「嫁が浮気…」妻の浮気離婚で損しないための8つのポイント

浮気というと、以前は「夫の浮気」が定番でしたが、最近は妻が浮気して、それが原因で離婚するケースが増えています。

それでは、妻が浮気をして離婚する時には、どのようなことが問題となるのでしょうか。そして、離婚する際には、浮気した妻に責任をとらせることはできるのでしょうか。

嫁の浮気が発覚!離婚したい

「結婚して10年になる専業主婦の嫁が、浮気をしました。その男との関係は結婚前からで、もう15年以上の付き合いになるそうです。こんな妻とは離婚しますが、我慢ができません。何とか妻に責任をとらせることはできませんか」…最近、このように妻の浮気に苦しむ男性からの相談が増えています。

令和5年 司法統計年報によれば、「異性関係」を理由に調停等を申し立てた数は、夫が1,817件、妻が5,362件でした。

申立ての動機 申立人
総数 15,192 41,652
性格が合わない 9,103 15,835
異性関係 1,817 5,362
暴力を振るう 1,320 7,711
酒を飲みすぎる 376 2,394
性的不調和 1,592 2,642
浪費する 1,748 3,550
病気 592 672
精神的に虐待する 3,252 10,881
家庭を捨てて省みない 720 2,537
家族親族と折り合いが悪い 1,668 2,332
同居に応じない 1,338 599
生活費を渡さない 738 12,040
その他 3,242 4,974
不詳 756 3,751

>裁判所「令和5年 司法統計年報」

子どもがいる場合には、特に悩み苦しむ男性が多く、「子どものために」と妻の浮気を我慢して、ストレスを抱えながら結婚生活を続け、結局は夫婦関係が修復できずに離婚することが多いようです。

浮気をした妻と離婚する場合には、妻に慰謝料を請求することができます。また、妻の浮気相手に対しても慰謝料を請求することができます。
ただし、慰謝料を請求するためには妻の浮気を立証できるか否かがポイントとなりますので、しっかり証拠を入手することが大切です。

(1)妻に慰謝料を請求できる

妻の浮気を立証できる場合には、妻に対して慰謝料を請求することができます。

慰謝料を請求する場合には、当事者間で離婚話をするなかで慰謝料の額などについて話し合いをすることもできます。しかし、当事者間だけで話をすると感情的になりやすくスムーズに話が進まないことが多いので、離婚調停の申立てをしてその調停で慰謝料を請求する方がスムーズに話が進むでしょう。

慰謝料の額については、結婚生活の期間など個々の事情によって異なります。

婚姻期間55年(ただし、後半17年は別居)の夫婦の場合で、夫に1,000万円(愛人に対して、別途500万円)の慰謝料が算定されたケースもありますが(東京高裁 昭和63年6月7日)、200万円前後が多いようです。

(2)浮気相手にも慰謝料を請求できる

妻への慰謝料請求とは別に、浮気相手に対しても慰謝料を請求することができます。
ただし、慰謝料を請求することができるのは、浮気相手である男性が「妻が既婚者である」と知っていた場合です。もし、妻が「自分は未婚だ」と嘘をついていて、相手の男性もその嘘を信じていた場合には、慰謝料を請求することはできません。

相手の男性に対する慰謝料を請求するか否かについては、妻への影響も検討する必要があります。もし、妻との離婚を考えていなくて、妻との結婚生活を修復したいと思っている場合には、夫が相手の男性に慰謝料を請求することで、妻が反発して離婚したいという気持ちを強めるかもしれません。したがって、よく妻の気持ちを推し量ってからどうするか決めましょう。

相手の男性に対して慰謝料を請求する場合には、内容証明の通知書を出すことがよくありますが、その通知書の記載内容によっては、時に脅迫ともとれるような過激な表現がされたり、過大な金額の請求がされたりすることがありますので、注意が必要です。

なかには、感情的になり過激な言動をしてしまい恐喝罪に問われるリスクもありますので、交渉は弁護士に依頼する方が無難です。

(3)慰謝料を請求するには「証拠」が大切

慰謝料を請求する場合には、性的関係を立証する必要があります。
証拠といっても、ホテルの領収書などだけでは、不十分です。
ラブホテルに入る写真や動画、浮気相手との旅行したことを示す写真や動画などがあれば、浮気の有力な証拠となります。
その他、ラブホテルの利用を示すクレジットカードの明細、性的関係を示すメールやSNSのやりとりなども、証拠となることがあります。

(4)妻の浮気でも親権が母親になることがある

「浮気をした妻に、子育てなど任せられない」という気持ちは、当然です。
しかし、子どもが幼い場合には、母親が浮気をして離婚する場合でも、母親が親権者に指定されるケースがあります。
また、離婚の際に妊娠中だった場合には、生まれてくる子供の親権は母親が持つことになっています。

父親の皆さんには大変酷な話ですが、父親が親権者になるのは、まだまだ難しいのが実情です。特に妻と別居している状況で、妻が子どもの面倒を見ている場合は、父親が親権を取得するのは、かなり難しくなります。

