父親が親権を勝ち取るためにアピールしたい5つのこと

父親が親権

親権は母親にわたることが多いのが実情です。特に子どもが乳幼児であれば、親権は母親にわたるエースが多いといえます。
しかし、父親が絶対親権を獲得できないかというと、そんなわけでもありません。

最近では父親が親権者となるケースも、確実に増えてきています。
母親が親権者になれるのは、あくまで母親が愛情をもってしっかり育児をしていることが前提です。たとえば母親がろくに育児をしていないというような事情があれば、母親ではなく父親が親権者になることができます。

父親は親権を取りづらい?

「妻と離婚したいのはやまやまだけど、父親は子どもの親権を取りづらいと聞く」
「子どもと会えなくなったらどうしよう」
このような心配を抱えて、離婚になかなか踏み切れない父親は多くいます。

確かに親権は、母親にわたるケースが多いのが現状です。特に子どもがまだ乳幼児であれば、母親が子どもを世話する時間が父親と比べて長い場合が多いことから、母親が親権を持つことが多いでしょう。妻が浮気をしていてそれが原因で離婚することになったとしても、妻が育児をきちんとしていたなら、やはり母親が親権をとるケースが多くなります。
妻が専業主婦で資力がないなどという事情も、あまり問題にされません。そのような場合は夫が離婚後に養育費を支払えば対応できる、と考えられるからです。
しかし、これはあくまでも「母親が愛情をもって育児をしていることが前提です。
ですから、母親が育児放棄をしていたり虐待をしているような場合には、母親は親権者になることはできません。

そもそも親権者はどう決める?

親権者の取り決めは、まずは夫婦の話し合いからスタートします。
未成年者の子どもがいる場合には、離婚届に親権者を明記する必要がありますので、親権者を父母のどちらにするかは、離婚をする前に結論を出す必要があります。

「早く離婚したいから、とりあえず親権者は母親にしておこう」」というのはNGです。確かに離婚後も親権者の変更をすることができますが、面倒な手続きが必要ですし、離婚後に相手が応じない恐れもあるからです。

親権者は子どもの年齢による?

親権者の話し合いがまとまらず調停を申し立てた場合には、親権者は、子どもの年齢が低いほど母親になる傾向が強いといえます。
とくに10歳未満の場合には、生活全般にわたって身の回りの世話が必要になるので、母親の役割が重視されます。しかし、10歳以上になると、子どもの監護状況や子どもの意思が尊重される場合もあります。

親権者と監護者を分けることもできる

親権者にならないと子どもと暮らすことができないというイメージがありますが、親権者と監護者を指定すれば、親権者でなくても子どもと暮らすことができます。

親権者は、財産管理権を有し子ども名義の財産を管理し法的な問題などについて代理をすることになり、監護者は子どもの住むところを指定して、身の回りの世話や教育、しつけなどを行うことになります。

ただし、親権者と監護者が対立してトラブルに発展することもあり、子どもへの影響もふまえ、裁判所ではあまり認められていません。
親権を分けるのは、どうしても決められない場合の最終的な解決策と考えた方がよいでしょう。

父親が親権を勝ち取るためには

これまで述べてきたとおり、一般的には父親は親権を獲得することが難しいと言わざるを得ません。

調停で話し合うことになっても、調停委員は母親にわたすよう説得する方向で調整しますし、裁判となった場合にも母親が親権を獲得するケースは多いと言えます。

特に子どもが幼い場合には「幼い子供には、母親の養育が必要である」と考える傾向があるので、どうしても父親が親権をとるのは不利になってしまいます。
ただし、父親が親権者に絶対になれないということではありません。
以下のような事情がある場合には、父親が親権者になれる可能性もあります。

・母親が虐待や育児放棄をしていた時
・父親が子どもと暮らしている時

(1)母親に育児を任せられないことを主張する

たとえば、母親がろくに育児もせず遊んでいたり、子どもに十分な食事を与えなかったりといった事実がある場合には、父親が親権者となるケースがあります。
また、母親が子どもを虐待している、病気やケガをしても放置する、などの育児放棄をしていた事実があれば、父親が親権者になることがあります。

親権者となるために大切なのは、子どもの食事をつくり、健康に気をつけ、清潔な服を着せて、こどもがのびのびと個性や能力を発揮できるように育てているか否かという点が重視されるのです。

(2)父親が子どもと暮らしている事実がある

親権者として適任か判断する場合には、「子どもの現在の生活環境が変わらないかどうか」も重視されます。生活環境が変わることは、子どもに大きなストレスを与えることになるからです。

したがって、現在子どもを育てている親の方が優先される傾向があります。
つまり、父親が子どもと暮らしている場合には、父親が親権を獲得できるケースがあるということになります。
別居するなどの事情がある場合で子どもの親権をとりたいのなら、子どもを連れて行くようにしましょう。もし親権がほしいなら、離婚するまでは決して子どもと別れて暮らさないことです。

