DVシェルターの利用法&知っておきたい8つのこと

DVの被害に遭っている場合には、全国の婦人相談所などの施設や配偶者暴力相談支援センターで紹介されたDVシェルターで、一時保護などの措置を受けることができます。

DVシェルターでは、弁護士や福祉事務所などと連携しながら、新しい住居への入居をサポートしてくれたり、生活保護受給の手続きや就職活動などのサポートをしてくれたりします。

DVシェルター(母子シェルター)とは

DVシェルター(母子シェルターと呼ばれることもあります)とは、DV(ドメスティックバイオレンス)の被害者を、加害者(配偶者や肉親など)から隔離して、保護するための施設のことです。

相談機関は各自治体によって違い、名称も女性センター、健康福祉センター、配偶者暴力相談支援センター、福祉事務所など異なりますので、役場に問い合わせてみましょう。相談すると、シェルターを紹介してもらって避難することができます。

また、内閣府男女共同参画局では、全国共通ダイヤル「DV相談ナビ」(0570-0-55210)が開設されています。最寄りの相談所を案内してくれたり、案内された相談窓口にそのまま相談できる転送サービスを行っています。

最近は、NPO法人や社会福祉法人などの民間団体によって運営される民間シェルターも増えていますが、配偶者暴力相談支援センターなどでは、このような民間シェルターとも連携しているので、窓口に相談すれば、このようなシェルターを紹介してもらうこともできます。

なお、DV防止法による保護(接近禁止命令など)を求めるためには、まず配偶者暴力相談支援センターか警察に相談した事実が必要になります(※後述)。

(1)DVシェルターのメリット

DVシェルターでは、弁護士や福祉事務所、カウンセラーなどと連携しながら、新しい住居への入居や生活保護の受給手続きをサポートしてくれます。また、自立へのサポートとして就職活動などのサポートも行ってくれることもあります。

DVシェルターは、お子さんも一緒に入居することができますが、お子さんがいる場合には母子寮を紹介されることもあります。なお、この母子寮には数か月滞在できるケースもあります。

(2)DVシェルターのデメリット

民間運営されているシェルターなのか、公的なシェルターなのかによっても変わってきますが、2週間で約7,000円~1万円、同伴のお子さんについては1人1,500円程かかるケースもあります。
ただし、無料で入居できることもありますので、お金の面で心配があるから避難できないということはありません。その点も含めて、まずは相談窓口に相談してみましょう。

DVシェルターを利用する時の注意点

DVシェルターを利用する時には、かならず子どもを連れていくのはもちろんですが、自分の現金・衣類・健康保険証・年金手帳・預金通帳・カード・実印等、生活に必要なものを持参するようにしましょう。
また、暴力や暴言の証拠があるなら、それも一緒に持ち出すことを忘れずに。後で相手がそれらの証拠を破棄してしまうこともあるからです。

(1)DVシェルターの相談窓口

DVシェルターに避難したい時には、まず暴力の状況をまとめて証拠をつくります。ケガをした時の写真や診断書、暴れて壊れた家具や部屋の産卵状況などの写真、暴言の録音テープなどの証拠を忘れずに準備して、相談窓口に相談します。

窓口では状況を確認した後、必要に応じて警察・病院・カウンセラーを紹介してくれますし、相談する際に同行してもらえることもあります。また、弁護士への相談が必要な場合には、弁護士を紹介してくれますし、保護命令申立支援(申立書作成支援・裁判所同行)などを行ってくれることもあります。

下記の「暴力相談ナビ」に電話すれば、最寄りの相談窓口を紹介してもらうことができます。希望する場合には、電話を相談窓口に転送してもらうこともできますので、まずは下記に電話をしてみましょう。

全国統一ダイヤル「暴力相談ナビ」
0570-0-55210

(2)子どもは連れていく

DVシェルターに身を寄せる時には、子どもを連れていくことが大切です。
子どもを置いて出てしまうと、今度は子どもが被害者になってしまう可能性があるからです。

また、離婚後に子どもを引き取りたい場合には、別居中も子どもを養育している方が親権者になるうえで有利です。「別居して落ち着いてから、子どもを迎えに行こう」と思っていても、子どもを引き渡してもらえないケースもあります。

子連れでも、DVシェルターに入居することはできますし、状況によっては母子生活支援施設や、ひとり親家庭を優先した公営住宅を利用することができますので、必ず子どもを連れて避難するようにしてください。

