事情説明書(離婚調停)の書き方(例文付き)

離婚調停の事情説明書とは、調停を申し立てる際に「夫婦関係等調整調停申立書」と共に提出する書面です。

離婚調停の申立ての内容に関する事項を記入するもので、裁判所があらかじめ当事者の基本的な情報を知っておくために提出します。

事情説明書とは

離婚調停を申し立てる時には、調停申立書とともに、夫婦関係の事情説明書、未成年の子どもがいる場合には、子どもについての事情説明書を書いて、家庭裁判所に提出します

(1)事情説明書はなぜ必要?

事情説明書は、裁判所が調停期日に効率よく充実した話し合いができるようにするために、事前に当事者の基本的な情報を知っておくために必要となります。

「離婚することに相手は同意しているのか」「親権はお互いにほしいと言っているのか」「それぞれの収入はどれくらいか」など、調停を進めるうえで必要となる基本的な情報を記載して提出します。

(2)相手に見られる可能性がある

事情説明書は、相手に送付されることはありません。
しかし、裁判所に提出後に相手から見たいという希望があると、裁判所が見せることがあります。
したがって、相手に見られる可能性があることを前提に書く必要があります。相手を調停前に不用意に刺激しないように、注意して記載をするようにしましょう。

事情説明書の書き方

事情説明書は、家庭裁判所でもらえる他、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
ここからは、各項目の記載方法や注意点について、ご紹介します。

▶ 家庭裁判所「夫婦関係調整(離婚)」

(1)同居家族

申立人(自分)と、相手の同居している家族について記載します。
別居している場合には、申立人である自分の情報を記入し、相手方の欄には相手の情報を記載します。
同居している時には、申立人の欄に相手も含めて記載します。

この質問は、「別居している場合、子どもはどちらの親と同居しているのか」「子ども以外の誰か(例えば子どもの祖父母)と同居しているのか」という情報を知るためのものです。
子どもの親権や面会交流が争点になっている時や、婚姻費用(別居中の生活費)について、争点となっている時に、考慮される項目となります。

(2)双方の資産状況

申立人(自分)と相手の収入、申立人(自分)の資産と負債、相手の資産と負債について記載します。この情報は、婚姻費用や養育費などについて検討するための情報です。

収入
収入については、申立人と相手方の収入を確認することで、婚姻費用や養育費の算定の参考となる情報にするために質問されているということを念頭に記入しましょう。

自分の収入については、給与明細表や通帳を確認して記入します。相手の収入についても同じように給与明細表や通帳で確認できれば、その金額を記入します。
もし、相手の収入が分からない場合には、「大体、このくらい」という推測で記入しても構いません。

財産・負債
財産や負債の項目は、財産分与が争点となった時に当事者の資産と負債を確認するためのものです。負債については、住宅ローンの有無や金額を確認します。

自分と相手の資産と負債をそれぞれ書いていきますが、財産分与が争点になった時の情報提供ですから、結婚前の貯金や親から相続した財産などについては、夫婦の共有財産ではないので記載する必要はありません。

不動産や預貯金といった資産について、名義が自分名義か相手名義かを確認して、自分名義の財産は申立人の欄に、相手名義の財産は相手方の資産のところに記入します。
負債についても、同じように自分名義や相手名義かを分けて、記入します。

「相手名義だが、自分も連帯保証人になっている」という場合には、自分の負債でもあるので、自分の欄にも書く必要があります。住宅ローンを組んでいる場合には、連帯保証人になっていることもありますので、誰が借主で誰が連帯保証人なのかを確認して記入しましょう。

「その他」の欄は、自動車や生命保険、株式などの有価証券などの財産について記入します。

住宅
申立人(自分)と相手方の住居の状況について、自宅なのか、賃貸なのか、それ以外なのかを記入します。
この質問は、別居する経緯について「自分が自宅を出て実家に戻った」「相手が自宅を出て行ってマンションを借りた」など、さまざまなパターンが考えられることから、現在の状況を把握するために尋ねられているものです。

「自宅」は、自分名義でなくても相手名義や共有名義の住宅でも、構いません。実家に戻っている時には「実家」にチェックを入れ、マンションを別に借りている時には「借家」にチェックを入れて、家賃を記入します。駐車場代や管理費がかかる場合には、それも加えて書きます。