(3)父親が積極的に育児に参加していることをアピール

父親が子どもを養育している事実や、子どもを養育する環境をいかに努力して整えているかなどをアピールすると、父親が親権者となることがあります。
これまでの育児実績を見せながら、日常生活に支障がないこと、仕事で忙しい時には協力してくれる親や兄弟・姉妹、親しい友人がいることを証明するのです。
育児を楽しんでいる様子をつづった育児日記やブログがあれば、さらにポイントアップにつながります。

(4)知人に陳述書を書いてもらう

幼稚園や保育園の保育士、家族ぐるみで仲の良い知人がいれば、その方たちに、よい父親であることをアピールする陳述書を書いてもらうよう、お願いしてみましょう。
父親が育児に積極的に参加し、率先して学校行事などに参加している様子が第三者の証言から分かれば、父親が親権をとるうえで、有利になります。

(5)父親が親権を勝ち取った事例を知る

前述したとおり、最近は父親が子供を引き取りたいと、法廷で親権を争うケースが増えていて、実際に父親が親権を勝ち取ったケースも増えています。
ここで、父親が親権者となった事例をご紹介しましょう。

①母親と子どもの面会交流を積極的に認め、母親に譲歩させ父親が親権者となった事例

・父親が子どもを問題なく養育している。
・母親の監護能力に若干の問題がある。
・父が母親と子どもの面会交流を積極的に認めた。

このケースでは、「父親が、母親と子の面会交流に積極的である」「父親が問題なく養育している」という事実が重視され、さらに「子どもの養育環境を変化すべきではない」と裁判所が判断し、父親に親権を認められました。

②別居している父親に親権を認め、子の引渡しを命じた事例
平成28年3月29日(千葉家裁松戸支部)に、別居している父親に親権を認め、子の引渡しを命じる判決が出ました。

・母親が、子どもを連れて勝手に別居をした。
・母親は、父娘の面会や電話での会話を拒否するようになった。
・父親が面会を求めるも、長い間長女と面会できない状態が続いていた。
・父親は、年間100日程度の面会交流計画を提示していた。

この事例で裁判所は「長女が両親の愛情を受けて健全に成長するためには、父親に養育されるのが適切だ」と判断しました。

離婚後でも親権者を変更できる場合がある

一度決めた親権は勝手に変更することはできませんが、子どもの成長に関わる場合には、家庭裁判所に調停もしくは審判を申立てることで親権者の変更を求めることができる場合があります。

子どもの生活環境や養育状況が悪くて、母親に任せられないと思った時には、親権者の変更を家庭裁判所に申し立てましょう。

親権者変更の調停は、現在の親権者の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。親権者が行方不明などの事情がある場合には、子どもの住所地の家庭裁判所に審判を申し立てます。この場合には、子どもの祖父母などの親族が申請することもできます。

裁判所が親権者指定を認めるケース

家庭裁判所が、親権者の変更を認めるのは、親権者にふさわしくない(子どもに暴力をふるったり育児放棄したりしている)とか、親権者が子どもの世話をできない(入院しているなど)、子ども自身が望んでいるといった特別の事情がある場合で、「親権者が再婚した」などの理由では、認められません。親権者の変更が認められるのは、あくまで子どもの福祉や利益のために必要であると認められるときです。

申立書の記載例は、以下を参考にしてください。

親権者変更の調停申立書記載例

▶ 家庭裁判所「親権者変更調停」

親権者になれなくても子育てには参加できる

もし、親権者になれなかったとしても、それで子どもとのつながりが断たれるわけではありません。

子どもに面会したり一緒に過ごしたりする権利(面会交渉権)について協議や調停などでしっかり取り決めることができれば、子どもと会って一緒に過ごし、育児に参加することができます。

なお、その際には面会交流の内容は、可能な限り具体的に細かく取決めしておきましょう。そして離婚協議書に記載し公正証書にしておきましょう。

面会交流の取り決め方については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

▶ 面会交流権|会う頻度、会う場所などはどう決める?拒否はできる?

まとめ

以上、父親が親権者になるための方法について、ご紹介しました。
確かに子どもが小さい場合などは、父親が親権者になるのは難しいのが実情です。しかし、母親が育児放棄している、長期入院をした、母親の養育環境が悪いなどの事情がある場合には、父親が親権者になるケースも多々あります。

また、父親が面会交流等に積極的である態度を見せれば、裁判所がその点を考慮してくれることもあります。

父親で親権が欲しい場合には、父親の親権を勝ち取った経験のある弁護士に相談し、早めに対策をとることをおすすめします。