面会交流を子供が嫌がる場合は、どうすればいい?

面会交流とは、子どもと離れて暮らす親が、子どもと面会したり、電話や手紙で交流したりすることをいいます。
子供を引き取った親は、理由なく子どもとの面会を拒否することはできませんが、子どもが嫌がっている場合には、面会の拒否や制限をすることができます。

そもそも面会交流とは

面会交流とは、子どもと離れて暮らす親が、子どもと会ったりメールや電話で連絡をとったりすることをいいます。

面会交流は、「離れた親が、子どもに面会する権利」とみる立場もありますが、両親が別れた後も「子どもが健やかに成長するための子どもの権利」という側面が強いものです。
したがって、まずは子どもの福祉と利益を最優先に考えるべきとされています。

原則として拒否できない

別れた親との交流は、子どもの成長にとって有益な場合が多く、一緒に暮らす親は、原則として面会交流を拒むことはできません。
子どもを引き取った親は、別れた相手と子どもを会わせたくないというケースが多いものです。しかし、もし子どもが会いたいという気持ちを持っていれば、その気持ちを最優先すべきであり、単に会わせたくないなどの理由で拒否することは認められません。

理由があれば拒否できる

相手に会うことが、子どもの福祉にとって害があるとみられる場合には、面会交流を拒否したり制限したりすることができます。
具体的には、「子どもに暴力をふるう」「子どもを連れ去る恐れがある」「子どもが会いたがらない」「面会交流をすると、子どもが不安定な精神状態になる」といった事情がある場合には、面会交流を制限したり拒否したりすることができます。

しかし、両親が離婚した子どもの気持ちは複雑で、同居している親の気持ちを慮って、会いたくないという子どももいます。したがって、子どもが会いたくないと言っている場合でも、慎重に子どもの気持ちを確かめることが大切です。

以前決めた面会交流の内容を変更することもできる

離婚時に面会交流について取り決めた場合でも、絶対に守らなければならないというものではありません。前述したような正当な理由があれば、面会交流を制限・拒否することができます。
面会交流を制限・拒否したい理由を説明しても相手が納得しない場合には、以前に取り決めた面会交流の内容を変更するために、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。

面会交流を子供が嫌がる場合

面会交流について取り決めていても、子どもが面会交流を嫌がったり、面会交流後に精神的に不安定な状態になったりする場合には、子どもの気持ちを最優先に考え、そのうえで面会交流の取り決めを変更することができます。

子供の本心をまず確かめる

子どもが面会交流を嫌がる場合には、まずは子どもの本心を慎重に考えてから結論を出すことが大切です。

とは言っても、子どもが口では「会いたくない」とは言っていても、それは本心ではない場合もあります。子どもが一緒に暮らす親の「会わせたくない」という気持ちを敏感に感じ取って、自分は会いたいと思っていても、一緒に暮らす親の気持ちに配慮している可能性もあるからです。また、相手を憎む親の気持ちが子どもに伝わり、その影響を受けて子どもまで嫌悪感を抱いてしまうことも考えられます。

もちろん、会いたくない理由が親の暴力などの場合は別ですが、子どもが本心では「会いたい」と思っているかもしれないという場合には、その子どもの気持ちに寄り添い、父母が連携して子どもが会う気になるよう努力することも大切です。
一緒に暮らす親は、「面会交流の日は子どもを気持ちよく送り出す」「面会交流の様子を詳しく聞いたり干渉し過ぎたりしない」などの工夫もしてみましょう。

また、離れて暮らす親も、「子どもは会いたがっているはずなのに、一緒に暮らす親が会わせたがらない!」と非難することはよくありません。このような場合、離れて暮らす親が、非難すればするほど、一緒に暮らす親の気持ちはかたくなになり、その親の気持ちを反映して、子どももかたくなになってしまう可能性があるからです。

したがって、一方的に非難するのではなく、面会交流調停などを利用してちょうていいいんや家裁調査官を通じて、子どもの真意を探るとともに、一緒に暮らす親の気持ちを和らげる努力をすることも必要でしょう。

面会を拒否することは可能

子どもの本心を慎重に確認したうえで、それでも子どもが心底嫌がっている場合や、面会交流後子どもが情緒不安定になったり成績が下がったりしたなどの悪影響があるとみられる場合には、面会交流を制限もしくは拒否することができます。
また、そもそも離れて暮らす親がそもそも親権者・監護者として失格という場合には、面会交流を制限されてもやむを得ないということになります。

もし、子どもの福祉や利益を考えたうえで、面会交流を制限もしくは拒否したい場合には、まずは相手に申し入れ、それでも聞き入れてもらえない場合には、調停を申し立てます。

面会交流の拒否が認められた事例

ここで、面会交流の拒否が認められた事例をご紹介します。

①夫婦関係破綻の原因が、夫の深酒とその酒癖の悪さであった事例(大阪高裁・昭和55年9月10日)

夫は、夫婦不和の原因となった飲酒も慎んでいるとして面会交流を求めましたが、子どもが新生活での生活に慣れ、情緒的に安定していること、子どもの父親の乱暴に対する畏怖感が消えず、父親を嫌悪していることなどから、子どもに対し情緒面の安定に悪影響を及ぼし、父母の対立を悪化させるとして、面会交流を認めませんでした。

②離婚時面会交流の取り決め(年2回)がされたものの、その後面会交流にストップをかけた事例(浦和家裁 昭和56年9月16日)