相手の住宅の状況が分からない時には、推測で記入してかまいません。

(3)あなたの収入はどこから得ているか

現在の生活費をどこから得ているかについて記入します。
自分が働いていて、その収入だけで賄っているのか、相手から生活費をもらっているのか、収入が足りず(もしくは全くないために)貯金から取り崩しているのかなどについてチェックしていきます。
この項目は、別居している時の婚姻費用や養育費を検討するために質問されているものです。

(4)この申立てをすることを相手は知っているか

この項目は、調停委員会が事前に「円滑な話し合いが可能か」など、相手の情報を把握して、どのように調停を進行するべきか検討するためのものです。

相手に「調停を申し立てることを伝えているか」「相手が裁判所の呼び出しに応じると思うか」について記載をします。

相手が応じるようなら「応じると思う」、相手が応じないようなら「応じないかもしれない」にチェックをします。相手が応じるか分からない場合ん位は、「分からない」にチェックを入れておけばよいでしょう。

(5)調停ではどの点が対立すると考えるか

「調停では、あなたと相手の意見がどのようなことで対立すると思いますか」という質問は、「当事者間で何を揉めているのか」あるいは「どの点で揉めそうなのか」について把握するためのものです。
この質問に回答する前に、まずは自分の相手に対する希望を整理することが必要です。

相手と離婚する時、自分はどうしたいのかをできるだけ明確に整理してみましょう。そのうえで、相手が自分の希望と異なる希望を持っていると分かっている場合には、対立する点としてチェックをしていきます。

たとえば、離婚については同意しているものの、子どもの親権について争いそうな場合には、「□子どものこと」にチェックをして、「□親権者をどちらにするか」にチェックを入れます。チェックをする項目は、ひとつである必要はなく複数あっても構いません。相手の考えや要望が分からない場合には、推測で記載して問題ありません。

なお、この項目にチェックを入れないと、その項目について調停で話し合いができないというわけではありません。あくまで参考にするための情報なので、その点は安心してください。

(6)現在お子さんを養育しているのは誰か

6~11は、未成年の子どもがいる場合に記入します。
子どもがいない場合には、空欄で構いません。

「現在、お子さんを主に養育している人は誰ですか」という質問については、親権が欲しいのであれば、「□申立人」にチェックをしたいところです。なぜなら、親権者を認定する際には、「これまで、夫婦のどちらが主に子どもを監護してきたか」が重要視されるからです。

子どもを連れて別居しているのなら、当然「□申立人」にチェックを入れることができますが、同居していて「どちらが主に監護しているか」があいまいな場合には、「□申立人」にチェックを入れておくようにしましょう。
自分や相手方以外の人(たとえば自分の両親など)が監護している場合には「□その他」にチェックをして、「申立人の両親が監護しています」と記載するようにしてください。

(7)面会交流についての取り決め

「面会交流(お子さんと別居している親との間での面会や手紙等による交流)について、取り決めをしたか」という質問は、相手と別居している時に、子どもの面会交流の状況について確認するための質問です。

取り決めをしている場合には、取り決めの内容を記入します。

(8)現在面会交流を実施しているか

「現在、面会交流を実施しているか」という質問は、相手と別居している時に、監護していない親と子どもが面会しているか否かを知るためにされる質問です。
別居後に、子どもと監護していない親(別居している親)が会っていない場合には、「子どもが会いたくないと言っている」など、その理由も記載します。

(9)今後面会交流をどのようにしたいか

「今後、面会交流をどのようにしたいと考えていますか」という質問は、親権や面会交流が争点となっている時に重視される項目です。

面会交流を実施する場合には、回数や曜日、場所など具体的な条件も記載します。
面会の頻度は、月に○回とするのが一般的です。たとえば、第1土曜日などと特定するとスケジュール調整しやすくなります。
時間についても何時から何時までと目安になる時間を決めておくと、後々トラブルを避けることができます。その他、子どもの受け渡しや会う場所など要望がある場合には、その点も記載するようにしましょう。

もし、面会交流を実施するのが相当でないと考える場合には、「夫は、長男との面会を希望していますが、現在は子どもの精神状態が安定していないため」「子供を連れ去るおそれがあるため」など理由についても明記するようにしましょう。

(10)今お子さんに対する離婚等の説明

両親の離婚問題は、子どもに大きなストレスをかけるものです。
したがって、未成年の子どもがいる場合には裁判所は「子の福祉」を第一に考えて、調停を進めていきます。
そこで、調停で親権や面会交流が争点となった時には、子の福祉のためにどのように対応していくべきか必要な情報を知りたいと思っています。