したがって、妻による子どもの連れ去りには十分注意してください。妻が子どもを虐待しているといった深刻な問題があれば別ですが、たとえ、妻が一方的に子どもを連れて別居したとしても、親権者を決める際には、そうした事情はほとんど考慮されません。

妻による子どもの連れ去りが心配な場合には、自分の親を自宅に呼んで妻の行動に注意してもらうなど、十分な対策をとるようにしてください。

なお、2014年、欧米諸国が加盟しているハーグ条約に日本が加盟したことで、今後はこのような子どもの連れ去りの流れが変わる可能性があります。ハーグ条約には「一方の親による子どもの連れ去りは違法である」という考えがあります。
このような価値観に基づく条約に日本が加盟したことから、今後は一方の親による子どもの連れ去りが、これまでより問題視される可能性はあります。

(5)子どもの養育費は支払わなければならない

浮気した妻が子どもを連れて別居した場合、「養育費を払っても、妻が使うかもしれない」という思いから、子どもの養育費を支払うことに抵抗を覚える方もいます。

しかし、妻が浮気をしたことに子どもは関係ありません。
子どもの養育費は、父親として当然に支払わなければなりません。

養育費を支払わなければ、妻が家庭裁判所に調停を申し立てることがあります。調停で合意が得られなければ裁判所が審判を下します。
養育費の額については、東京・大阪の裁判官が作成した養育費算定表が広く活用されています。話し合いの際の目安ともなりえます。

▶ 養育費・子1人表(子0~14歳)

▶ 養育費・子1人表(子15歳以上)

▶ 養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)

▶ 養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)

▶ 養育費・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)

▶ 養育費・子3人表(第1子,第2子及び第3子0~14歳)

▶ 養育費・子3人表(第1子15歳以上,第2子及び第3子0~14歳)

▶ 養育費・子3人表(第1子及び第2子15歳以上,第3子0~14歳)

▶ 養育費・子3人表(第1子,第2子及び第3子15歳以上)

▶ 家庭裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(令和元年12月23日に公表)」

(6)妻が浮気相手と結婚したら

浮気して別れた妻が、その浮気相手と結婚し、その相手と子どもが養子縁組をした場合には、養父(浮気相手)が親権者になります。
「妻だけでなく、子どもまで浮気相手にとられてしまう気がする」という二重のショックに見舞われるかもしれません。

では、妻の再婚相手が子どもと養子縁組をするのを防ぐことはできるでしょうか。
そのためには、妻を監護権者として、父親は親権を手放さずに持っておくことが必要です(※後述)。子どもが15歳未満の場合には、親権者の承諾がない限り、子どもと養親となろうとする者の合意のみで、養子縁組することはできないからです。

ですから父親が親権を持っていれば、妻が再婚したとしても、子どもと再婚相手が勝手に養子縁組することを防ぐことができます。

※親権には、身上監護権と財産管理権があり、通常は親権者がその両方の権利・義務を行使します。しかし、場合によっては親権から身上監護権を切り離して監護権者を決めることもあります。

親権者は、子どもの財産を管理するなどして、監護者は子どもと同居して子どもの世話を行います。

妻の浮気で離婚する8つのポイント

妻の浮気を理由に離婚する場合には、感情的になって離婚を急ぐのはよくありません。
ここでは、妻の浮気を理由に離婚する時に注意したい8つのポイントをご紹介します。

(1)いきなり問いつめない

妻の浮気が分かれば、感情的になって問い詰めたくなる気持ちは十分理解できます。
しかし、問い詰めてもすぐに浮気を認める人は少ないですし、暴力は絶対NGです。暴力を振るえば逆に相手から「DV夫だ」と言われ、一気に不利になってしまいます。
したがって、浮気をしているのではないかと思ってもいきなり問い詰めることはしないで、まずは冷静になって弁護士などに相談することをおすすめします。

なお、参考までに以下に浮気の疑わしい行動を記載しておきます。3つ以上該当すれば、浮気をしている可能性が高いといえるので、早急に弁護士に相談し、証拠を入手するなど作戦を練ってください。

浮気の疑わしい行動チェック

①帰宅時間が遅くなった
②帰宅後、入浴しなくなった(ホテルで浴びているため)
③休日に出勤するなど、休日の外出が増えた
④自宅でスマホをマナーモードにしている
⑤所有するスマホの台数が増えた
⑥スマホやパソコンに、ロック機能を設定した
⑦予定を聞くとごまかしたり怒ったりする
⑧会社や自宅近く以外のコンビニやカフェの領収書が増えた
⑨おしゃれをするようになった
⑩新しい下着を頻繁に購入するようになった
⑪スキンシップの回数が減った
⑫知らない持ち物が増えた(相手にプレゼントされた可能性)
⑬性感染症を移された

(2)証拠をつかむまで平静を装う

「浮気をしているのではないか」と疑い、問い詰めてもすぐに認める人はあまりいないでしょう。それに「疑われている」と知られてしまえば、慌てて証拠を処分されてしまいます。

また、一度浮気を認めても慰謝料の話になると証拠がないと「浮気などしていない」ととぼける人もいるようです。

そこでまずは、相手が言い逃れできないほど決定的な浮気の証拠を集めることが大切です。
ラブホテルや異性の部屋などに出入りする写真や動画、特定な異性との意味深なメールや電話の記録が証拠になります。