子どもが面会交流中終始おどおどして落ち着かず、面会交流に強い嫌悪感を示したこと。面会後、情緒が安定せず学習意欲が減退し、父親との面会交流に強い拒否反応を示したことから、母親は父と会わせないようにしましたが、父から面会させよとの申し立てがされました。

しかし、裁判所では、面会交流が未成年者の情操を損ねると認められる場合には、面会交流を延期または停止させることが未成年者の福祉に合致するとして、面会交流をストップしました。

③子が3歳で母と離れて父と面会することで、泣いたりぐずったりしたため、面会交流を制限した事例(岐阜家裁 平成8年3月18日)

離婚後、面会交流が2回約束通り行われましたが、子どもが泣いたりくずったりするなど感情が不安定になった様子が見られ、母は3回目から面会交流を断りました。すると、父は約束に反するとして、面会交流調停を申し立てました。

家庭裁判所は、子どもがまだ3歳であり母親から離れることに不安を覚える年齢であることなどから、面会交流について制限し、母親がビデオや写真を父にこまめに送って近況を知らせる程度に留めるべきとして、面会交流を制限しました。
この事例では、父親が母子のアパートを夜中に訪れ、怒鳴ってドアを叩いたり、待ち伏せして怒鳴ったりしたなどの行為があったことも、マイナス評価されたとみられます。

面会交流の拒否が認められなかった事例

過去には、面会交流の拒否が認められなかった事例も多々ありますが、その事例では、子どもが面会交流を望んでいるという事情が重視されています。
面会交流は、親にとっても子どもにとっても有益なものと考えられますが、現実には、かえって逆効果の事態になりかねないケースも多いものです。
家庭裁判所でも、親の「会いたい」という気持ちより、子どもの福祉や利益が重視します。
したがって、子どもが面会交流を嫌がっている場合には、その本心を確かめ相手にその旨を申し入れ、それでも相手が聞き入れない時には、家庭裁判所の調停を申し立てることをおすすめします。

面会交流を拒否したい時には

これまでご紹介したように、子どもが嫌がっていることを理由に面会交流を拒否したい時には、まず相手にそのことを申し入れて話し合いをしましょう。
それでも話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に「面会交流調停」を申し立てます。

まずは相手と話し合う

子どもが、相手との面会交流を嫌がっている場合には、その旨を相手に伝えて話し合います。難しいのは、面会交流がプラスにもマイナスにも考えられるときです。
たとえば、面会交流の時間は楽しく過ごせても、面会交流後に子供が沈み込んだり、成績が下がったりするようなケースです。

このような場合には、いくら状況を説明して面会交流の拒否を申し入れても、相手は「面会交流している時には、楽しく過ごしている」といって聞き入れないケースも多いでしょう。
しかし、子どもは一緒に暮らす親の気持ちに敏感であるとともに、離れて暮らす親にも気を使って、楽しく過ごしているように見せている可能性もあります。

特に、離婚直後は生活そのものが大きく変わり、子どもにとって面会交流が負担になっている可能性もあります。

したがって、相手と話し合う場合には、一方的に「子どもが嫌がっているから面会交流を制限する」と主張するのではなく、子どもの様子を報告したうえで「環境が落ち着き、子どもの情緒が落ち着くまで、一時的に会う回数を減らしたい」など柔軟な申し入れをして、様子を見たいと伝えてはいかがでしょうか。

話し合いがまとまらなければ調停を申し立てる

相手に、面会交流を控えたいと申し入れても相手が応じない場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てます。
面会交流調停は、以前取り決めた面会交流の内容を変更したい時にも、申し立てることができます。

調停では、調停委員や調査官が子どもの生活状況や精神状態、意思などを調査して、子どもにとって最もよい取り決めができるよう、話し合います。
面会交流調停でも話し合いがまとまらず、調停が不調に終わった場合には、審判に移行します。

面会交流調停の申し立て方法

面会交流調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に、「面接拒否の調停」を申し立てます。

相手方の住所地の管轄は、以下から確認することができます。

▶ 家庭裁判所「裁判所の管轄区域」

申し立てには、申立書及びその写し1通、未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)などが必要です。また、申立てに必要な費用として、以下が必要となります。

•収入印紙1,200円分(子ども1人につき)
•連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください)

面会交流調停の申立書の記載方法については、以下を参考にしてください。

面会交流の調停の申立書記載例

▶ 家庭裁判所「面会交流調停」

なお、面会交流調停の申し立て方法については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。あわせて、ご覧ください。

▶ 面会交流の調停とは|申し立て方法・主な流れ・有利に進める方法(過去事例付き)

まとめ

以上、面会交流を子供が嫌がる場合の対処方法について、ご紹介しました。
面会交流は、子どもの福祉という観点から保護されるべきものですが、離れて暮らす親の権利をどこまで認めるか、子どもが嫌がっている場合はどうするべきかなど、単純には解決できない複雑な問題です。
離婚して相手との縁は切れても、どちらも子どもの親ですから、連携していく必要はあります。しかし、子どもに害があれば、「様子を見て、面会交流の回数を減らす」もしくは「面会交流を拒否する」などもやむを得ないこともあるでしょう。

面会交流は、あくまでも子どものペースに合わせ、親子の時間を過ごすことができるようになることが大切です。もし自身で判断がつきかねる場合には、弁護士に相談したり面会交流をサポートする機関に相談したりして、ひとりで悩みを抱え込まないようにすることも大切です。

▶ FPIC(エフピック)の面会交流援助手続き

▶ 一般社団法人「ビジット」