「離婚したいけど、離婚するにはどれくらいお金がかかるんだろう」「離婚して、生活はしていけるだろうか」と不安に感じて、離婚にためらっている人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、離婚する際にかかる費用と、離婚する時にもらえるお金、離婚後生活していくうえで知っておきたいお金の知識や支援制度について、ご紹介します。
Contents
離婚後の生活費シミュレーション
離婚をしたいと考え始めると、「早く解放されたい」「自分の人生を取り戻したい」という気持ちが強くなり、離婚後の生活を冷静に考えられなくなることがあります。
けれども、離婚後にはお金のこと、暮らしのこと、子供のことなど、さまざまな問題が重くのしかかってきます。
DVなどの被害に遭っている場合には、身の安全を一番に確保すべきですが、そうでないなら、離婚を焦らないことです。
離婚後の生活の不安や問題点を洗い出し、、それぞれについて解決できるかを検討し、そのうえで「離婚するか離婚しないのか」を考えるようにしましょう。
離婚後の家計を計算してみよう
離婚を考え始めたら、感情的に離婚を切り出すのではなく、まずは離婚後の生活に困ることがないよう、生活設計について検討しておく必要があります。
はじめに、毎月の支出を把握します。食費や住居費、光熱費、子供の教育費、医療費、保険料などを、大まかに書き出してみましょう。
そして、今度は、収入を計算します。会社員やパートの場合には、主な収入は給与となりますが、住民税や厚生年金、健康保険料など、給与から差し引かれるものは差し引いた残額で計算してください。また、子供がいる場合には、養育費や児童手当、児童扶養手当(所得制限あり)も収入に含みます。
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手取り給与10万円、小学生の子供が1人いるA子さんの場合は、収入と支出についてシミュレーションした結果、2.9万円のプラスとなりました。資格を取得するなどして、収入がアップすれば、さらに安定することがシミュレーションできます。
収支がマイナスなら見直しを!
もし収入と支出を計算してマイナスならば、収入を増やすか支出を減らす方法を考えなければなりません。
収入を増やすには、転職するか仕事を増やすことを考えます。資格取得やパソコンなどのスキルアップに取り組めば、就職・転職に有利になります。
支出を減らすには、住居費や通信費など、固定費(毎月一定のお金がかかる費用)を削減することを検討します。
母子が優先的に入居できる公的な住居もありますので、入居できれば住居費を減らすことができます。
また、一定の所得以下であれば、水道光熱費が無料になることもあります。
しかし、公的な住居は離婚後必ず入居できるというわけではありませんし、水道光熱費の減免は所得制限がありますので、一旦は平均的な家賃でシミュレーションします。
離婚する時にもらえるお金
離婚する時に避けては通れないのが、婚姻費用、慰謝料、財産分与、年金分割などのお金の問題です。
「離婚できるならお金なんていらない」「お金なんて欲しくないから早く離婚したい」という人もいますが、離婚後の生活を考えれば、やはりできる限りお金はもらっておきたいところです。
共働きで夫婦ともに経済的に自立していれば、お金の心配は不要でしょうが、子どもを引き取るのであれば、ひとりで仕事と子育ての両立させなければなりません
これまで収入がなかった専業主婦は、甘い考えは捨てて現実をよく見て、もらう権利のあるものはモレなくもらうようにしましょう。
財産分与
財産分与は、当事者同士の話し合いでそれぞれの寄与度、貢献度などについて自由に決めることもできます。ただし、妻が専業主婦だった場合でも、預貯金や不動産などの財産の名義が夫だった場合でも、財産は夫婦のものとして2分の1ずつ分けることが原則です。
専業主婦が財産分与を請求する場合、以前は3割程度を請求するケースもありましたが、最近は5割を請求する妻が多くなっています。また、裁判で認められるのも5割が主流です。
共働きの場合にも、それぞれの収入の額や家事労働の割合にもよりますが、2分の1ずつ分配する例が多いようです。
なお、財産分与は慰謝料と違って、離婚の原因がどんなものでも関係なく請求することができます。つまり、離婚の原因をつくった側(浮気した側など)、いわゆる有責配偶者であっても財産分与を請求することができます。
財産分与の対象となるもの
・現金や預貯金 |
財産分与の対象とならないもの
・独身時代から所有している預貯金 |
また、夫婦の一方が離婚によって経済的な不安がある場合には、もう一方が生活費を援助するために財産を分ける「扶養的要素」や、慰謝料を含めて財産分与を行う「慰謝料的要素」などの例外もあります。
財産分与について話し合いがつかない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申立て、調停の中で財産分与について話し合いを進めます。離婚調停が不成立となった場合、通常は離婚訴訟(場合によっては審判)へと進みます。
慰謝料