もし必要ならば、調査会社に依頼することも検討しましょう。ただし、調査会社に依頼する際は十分注意してください。高額な見積もりを提示されることもありますが、同じ調査内容でも別の業者に依頼すれば、10分の1ほどの料金で済む場合もあります。
したがって、弁護士に相談し、弁護士を通じて信頼できる調査会社を紹介してもらうのがおすすめです。

(3)財産分与に備え財産を精査する

浮気をした妻には、財産分与を受ける権利はないと考える人が多いようです。しかし、実際は、浮気をした妻にも財産分与の権利があります。
離婚原因がなんであれ、夫婦が結婚している間に共同で取得した財産は、離婚する際に公平に分け合うように法律で決められているからです。

ただし、浮気をしたという離婚原因をつくったことで、妻に対して慰謝料を請求することができるので、これを財産分与の一部として計上することもあります。

財産分与の対象となるのは、夫婦が結婚してからの預貯金や保険金などです。名義が夫婦どちらになっていようと、結婚後に築き上げた財産であれば、共有財産になります。

共有財産はいわば申告制なので、隠されてしまうと対象外になってしまいます。そこで、妻に預貯金を他の口座に移されるなどされないように、注意してリストアップしてください。

(4)父親が親権をとるための対策を行う

先ほどご紹介したように、子どもが幼い場合には、父親が親権をとるのはかなり困難です。
しかし、絶対に父親が親権をとれないというわけではありません。
子どもと父親が同居していて、父親としてしっかり育児を行ってきたことなどをアピールできれば、十分に親権を得る可能性はあります。

また、妻が育児を疎かにして浮気をしていたなどの事実があれば、妻は親権者として失格であるとして、父親が親権を勝ち取ることができるでしょう。

そこで、親権を得たい場合には、父親としてしっかり育児を行ってきたことや育児をサポートしてくれる環境(近所に祖父母がいるなど)が整っていることなど、アピールポイントとなるような状況をしっかり作っておきましょう。

なお、下記記事では父親が親権を勝ち取るためのポイントをご紹介しています。
ぜひあわせてご覧ください。

▶ 父親が親権を勝ち取るためにアピールしたい5つのこと

(5)離婚届不受理申出を提出しておく

妻が、離婚して浮気相手との再婚を考えている場合には、勝手に離婚届を提出してしまうことがあります。
このような勝手な行為を阻止するためには、離婚届不受理申出を提出しておきましょう。
離婚届の不受理申出は、役所で所定の用紙に記入して提出します。用紙は戸籍係でもらうことができます。申し出た本人が離婚届を提出しそれが受理されるまで有効です。

▶ 離婚届を勝手に出された!無効にすることはできる?

(6)妻と話し合う

証拠を入手して、親権を得るために有利な状況をつくり、財産分与の対象をリストアップしたら、妻と話し合います。
妻との話し合いが感情的になってしまいそうな場合には、別居して距離をとっておくのもひとつの手です。

別居する時にも、やみくもに家を飛び出すのではなく計画的に行っていください。
離婚時に親権をとりたいのであれば、子どもを置いていくと不利になってしまいます。
調停や裁判では、同居している親の方が有利になるからです。

また、別居先の住所は、相手にも知らせておくようにします。相手が不在のうちに家を出る場合には、別居の経緯について証拠を残すため、メールなどを送信しておきましょう。

(7)話し合いがまとまらない時は調停

話し合いがまとまらない場合には、離婚調停の申立てをします。
調停では、調停委員が間に入って話し合いが進められます。調停の結果、離婚に合意すれば離婚が成立します(調停離婚)。
もし、調停で離婚や離婚条件について合意ができなくても、当事者双方がほぼ離婚に合意している場合には、裁判所は離婚の審判を下すことがあります。この審判を夫婦が受け入れると離婚が成立します(審判離婚)。

しかし、どちらか一方が異議申し立てをすると審判が無効になるので、実際には審判離婚はほとんどありません。

(8)調停が不成立の時は裁判

調停離婚や審判離婚が成立せず、それでもなお離婚したい場合には、裁判で決着をつけることになります。裁判所が離婚を認める判決を下せば、裁判離婚が成立します。

裁判のなかで、裁判官が和解を勧めてくることもあり、その和解に夫婦が合意すると、判決を待たずに和解離婚が成立します。

また、裁判を起こされた側が請求を全面的に受け入れる認諾離婚もあります。

まとめ

以上、妻が浮気をしたことを理由に離婚したい時に、知っておきたいポイントなどについてご紹介しました。

浮気の事実が明らかになれば、大きな苦しみと悲しみを感じるものです。しかし、この状況をどうすればよいか、冷静になって考えましょう。離婚するにしろしないにしろ、きちんと事実と向き合わなければ、後々大きな後悔をすることになってしまうかもしれません。

妻と浮気相手慰謝料を請求して離婚するつもりなら、優位に立つための十分な準備が必要です。ひとりで背負い込まずに弁護士に相談し、二人三脚で戦うことをおすすめします。