面会交流の調停とは|申し立て方法・主な流れ・有利に進める方法(過去事例付き)

面会交流については、離婚時に取り決めていなかったり、取り決めが守られなかったりするトラブルが多々あります。

当事者間の話し合いでの解決がむずかしい場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申立てます。
面会交流調停では、面会交流をすることで子どもや現在世話をしている親への影響、子どもの意思などについて確認します。

この記事では、面会交流の調停を申し立てたいと考えている方に、面会交流権の正しい意味や面会交流の調停の申し立て方法、主な流れ、面会交流の調停で重視されることなどについてご紹介します。

面会交流権とは

面会交流とは、別居や離婚をして離れて暮らす親と子が会うことをいいます。
面会交流を「親が子どもに会う権利」と考えている人も多いようですが、面会交流は、子どもが健やかに成長する権利としての側面が強く、親の会いたいという気持ちよりも、子どもの利益と福祉が第一に考えられます。

(1)理由なく拒否することはできない

子どもを引き取った側は、別れた相手に子どもを会わせたくないと思っていても、正当な理由もなく、子どもとの面会交流を拒否することはできません。裁判所も子どもに悪影響を及ぼすような特別な理由がない限りは、子どもの福祉と利益を最優先に考え、面会交流を推奨する立場をとっています。

(2)面会交流が認められないこともある

面会交流は、相手に会うことが子どもの福祉にとって害がある場合には、面会を拒否したり制限をしたりすることができます。
たとえば、相手が子どもに暴力をふるったり、金銭を要求したり、養育費を支払う義務・能力があるのにその義務を果たさなかったり、連れ去りの恐れがあったりする場合です。
また、子どもが会いたがらない場合も、その子どもの気持ちが尊重されます。

▶ 面会交流を子供が嫌がる場合は、どうすればいい?

面会交流を求めたい時

面会交流については、離婚時に細かく取り決めをしておくのがベストですが、取り決めをしていないと、一方は子どもに会わせないようにし、もう一方は勝手に子どもと会おうとするなどのトラブルが起こることがあります。

このようなトラブルは、子どもの心を深く傷つける可能性があります。したがって、子どものためにもまず相手と話し合いを行って、面会交流を求めます。
相手と冷静な話し合いができない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。

(1)まずは協議を行う

まずは、子どもと面会をしたいと要望を伝えます。
ただ、離婚や別居している相手と冷静に話し合うのは、なかなか難しいものです。
電話しても電話に出なかったりして、話し合いに応じないケースも多いようです。けれども、だからと言って子どもに会わせてもらえないことを恨んで相手を脅したりするのは、NGです。あとで調停の場で協議をする時、かえって立場を不利にしてしまいます。

また、勝手に子どもに会ったり家の近くで待ち伏せしたりすると、相手に面会交流の制限を申し立てられることもあるので、要注意です。

(2)協議がまとまらなければ調停または審判

子どもと会いたいという意思と理由を説明しても、相手が納得せず面会を拒否する時には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てます。
調停での合意が成立すると、その合意の内容に沿って家庭裁判所の調停調書が作成されると、裁判所に履行勧告や履行命令、間接強制などを申立てることができます。

(3)取り決めが守られない時にも調停を申し立てる

面会交流調停で取り決めたこと(面会の頻度や時間、条件など)が守られない場合にも、家庭裁判所の調停や審判を利用することができます。決まったことを守らない場合には、履行勧告をしてくれますし、新たな問題がある場合には再調停を申し立てることもできます。

面会交流の調停の主な流れ

面会交流調停では、裁判所の調停委員が間に入り協議が進められます。
この際、現在の子どもの状態や申し立てた親と子どもの関係を調査するために、家庭裁判所で面会交流の場が設けられて、観察されることもあります。

ただ面会交流を拒んでいる親が強く拒否をする場合には、強制的に面会をさせるようなことまではしません。
そのほか調査官が家を訪問し、子どもの現在の状況や子育ての現状を調査することもあります。

面会交流は、子どもにとって親と面会交流を行うことがその子の健全な成長を助けるものであり、子福祉と利益が最優先されます。

そのため、子どもの年齢や性別、性格、就学の有無、生活のリズムや環境など、子どもを取り巻く状況を踏まえて、子どもに負担がかからないように十分配慮して、子どもの意思も尊重した取決めができるように話合いを進められ、決定されます。

(1)面会交流の調停の申し立て(記載事例付き)