離婚することについて説明したことがある場合には、「□説明したことや、意見を聞いたことがある」にチェックをして、説明した内容やその時の子どもの様子、意見について記載します。この時、もし裁判所に伝えておきたいことがあれば、その旨も記載するとよいでしょう。

(11)お子さんについて心配していること

家庭裁判所では、親権や面会交流が争点となっている時に、子どもの状況や気持ちを確認するために、調査官が調査をすることがあります。
「お子さんについて、何か心配していることはありますか」という質問は、この調査の際に申立人が心配に思っていることを、あらかじめ把握しておこうという趣旨からされるものです。
子どもについて心配していることがあれば、その内容を記載します。

(12・13)申立人と相手の仕事の状況

申立人(自分)と相手の勤務先やその住所、雇用形態(正社員、パート、アルバイト」について記載します。
相手の勤務先が分からない場合には、「不明」と記載すればよいでしょう。

(14)これまで調停を行ったことがあるか

「以前に家庭裁判所で調停等を行ったことがあるか」という質問は、子の調停が夫婦関係に関する初めての調停なのかどうかを把握するために質問です。
もし、以前すでに離婚調停をしたことがある場合には、その調停がどうなったのか、その後再度調停を申し立てることになったのはどのような理由があるのかについて、調停委員から質問されることになります。
もし、過去に調停や審判の経験がある場合には「□ある」にチェックをして、申立人の名前と事件番号を記載します。

(15)相手からの暴力、保護命令の申立て

15の「相手からの暴力等及び保護命令の申立て等について」の欄は、相手からの暴力の有無について記載する項目です。
暴力には、殴る、蹴るという身体的暴力のほか、怒鳴る、壁を強く叩くなどの行為なども含まれます。
また、生活費を渡さない、セックスを強要する、行動を監視するなどの行為も暴力の一種です。
もしそのような暴力が会った場合には、警察や配偶者暴力相談支援センター、女性相談センターなどに相談してください。加害者の接近などを禁止する保護命令の申立てについて相談に乗ってもらうことができます。

なお、暴力を受けた時にはその時のケガの写真や医師の診断書などの証拠があると、後々相手の暴力を立証するのに役立ちます。

暴力を理由に離婚をしたいと考えている方には、以下の記事で対処方法や相談窓口をご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

▶ DVの被害に遭っている方へ|対処方法・相談窓口まとめ

申立ての実情

「申し立ての実情」の欄には、夫婦関係がうまくいかなくなった事情や経緯について記載します。
調停申立書の「申し立ての理由」で、おおまかな申立て理由は確認していますが、もう少し具体的にどのような理由から夫婦関係が不和になったのかといういきさつを把握したいという趣旨からされる質問です。

暴力を受けている場合には、「昨年10月頃から、月に1、2度、夫の機嫌が悪い時に平手で頭を叩かれるようになった」など、暴力の内容について具体的に記入します。

記載例
相手方は結婚当初から、共に結婚生活を営むという意識に乏しく、気に入らないことがあると暴言、暴力に訴えることを繰り返してきた。

・具体的には、平成○○年○○月○○日に「死ね」という暴言を浴びせられた。
平成○年○月○日から、別居を開始するまでの平成○年○月まで、2年8か月の間、暴力を振るわれ続けた。

・申立人は、相手方に暴言や暴力を振るわないよう何度も申し入れを行った。相手方はその時は反省するが、2~3日後にはまた暴言や暴力を繰り返した。
申立人は、暴言や暴力をやめないなら離婚をしたい旨、相手方に申し入れたが、聞き入れられることはなかった。

・申立人は子どもへの影響も考え、平成○年○月に長男○○(満3歳)を連れて別居を開始し、相手方と離婚および離婚条件について話し合うよう求めてきたが、相手方が話し合いに応じることはなかった。

・このように夫婦関係は破たんしているので、申立の趣旨のとおりに離婚を求め調停を申立てます。

まとめ

以上、離婚調停の事情説明書の意味や記載方法についてご紹介しました。
事情説明書は、調停委員会が調停を円滑かつ効率よく進めるために、事前に状況を確認するために提出する書類です。相手から求めがあった場合には、相手に見られることがあることを前提として、事実だけを簡潔にまとめて記載するようにしましょう。

各項目は、財産分与や面会交流、養育費、親権について判断される際に確認されますので、記載もれがないように注意し、不明点があれば弁護士に相談することをおすすめします。