(3)証拠を集める・記録する

後々の調停のや裁判に備えて、暴力によるケガの画像、相手の暴言の録音、医師の診断書などの証拠を集めておきましょう。画像や録音が難しい場合には、暴力を受けた時の様子を詳しくメモするだけでも、DVの立証をするのに役立ちます。

DV被害に遭っている方に知っていただきたい8つのこと

これまでは、DVシェルターの利用法などについてご紹介してきました。
しかし、DVシェルターに避難したいと考えていても、いざ避難しようとすると、どうしても勇気が出ない人がいます。DV被害者のなかには、「自分が至らなかったせいで、暴力を振るわれた」「相手は、自分のためを思って、暴力を振るっている」と思い込んでいるケースがあるからです。

そこで、ここでは、DV被害者に改めて知っていただきたい8つのことをご紹介します。

(1)DVは身体的・精神的暴力

DVは、殴る、蹴るなどの身体的暴力のほか、無視する、人格を否定する、交友関係を監視するなどの行為も含みます。

そこでまず、どのような行為がDVであるかを知り、「自分がDV被害者なのだ」ということをしっかり理解することが大切です。

①身体的暴力
殴る、蹴る、つねる、引っ張る、首を絞める、刃物を突き付ける、ものを投げつけるなどの行為

②精神的暴力
人格を否定する、無視する、大切なものを壊す、「誰のおかげで生活できていると思っているんだ」など、相手を見下すなどの行為

③社会的暴力
交友関係を監視する、電話やメールなどをすべてチェックする、行動を制約・制限するなどの行為

④経済的暴力
相手の収入を取り上げる、生活費を渡さない、働くのを禁止する、自分の趣味にばかりお金を使うなど、経済的に困窮させるなどの行為

⑤性的暴力
セックスを強要する、避妊しない、見たくないのにポルノや雑誌を見せるなどの行為

⑥子どもを通しての暴力
子どもを脅す、子どもに相手の悪口を言うなど、子どもを通して相手を苦しめる暴力

(2)あなたは悪くない

DV加害者は、暴力をふるった後に別人のように優しくなることがあります。
「愛しているから、蹴った」「お前のためを思って殴った」などと言い訳するのです。
それを日常的に繰り返されていると、暴力を振るわれた側も「私が、至らなかっただけ」「自分を愛しているから、殴った」と、離婚をしたいと思っても、つい我慢してしまうことが多いのです。

しかし、悪いのはDV加害者です。被害者が悪いわけはありません。
それに、このような暴力は、あなたがどのように変わろうとも、繰り返されます。エスカレートすることも少なくありません。また、あなただけでなく子どもへの虐待とつながることもあります。

以前は夫婦間の暴力は、「ただの夫婦げんか」と軽視されることもありましたが、DV防止法が施行されたことで、夫婦間であっても、暴力は決して許されない行為であることが明示されました。夫婦間の暴力だからといって、我慢することはありませんし、悪いのはあなたではありません。責められるべきは加害者で、被害者ではないのだということを、くれぐれも忘れないようにしてください。

(3)母子の支援制度はたくさんある

子どもを連れて逃げたくても、「別居(離婚)しても、子どもを抱えて生活をしていけないのではないか」と、躊躇してしまう方は多いようです。

けれども、母子家庭を支援してくれる制度はたくさんあります。
母子を保護してくれる施設や、税金の優遇制度、資格取得の支援や就職支援などの制度を活用しながら、自立へ道をサポートしてもらうことができます。

▶ ひとり親家庭が利用できる制度・手当・支援まとめ

確かに、経済的な自立は、決して楽なことではありません。
けれども、暴力をふるう親を見たり自分自身が暴力を受けたりした子どもは、深く心が傷つきます。子どもが暴力の被害者になる可能性も、大きいのです。また、親が暴力を振るう姿を見て育った子供は、自身が暴力を振るう親になることもあります。

暴力は、次の世代に連鎖する可能性が大きいのです。
負の連鎖を断ち切り、子どもを守るためにも、我慢せずに勇気を出して離婚に向けた準備を進めましょう。

(4)別居中の生活費は請求できる

長く専業主婦だった場合などは特に、別居中の生活費を心配する人も多いのではないでしょうか。
しかし、別居中の生活費は「婚姻費用」として、配偶者に請求することができます。
婚姻費用とは、衣食住の費用や医療費など、結婚生活を送るうえで必要となる生活費のことです。
夫婦の一方が無収入だったり収入が低かったりする場合には、収入の多い側が婚姻費用を相手に渡す必要があります。