面会交流調停の申立ては、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申立てる必要があります。

▶ 家庭裁判所「面会交流調停」

相手方の住所地の管轄は、以下から確認することができます。

▶ 家庭裁判所「裁判所の管轄区域」

その際には、下記の書類を提出する必要があります。

・ 申立書及びその写し1通
・ 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書

面会交流の調停の申立書の記載方法については、以下の記載事例を参考にしてください。記載例のサンプルを参考にすれば、問題なく申立書を作成することができます。

面会交流の調停の申立書記載例

(2)面会交流の調停で必要な費用

面会交流調停を申立てる際には、下記の費用が必要です。

・ 収入印紙1,200円分(子ども1人につき)
 →子どもの数が増えることに、必要になります。

・ 連絡用の郵便切手 800円程度
 →家庭裁判所によって異なりますので、問い合わせをしてください。

(3)面会交流の調停 第1回目

家庭裁判所で、面会交流の調停の申し立てが受理されると、申立人には、1回目の調停期日の連絡が届き、相手には原則として申立書の写しと調停期日の連絡が送付され、あわせてそれに対応する答弁書の提出が求められます。

この時、申立書以外の書類はもう一方に送付はされませんが、相手から申請があると裁判官の判断で閲覧やコピーが許可されることがあります。

第1回目の調停は、申請から1カ月~1カ月半後に行われます。
調停では、調停委員が間に入って交互または同時に話を聞きます。聞き取りは、どちらも30分~45分程度で、その後は必要に応じて、再度交互または同時に呼ばれ、相違点や不明点について詳しく聞き取りが行われます。

この時「相手と顔を合わせたくない」という事情がある場合には、別室で話を聞くなどの配慮をしてくれます。

(4)面会交流の調停 2回目以降

面会交流の調停 2回目以降も、1回目と同様に家庭裁判所の調停委員が双方の話を聞き、解決策を探ります。
面会交流の調停の多くは、1カ月~1カ月半に1回の割合で開かれますので、その時に自分の思いを要領よく伝えられるよう整理しておくことが必要です。

調停を重ねていくうちに、双方が歩み寄り問題点が調整されて合意すれば、調停調書が作成されます。
面会交流の調停は、ケースバイケースですが、4カ月~1年ほどかかるケースが多いようです。

(5)面会交流の調停が不成立となったら審判へ

合意ができず、調停が不成立になった場合には自動的に審判に移行し、必要に応じて審判のための期日が開かれます。

審判では、申し立てた側から面会交流の必要性を主張した書面を提出します。
一方、相手方からは面会交流に応じられない理由などを述べた書面を提出します。
家事審判官は双方から主張を聞き、最終的には家事審判官が面会交流を認めるかどうか審判を下すことになります。

面会交流の調停で重視されること

面会交流の調停では、子どもの福祉と利益がもっとも重視されます。
したがって、「子どもの福祉と利益のために必要であると判断される場合には、面会交流は実施されるべきである」との考え方が家庭裁判所において支持されています。調停では、月1回程度の面会交流を認めるような方向に話が進むことが多いです。

(1)子どもの福祉と利益

面会交流は、親の「会いたい、会わせたくない」という感情よりも、子どもの福祉と利益を重視します。
したがって、親権を濫用したり問題のある行動があると、面会交流が制限されてしまうこともあります。
面会交流が難しくなるケースは、主に以下のようなケースです。

・子どもに暴力をふるう恐れがある
・子どもを連れ去る恐れがある
・約束を守らず直接子どもに連絡をとる、勝手に会おうとする
・子どもを通じて、金銭を要求する
・子どもの気を引こうとして、子どもに高価なプレゼントを与える
・子どもに、相手の悪口を言ったり同居を迫ったりする
・別れた相手の様子を聞き出そうとする

(2)子どもの精神状態

子どもが面会交流を嫌がっている場合も、問題となります。子どもの年齢にもよりますが、子の意思を尊重することは、情操面で大切と考えられるからです。
ただし、子どもは現在一緒に暮らしている親の影響を強く受けるものですから、子どもの気持ちをよく調査して、確認する必要があります。
ただ単に「子どもが嫌がっているから」と相手が主張しても、それは子どもに責任を転嫁させているとみられることもあります。

なお、家庭裁判所では、子どもが15歳以上になれば、子どもから意見・感情を聴取しなければならないとされ、15歳未満であっても、調査官調査などを活用して子どもの意見と感情を尊重すべきとされています。

同居している親の子どもに対する態度からみて、面会交流中をすることで、子や同居している親との関係に悪影響を及ぼすとみられる時(子どもや同居している親が、激しく動揺するなど)には、子の情緒的安定を損なうとして、面会交流が制限されることもあります。