慰謝料は、浮気や暴力などの精神的または肉体的苦痛に対する損害賠償です。
慰謝料は、離婚するときに必ず発生するものではなく、浮気や暴力など相手に離婚原因といえるような行為がない場合には、請求することはできません。
▶ 離婚の慰謝料を請求する時に知っておきたい8つのポイント
慰謝料額の目安
慰謝料の額は、婚姻期間や支払う側の財力、離婚原因となった行為の内容などを考慮して金額が決められますが、100万~300万円程度が平均とされています。
離婚事由 | 慰謝料の金額 |
---|---|
浮気 | 100万~500万円 |
DV | 50万~500万円 |
悪意の遺棄 | 50万~300万円 |
性行為の拒否 | 100万~300万円 |
慰謝料額と婚姻期間の関係
慰謝料は、婚姻期間に比例して額が上がる傾向にあります。けれども、たとえ結婚期間が長いからといって必ず多額の慰謝料が支払われるとは限らないので、注意が必要です。
婚姻期間 | 平均支払額 |
---|---|
5年未満 | 193.1万円 |
5年以上 | 304.3万円 |
10年以上 | 438万円 |
15年以上 | 534.9万円 |
20年以上 | 699.1万円 |
養育費
養育費の金額や支払い条件については、法律的な決まりはありませんので、基本的には父母が話し合って決めることになります。
養育費の内容を口約束で取り決めておくと、後々支払いが止まったり遅れたりすることがありますので、支払額だけでなく、支払期間、支払方法についても具体的に決めて、必ず公正証書にしておきましょう。
公正証書には、金額の他、誰が誰に支払うか、子供が何歳まで支払いか、どの口座にいつ振り込むかを明記しておきます。
この時、「子供の進学や入院など、特別な支出があった場合の負担については、別途協議をするものとする」という文言を入れておくとよいでしょう。
さらに、公正証書には強制執行認諾文言付きにすると、後々支払いが不払いになった時に強制執行することができます。
養育費の目安
養育費は、子供の年齢に応じて、子供ごとに個別に算出します。
裁判所が作成した、養育費算定表を参考に取り決めるのもひとつの手です。
養育費算定表の金額は、あくまで目安なので必ずしも算定表のとおりにする必要はありませんが、広く利用されていますので、参考にしてください。
▶ 養育費・子3人表(第1子15歳以上,第2子及び第3子0~14歳)
▶ 養育費・子3人表(第1子及び第2子15歳以上,第3子0~14歳)
▶ 家庭裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(令和元年12月23日に公表)」
別居中の婚姻費用
婚姻費用とは、結婚生活を送るために必要な生活費のことで、衣食住にかかるお金、医療費、教育費、娯楽費などが含まれます。
同居か別居かに関わらず、夫婦は婚姻費用を分担する義務がありますので、別居中の生活費について相手に請求することができます。
婚姻費用について、相手に請求しても支払ってくれない場合や金額は折り合わない時には、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てます。
婚姻費用の額は、裁判所の婚姻費用算定表を参考にしてください。
▶ 婚姻費用/子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)
▶ 婚姻費用/子3人表(第1子,第2子及び第3子0~14歳)
▶ 婚姻費用/子3人表(第1子15歳以上,第2子及び第3子0~14歳)
▶ 婚姻費用/子3人表(第1子及び第2子15歳以上,第3子0~14歳)
▶ 婚姻費用/子3人表(第1子,第2子及び第3子15歳以上)
▶ 家庭裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(令和元年12月23日に公表)」
離婚にかかるお金
離婚の方法は、いくつかあり、それによって手続きの費用は大きく変わります。
主な費用としては、公正証書の作成費用、調停や裁判の手続き費用、弁護士費用、調査費用などがあります。
協議離婚の場合
協議離婚の場合には、離婚届を提出するだけなら、ほとんどお金はかかりません。
しかし、慰謝料や財産分与、養育費については、後々のトラブルを防ぐためにも、公正証書にすることをおすすめします。
口約束だけだと、後で「言った、言わない」のトラブルになりかねませんし、養育費の支払いがストップした時には、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成すれば、強制執行をすることができるからです。
公正証書を作成する場合、自分で手続きをすると手数料が5,000円ほどかかります。
公正証書の作成手数料は、目的の価値(財産分与や慰謝料などを合わせた額)によって、異なります。
弁護士などの専門家に依頼した場合には、離婚協議書の作成が3万円~10万円、公正証書作成費用が5万円~15万円程度かかります。
調停離婚の場合
調停離婚の場合には、自分で手続きをすれば収入印紙代と郵便切手と合計で数千円で済みますが、調停を弁護士に依頼する場合には、弁護士費用(着手金、報酬金、その他実費)がかかります。
