを重ねた結果、離婚というゴールを目前にしながら、調停不成立や取り下げとするには、あまりに不適当とみられるときの手段です。
家庭裁判所は当事者が「離婚や条件については、ほぼ納得している」「後は細かい条件の合意だけ」「一方が感情的になっている」というような、細かい意向を確認したうえで審判離婚を出しますので、実は大変すぐれた解決方法の1つともいえます。
(4)審判離婚のデメリット
審判離婚は、当事者双方の公平を図って下される審判であり、大変すぐれた解決方法であるものの、実際にはほとんど活用されておらず、審判離婚による離婚は離婚総数の1%にも満たない事例しかありません。
審判離婚が少ない理由は、審判に対して2週間以内であれば、当事者や利害関係人から簡単に異議の申し立てができて、異議申し立てがあると即座に審判の効力がなくなるというデメリットがあるからです。
審判離婚の効力
調停で離婚に合意しなくても、当事者双方がほぼ離婚に合意しているとみられる場合には、家庭裁判所が離婚の審判を下すことがあります。この審判を夫婦が受け入れれば、審判離婚となります。しかし、どちらか一方が異議申し立てをすると、審判は無効になります。
(1)審判離婚の主な流れ
審判離婚の主な流れは、以下のとおりです。
上の図で見るように、審判離婚は、調停で事実を調査し、証拠を調べ、最終的な調停解決案による「離婚が相当」と認められる時に、家庭裁判所が調停員会の意見を聞いたうえで、下されます。もっと活用されるべき離婚方法ですが、2週間以内に異議申し立てがあれば無効となるので、実際にはあまり活用されていません。
(2)2週間以内に異議申し立てがあれば無効
「申立人と相手方を離婚する」という審判が出た時には、2週間以内に異議申し立てがあれば、異議申し立てにどのような理由があるかないかにかかわらず、それだけで審判の効力は失われます。
(3)審判確定後は、10日以内に離婚届を提出
2週間以内に異議申し立てがない時には、その審判は確定し、離婚が成立します。
ただし、離婚は成立しても、戸籍を別々に分ける手続きとして、離婚届の提出が必要です。審判離婚が確定したら、10日以内に原則として申立人が離婚届を提出する必要があります。この期間を過ぎると、罰金が科せられることがありますので、注意してください。
離婚届は、協議離婚の時と同じ用紙に記入しますが、協議離婚と違って相手の署名押印も証人も必要ありません。
ただ、添付書類として、審判確定証明書と審判書謄本が必要です。確定証明書も謄本も、審判のあと書記官に交付の申請をしておきましょう。
確定証明申請書の記載方法については、以下の記載事例を参考にしてください。
審判離婚と他の離婚方法との違い
これまでご紹介したように、審判離婚は家庭裁判所が下す審判によって成立する離婚の方法です。
離婚の方法は、大きく協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つがありますので、審判離婚と他の離婚方法の違いについて、併せてここで理解しておきましょう。
(1)審判離婚と協議離婚の違い
協議離婚とは、夫婦の話し合いのみ(弁護士が介入することもあります)で、離婚および離婚に伴うお金や子どもの問題を解決する方法です。
協議離婚の場合は、離婚についての話し合いが終わり、離婚届に必要事項を記入して、離婚届を市区町村役場に提出して受理されれば、離婚が成立します。
協議離婚の場合には、離婚届に、必ず夫婦双方の署名押印、成人の証人2名の署名押印が必要です。
一方、審判離婚の場合(調停離婚、裁判離婚も)には、離婚届を提出する本人の署名押印だけでよく、証人の署名押印も不要です(ただし、審判確定証明書と審判書謄本が必要です)。
(2)審判離婚と調停離婚の違い
調停離婚とは、当事者で話し合いがまとまらない場合などに、裁判所で第三者を入れて、夫婦双方の合意を目指す方法です。調停の結果、離婚に合意すれば離婚が成立します。
一方、審判離婚は、当事者がほぼ離婚に合意しているとみられる場合に、調停に代わって、家庭裁判所が下す審判による離婚です。
この審判を夫婦が受け入れれば、審判離婚となります。
調停離婚も審判離婚も、離婚届を提出する本人の署名押印だけでよく、証人の署名押印も不要です。また、原則として、離婚成立から10日以内に離婚届を提出しなければなりません。
(3)審判離婚と裁判離婚の違い
裁判離婚とは、調停が不成立に終わり、それでもまだ離婚を強く望む場合に、家庭裁判所に離婚裁判の訴訟を起こす方法です。
離婚裁判では、争点が整理されたところで裁判官から和解がすすめられます。この和解勧告に応じれば、「和解離婚」となります。
和解せずに裁判が結審まで持ち込まれると、判決が下ります。判決に対して2週間以内に控訴がされなければ判決が確定し、原告勝訴の場合にはその時点で裁判離婚が成立します。
審判離婚も、確定すれば、確定判決と同等の効力を有します。審判によって裁判所は、親権、養育費、財産分与、慰謝料などについて命じることができ、従わなければ強制執行が可能です。
審判離婚も裁判離婚も、離婚成立から10日以内に市区町村役場に離婚届を提出しなければなりません。離婚届を提出する本人の署名押印だけでよく、証人の署名押印も不要です。
審判離婚の場合には、添付書類として審判確定証明書と審判書謄本が必要ですが、裁判離婚の場合には、判決確定証明書と判決書の謄本が必要です。
判決確定証明書は、審判離婚の時と同じく書記官に交付の申請をしておきましょう。
まとめ
以上、審判離婚についてご紹介しました。
審判離婚は、調停でどうしても合意できそうにないものの、当事者が単に維持を張っているだけで条件などはそれほど違いがないという場合に、調停に代わり下される審判によって離婚する方法です。つまり、家庭裁判所が独自の判断で、離婚を宣言する方法です。
審判離婚は、2週間以内に当事者や利害関係人が異議申し立てをすれば、即時に審判の効力がなくなってしまうというデメリットがあるため、実際にはほとんど活用されていません。
しかし審判離婚は、これまで調停を重ねてきた結果や調停委員の意見を聞き、家庭裁判所が熟慮を重ねて下すものなので、もっと活用されるべき離婚方法ということができます。