(3)調停の欠席はNG

調停を無断欠席することは、調査官の心証を悪くするだけでなく、5万円以下の罰金を科せられることもあるので、注意しましょう。仕事や病気でどうしても指定日に行けない場合には、担当書記官に電話で相談するか、期日変更の申請をしましょう。

なお、相手が面会交流の調停に応じない場合には、裁判所は出頭勧告を出したり、相手方を訪問して説得したりしてくれます。
それでも相手が調停に応じない場合には、調停を取り下げるか調停不成立となり、審判に進むことになります。

(4)態度や服装がチェックされることも

調停では、スーツでなければいけないというルールはありませんが、清潔感のある服装を心がけましょう。服装で調停の成り行きが左右するわけではありませんが、場違いな服装は避ける方が無難です。

(5)面会交流の調停を有利に進めるためには

面会交流の調停を有利に進めるためには、緊張せずにできるだけ冷静に自分の考えを伝えることが大切です。
調停委員の意見は最後まで聞くようにします。反抗的な態度は、心証を悪くするのでNGです。

調停委員から質問をされた時には、調停委員が聞きたい内容が自分の話と合っているのか注意して、事実をできるだけ簡潔に伝えましょう。この時、主張することが「社会的に正しい」つまり、調停委員が重視する価値観に一致していることを理解してもらう必要があります。

つまり、面会交流が子どもの福祉と利益のために必要であるという主張です。「子どものことを、最優先に考えている」という思いです。これが伝われば、調査委員は納得して共感してくれます。

調査委員も人間である以上、共感すれば、応援したいと思ってもらうことができます。ただし、その説明を相手にする時には、共感したからと言っても説得力に欠けるので、論理的な説明が必要です。

たとえば、「別居後に子どもと面会した時、子どもはとても喜んでいました。先日も『次は、いつ会えるの?』と言っていました。それなのに、親の都合で面会交流ができないということが、あっていいのでしょうか」など、事実を交えながら気持ちを伝えるのです。そうすれば、「子どもが面会を喜んでいた」という事実を論理的に伝え、子どもの気持ちを最優先に考える親の気持ちを、伝えることができます。

相手の言い分に感情的に言い返したり、相手を罵ったりすることは避け、調査委員を信じて、結論を急がないことも大切です。

面会交流の調停の実例

ここで、参考までに面会交流の内容を定めた家庭裁判所の審判の実例をご紹介します。いずれも、法律上の離婚はまだ成立しておらず、別居中の父母のケースです。

(1)父の面会交流の請求を認めた事例

別居状態が続いている中、3人の子どもを連れて実家に戻ってしまった妻が、夫に子どもを会わせることを拒んでいるケースです。夫は、面会交流の申し立てをしたところ、以下のような審判がなされました。

【父の面会交流の請求を認めた事例 1】
①相手方(妻)は、申立人(夫)に対し、各月の祝日のうちの1日の午前9時から午後4時まで、長女・長男と面接交流をすることを許さなければならない。

②相手方(妻)は、申立人(夫)に対し、毎年8月中、引き続き5日間、面会交流をすることを許さなければならない。この場合、申立人(夫)は、申立人住居その他適当な場所で、長女・長男と生活を共にすることができる(京都家裁 昭和57年4月23日審判)。

このケースでは、3歳の次男については年齢からみて常時母親の監護が必要となり、父親に対して親近感も乏しいとされ、現在面会交流をさせるのは適切ではないと判断されました。この点にも、面会交流の難しさがあらわれているといえるでしょう。

【父の面会交流の請求を認めた事例 2】
次も別居状態が1年以上継続しているケースです。妻は2人の子どもを連れて転居していて、妻からは婚姻費用の分担(別居中の生活費の請求)と、子の監護者の指定の申し立てを行い、夫からは監護者の指定と面会交流の申し立てをしました。

夫を申立人とした面会交流の審判では、以下のような審判がなされました。

①相手方(妻)は、申立人(夫)に対し、各月(8月を除く)の祝休日各2日の午前9時から午後4時まで、および8月中に7日間、申立人(夫)が子ども2人とそれぞれ面会交流を許さなければならない。

②相手方(妻)は、①の面会交流の他、子どもが申立人(夫)との面会交流を希望する時には、妨害してはならず、その方法、程度は、相手方(妻)による監護を阻害しない県土で、子どもの希望に委ねる。

この審判の内容について、妻は不服として抗告しましたが、抗告審もこれを肯定しました(大阪高裁 昭和55年3月5日決定)。

上記の事例では、2例とも子どもが父に会いたいと希望する時には、その気持ちを尊重するという判断をしています。

(2)父の面会交流を制限した事例

これまでご紹介してきたように、面会交流は子どもの福祉と利益が最優先で尊重されます。したがって、子どもに悪影響があると懸念される場合には、家庭裁判所はこれを制限することができるとしています。
そこで、面会交流が制限された実例をご紹介します。