裁判離婚の場合
裁判離婚は、手続きの費用だけなら、数万円で済みますが、訴状の作成など法律の専門知識が必要なので、弁護士に依頼するケースがほとんどです。特に、相手が弁護士に依頼する場合には、圧倒的に不利になってしまうので、必ず弁護士に依頼するようにしてください。
さらに、探偵会社や調査会社に不倫などの証拠集めを依頼した場合には、100万円を超える費用がかかることもあります。
ひとり親の支援制度
離婚した後は、ひとり親の支援制度を積極的に活用しましょう。
特に、児童手当や児童扶養手当、児童育成手当は、申請が受理された翌月から支給が始まりますので、早めに手続きをしてください。
児童扶養手当・児童育成手当
①児童扶養手当
国の制度で、18歳未満の子供を養育している父または母に支給されるものです。
保護者の所得が限度額以上の場合には、支給されません。
②児童育成手当
児童育成手当は、児童扶養手当とは別に自治体から支給されます。
母子家庭と父子家庭に、子供が18歳に達して最初の3月31日まで支給されます。
所得制限や支給額は、自治体によって異なりますので、役所に確認しましょう。
マザーズハローワーク
ハローワークでは、求職申し込みをすると公共の職業訓練を無料で受けることができます。
特に母子家庭の母親にとって強い味方なのが、マザーズハローワークです。
マザーズハローワークでは、就業相談やスキルアップのための講習、仕事の紹介などを行っています。子育てと両立可能な求人情報を提供していて、担当者が就業相談に対応してくれます。
その他の支援制度
所得制限はありますが、ひとり親は税金が軽減されたり、国民健康保険料、水道料金が減免されることもあります。
また、医療費が助成されたり、定期券が割引になることもあります。
・税金などの軽減・所得税・住民税の優遇 ・国民健康保険料の減免 ・水道料金の減免 ・日常生活の支援・ひとり親家庭の医療費助成 ・ひとり親家庭休養ホーム ・都営交通の無料乗車券 ・JR通勤定期乗車券の割引 |
ひとり親が利用できる制度や手当については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
【クチコミ】離婚後の生活費やりくり術
ここで、離婚後の生活費をどのようにやりくりについて、口コミをご紹介しましょう。
A子さん(33歳・子ども1人)
–離婚原因は何ですか?
「離婚原因は、夫の浮気です。帰宅時間がいつもより遅くなり、帰宅しても入浴しない日が増えたので、すぐに浮気しているなと分かりました。でも、いきなり問い詰めても素直に浮気を認めるような夫ではないと分かっていたので、ひたすら証拠を集めました。」
–離婚は、協議離婚ですか?調停離婚ですか?
「最初は、話し合いで離婚したいと考えていましたが、養育費や慰謝料の額で話がまとまらなかったため、弁護士を介入しました。」
–養育費や慰謝料の額は、協議でまとまりましたか?
「はい。ただ、顔を見るのも嫌だったので弁護士に依頼して交渉してもらいました。
慰謝料を夫とその浮気相手に請求し、合計300万円の慰謝料をもらいました。養育費は月6万円ということで、話がつきました。協議で話がまとまらなければ、調停を利用することも考えましたが、早めに弁護士に依頼したので、こちらの「本気度」が伝わり早期解決できたのだと思います。」
–離婚して、すぐに仕事は見つかりましたか?
「子供を抱えての仕事探しは、本当に大変でした。
できれば、離婚前に仕事を見つけておくと良いと思います。」
–仕事は、どのように見つけましたか?
「ハローワークのマザーズハローワークを利用しました。就業相談やスキルアップの講習会を受けることができますし、自立支援プログラムなどを受けることもできます。」
–生活は、落ち着きましたか?
「離婚後は、しばらくは子供のケアに専念しました。パパとママは離れて暮らすけれど、パパがあなたを愛していることに変わりはない。と丁寧に説明しました。仕事が見つかるまでは大変でしたし、仕事をしながらの子育ては今も大変ですが、半年ほどで慣れました。ひとり親が利用できる区のヘルパー制度などフル活用して、楽しくやっています。」
–離婚したことに後悔はありませんか?
「ないと言ったら、嘘になります。子どもが風邪をひいて仕事を休まなければならない時などは、もう少し我慢するべきだったかと考えることも…。でも、あのまま夫を許せずに何年も辛い思いで結婚生活を送ることを想像したら、やはり離婚して良かったと思っています。」
まとめ
以上、離婚後の生活費のシミュレーションや、離婚時にもらえるお金の基礎知識、ひとり親になったら活用したい支援制度などについて、ご紹介しました。
離婚をすると、それまでの環境だけでなく、人生そのものが大きく変わります。
ただ「離婚したい」という考えばかりが先走って、準備をしないで離婚をしてしまうと、後悔することになりかねません。
まずは、「本当に離婚するべきか」「離婚して後悔はしないか」「離婚後、生活していけるか」を慎重に検討し、それでも離婚をするという決心が揺るがない場合には、離婚に向けて計画的に準備をしていきましょう。