婚姻費用は、同居しているか別居しているかにかかわらず分担義務がありますので、別居中も離婚が成立するまでは、婚姻費用を請求することができます。

婚姻費用は、当事者間の話し合いで決定をしますが、DV被害で避難しているケースでは、話し合いができる状態ではありません。
そこで、その場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てることができます。

▶ 婚姻費用分担請求の調停の申し立て方法と必要書類

(5)離婚後は養育費を請求できる

子どもがいる場合には、離婚後に養育費を請求することができます。
養育費とは、子どもが成長するうえで必要となる衣食住の費用や教育費、医療費などのことです。
子どもと別居する収入の多い側の親は、子どもを扶養する義務を果たすための費用を支払わなければなりません。

「勝手に子どもを連れて出て行ったのだから、養育費は払わない」などといった言い訳は、通用しません。子どもがひとり立ちするまで、養育費を支払うのは親の義務であり、養育費を受け取るのは子どもの権利です。

養育費の金額に法的な規定はないので、双方の話し合いで決定しなければ、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停でも相手の合意が得られなければ、裁判所が審判を下すことになります。

▶ 養育費調停|有利に進めるための8つの知識

(6)調停では居場所を隠してくれる

家庭裁判所の調停というと、「相手に居場所を知られてしまうのではないか」と心配される方もいらっしゃいます。
しかし、家庭裁判所では暴力の被害を受ける心配がある場合には、相手に居場所を隠してくれます。相手に居場所を知られるようなことはありませんので、その点は安心してください。

(7)調停では顔を合わせることはない

調停では、原則として双方同席のうえで手続きの説明が行われますが、DVを受けていて相手と同席したくない場合には、調停委員にそのことを申し出れば同席を避けることができます。
また、調停では事前に陳述書を提出することができます。
DV被害について、冷静に説明することが難しい場合には、陳述書に要点をまとめておくと、調停委員に事情を把握してもらいやすくなるので、おすすめです。

▶ 離婚調停の陳述書|書き方・注意点(サンプル付き)

(8)DV防止法による保護を求める

これまでご紹介してきたように、配偶者から暴力を受け、身に危険がある場合には、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」による保護を、求めることができます。

保護の方法は、接近禁止命令や退去命令などです。要件に該当すれば、離婚した元配偶者からの暴力に対しても、保護命令を申し立てることができます。

①接近禁止命令
被害者や子ども、被害者の親族への身辺に近づくことを6カ月禁止するもの

②退去命令
被害者の住居からの退去を命じるもの

③電話などの禁止命令
被害者へ電話をしたりメールをしたりすることを6カ月禁止するもの

保護命令を申し立てるためには、まずは配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)か警察に相談した事実が必要となります。
配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)は、都道府県の婦人相談所、女性センター、福祉事務所などが指定されていて、下記に相談すれば、最寄りの相談窓口を紹介してくれます。

全国統一ダイヤル「暴力相談ナビ」
0570-0-55210

配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)か警察に相談した後は、保護命令を申し立てます。保護命令の申し立ては、相手、申立人、暴力を振るわれた場所のいずれかの地方裁判所に行います。
緊急を要する時には、相手が出頭した時にすぐ保護命令は発令されることもあります。

なお、DV防止法による保護命令は、原則として身体的暴力だけが対象です。

ただし、DVには身体的暴力以外に精神的暴力、経済的暴力も含まれるのは、これまでご紹介してきたとおりです。
精神的暴力、経済的暴力ではDV防止法による保護命令は申し立てることができませんが、相談窓口に相談すれば、カウンセリング、弁護士、自立生活を行うための情報提供や支援などを受けることができます。

まとめ

以上、DVシェルターの利用法や相談窓口、あなたの身を守るためのDV防止法などについてご紹介しました。
繰り返しますが、DVの被害を受けている時には、一刻も早く別居をして離婚を考えるようにしましょう。そして、避難する場合にはかならず子どもを連れていきます。
後々調停や裁判でDV被害を主張できるよう、日ごろから証拠を集めることも大切です。

暴力相談ナビや弁護士に相談してサポートを受けながら、別居して保護命令を申し立てた後は、国や自治体のサポートをフルに活用して、自立にむけて新たな一歩を踏み出しましょう。