【父の面会交流が制限された事例 1】
夫の深酒と酒癖の悪さが原因で、別居した妻が2人の子どもを連れて、離婚調停を申し立て、財産的な請求はしないから離婚と子どもの親権者を母とすることを望みました。これに対して、夫は離婚の意思はないとして離婚不成立となりました。さらに、別居が解消されるまでは子どもは自分が引き取り養育する、それが認められないなら、毎週末と休暇中の一定期間の面会交流を認めるよう、申し立てがされました。
家庭裁判所では、諸事情から夫の面会交流の申し立てを却下しましたが、夫は、「深酒も慎んでいるのに、面会交流が一切認められないのはおかしい」として、高等裁判所に抗告しました。
しかし、高等裁判所も以下のような審判を下しました。

①子どもらは、両親が別居して以来母に引き取られ、母の両親宅でそれぞれ小学校、幼稚園に通い、ようやく生活に慣れ、情緒的に安定し始めている。

②父母が離婚をめぐって激しく対立した状態にあり、このような状況で面会交流をすれば、父母間の感情的対立を激化させ、子どもの情緒面の安定に悪影響を及ぼしかねない。

③現在の段階では、子どもの福祉のために、父と子どもの面会を認めないのが相当である(大阪高裁 昭和55年9月10日)。

このケースでは、その後調停離婚が成立して、母親が親権者となりました。父のために年2回の面会交流が定められましたが、その面会交流の際に、子の情操を損ねる悪影響がみられるとして、結局それ以降の父親の面会交流の要求は認められませんでした。

子どもらは、面会交流の間収支おどおどして落ち着かず、父も小遣いを渡そうとするなど親近感を取り戻そうと努めましたが、医師が疎通せず、特に小学生の長女は1週間ほど情緒が安定せず、学習意欲も減退して父との面会交流に対して、拒否反応を強く示したこと、弟も同様の不安感を持ったことも、指摘されています。

【父の面会交流が制限された事例 2】
次の事例は、3歳の女児に対して、父との直接の面会交流を制限し、母から送るビデオや写真の送付のみにとどめた事例です。

このケースでは、父母が協議離婚をして、養育費の支払いや慰謝料などと共に、面会交流についても取り決めがされていました。

面会交流は、約束通り2度行われましたが、父宅から子どもが帰宅すると、すぐに泣いたりわがままを言ったりするなど、感情が不安定になる様子が見られ、父方でも「早くママに会いたい」と困らせた事情があったことから、母親が面会交流を断ることになりました。これに対して、父からは約束に違反するとして、面会交流の調停を申し立てました。

家庭裁判所では、
①子どもはまだ3歳であり、これまで母親からひと時も離れることなく養育されてきたこと。
②母の手を離れ、父親と時を過ごすのは、子どもに不安感を与える(現にその兆候がみられたこと)。
という事情から、現段階での父との面会交流を認めることは躊躇すると述べ、母がこまめに子どものビデオや写真を父に送り、近況を知らせるのが相当、と申し立てを却下しました(岐阜家裁大垣支部 平成8年3月18日審判)。

この事例では、母が面会交流をさせなかった時、父が母子のアパートを夜中に訪ねて怒鳴ったりドアを叩いたりしたこと、駐車場で待ち伏せして母子を大声で怒鳴ったことなど粗暴な言動や行動がマイナスに評価されたとみられます。

まとめ

以上、面会交流の意味や、面会交流の調停の申し立て方法・主な流れ・有利に進める方法、過去の実例などについてご紹介しました。
面会交流は、基本的には当事者で話し合いが決めればどのように定めてもよいのですが、子どもの福祉と利益を最優先にすべきであることを忘れてはいけません。
そして、面会交流の話し合いがうまくいかなかったり、取り決めが約束通り実行されない場合には、家庭裁判所に調停を起こすことができます。

調停で面会交流について取決めたにもかかわらず、その取り決めが守られない場合には、家庭裁判所に「履行勧告」を申立てることができます。
履行勧告を申立てると、家庭裁判所が面会交流の約束を守るように履行勧告や履行命令を申立てます。

履行勧告にも履行命令にも従わない場合には、間接的な方法で相手に面会を強制する方法もあります。これを間接強制といいます。
間接強制とは「1か月に1度は面会させよ。違反した場合にはその都度10万円を支払え」というような内容を裁判所から命令し、約束をきちんと守らせようとする制度です。

ただし、その場合にも子どもの福祉と利益が最優先に判断されるということを、忘れないようにしましょう。