離婚調停では、自分の事情や希望を調停委員に正確に伝えることが大切です。ただし、調停委員に「よい印象を持ってもらえば有利になる」という単純な手続ではありません。
離婚調停は、夫婦のどちらが勝つかを決める場ではなく、調停委員会を介して離婚や子ども、お金に関する条件を整理し、双方が合意できる解決を目指す手続です。
調停を納得できる結果につなげるには、感情を抑えて相手の機嫌を取ることよりも、これまでの経緯、自分の希望、相手と対立している点を整理し、必要な資料を準備しておくことが重要です。
Contents
離婚調停は、事前準備が大事
離婚調停は、裁判官1人と、民間の良識ある人から選ばれた調停委員2人以上で構成される調停委員会が、夫婦双方から事情や意見を聞き、話し合いによる解決を目指す手続です。
調停委員会は、夫婦の一方の味方をするのではなく、中立的な立場で争点を整理し、必要に応じて解決案を示します。
調停は裁判とは異なり、原則として夫婦が合意しなければ成立しません。ただし、何も準備せずに臨むと、聞かれたことに十分答えられなかったり、自分が求めている条件をうまく説明できなかったりすることがあります。
調停前に、夫婦関係の経緯、子どもの生活、収入や財産、自分が希望する条件を整理しておきましょう。
夫婦間の出来事をまとめておこう
調停前には、結婚から現在までに起きた主な出来事を、時系列に沿ってまとめておくとよいでしょう。
すべての出来事を細かく書き出す必要はありません。離婚を考えるきっかけとなった出来事、別居に至った経緯、生活費の支払状況、子どもの養育状況など、調停の争点に関係する内容を中心に整理します。
たとえば、次のような項目をまとめます。
|
・婚姻した時期と同居を始めた時期 ・夫婦関係に問題が生じた時期 ・離婚を考えるきっかけとなった具体的な出来事 ・夫婦で話し合った内容と相手の回答 ・別居を開始した日と別居に至った経緯 ・別居後の連絡や生活費の支払状況 ・子どもの現在の生活状況と養育担当者 ・不貞、暴力、生活費の不払いなどがあった場合は、その日時と内容 |
「相手は昔から自分勝手だった」といった抽象的な表現よりも、「2026年5月以降、生活費の振込みがなく、LINEで3回支払いを求めたが返信がなかった」というように、日時や行為を具体的に記載した方が伝わります。
また、次の項目について、自分の希望を整理しておきましょう。
|
・離婚を希望するか、関係修復を希望するか ・共同親権と単独親権のどちらを希望するか ・子どもが主にどちらの親と暮らすか ・監護者や監護の分担をどうするか ・養育費の金額、支払日、支払期間 ・親子交流の回数、場所、受渡し方法 ・財産分与の対象財産と分け方 ・年金分割の割合 ・慰謝料を請求するか ・住宅や住宅ローンをどう処理するか |
相手から反論されると予想される点についても、相手の主張、自分の回答、回答を裏づける資料を整理しておくと、落ち着いて説明できます。
離婚調停の申立を理解しよう
離婚調停の正式名称は「夫婦関係調整調停(離婚)」です。
原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。夫婦が合意している場合には、合意で定めた家庭裁判所へ申し立てることもできます。
申立てでは、申立書とその写し1通を提出します。提出用とは別に、自分が確認するための控えも用意しておきましょう。
標準的な必要書類は、次のとおりです。
|
・申立書とその写し1通 ・夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書) ・事情説明書(夫婦関係調整) ・未成年の子どもがいる場合は、子についての事情説明書 ・進行に関する照会回答書 ・送達場所等届出書 ・年金分割を求める場合は、発行日から1年以内の年金分割のための情報通知書 |
申立先の家庭裁判所によっては、申立書付票、非開示希望申出書など、追加の書式が必要になることがあります。裁判所のウェブサイトや窓口で、最新の書式を確認してください。
申立書の写しは、相手方へ送付されます。事情説明書など、申立書以外の書面についても、相手方が閲覧や謄写を申請し、裁判官が許可すれば、内容を見られる可能性があります。
相手に知られると危険な住所、勤務先、子どもの学校、避難先などは、そのまま書面に記載しないよう注意してください。住所や氏名などの秘匿制度、非開示希望の申出、書面のマスキングなどを利用できる場合があります。
ただし、非開示を希望したからといって、必ず非開示になるわけではありません。提出前に担当書記官へ確認しましょう。
事情説明書には、夫婦の現在の状況、別居の有無、子どもの生活、調停で対立すると予想される事項などを記載します。
事情説明書作成のポイント
事情説明書は、相手を非難するための書面ではありません。調停委員会に、現在の状況や話し合う必要がある問題を把握してもらうための書面です。
事実は、できるだけ具体的かつ簡潔に書きましょう。
たとえば、暴力を理由に離婚したい場合には、「相手は暴力的です」と書くだけではなく、「2026年4月10日、自宅のリビングで顔を平手で1回たたかれ、翌日に医療機関を受診した」などと記載します。
相手の収入が分からない場合には、根拠のない数字を断定的に記載せず、「不明」としたうえで、勤務先や把握している収入資料などを記載します。過去の給与明細などから概算する場合は、推定であることを明記しましょう。
参考:事情説明書(離婚調停)の書き方(例文付き)
証拠を集めておこう
離婚調停は話し合いの手続であり、離婚訴訟のように、裁判所が証拠だけで勝敗を決めるものではありません。
それでも、夫婦の説明が食い違っている場合には、客観的な資料があることで、調停委員会に事情を理解してもらいやすくなります。
たとえば、不貞行為が問題となっている場合には、次のような資料が考えられます。
|
・ホテルへ出入りする写真や映像 ・性的関係があったことを示すLINEやメール ・不貞行為を認めた録音、念書、謝罪文 ・宿泊施設や旅行に関する領収書、利用明細 ・探偵や調査会社が適法に作成した調査報告書 |
一緒に食事をしたレシートや、親密なSNSのやり取りだけでは、不貞行為を直接証明できない場合があります。ただし、ほかの証拠と組み合わせることで、交際状況を推認させる資料になることはあります。
証拠は、最初の調停期日にすべて提出すればよいというものではありません。何を証明する資料なのかを整理し、必要なものから提出しましょう。
大量の資料を提出する場合は、資料番号、作成日、内容、証明したい事実を一覧にすると分かりやすくなります。
また、裁判所へ提出した証拠も、相手方から閲覧・謄写される可能性があります。住所、口座番号、勤務先、子どもの学校など、不要な個人情報はマスキングしてください。
相手のスマートフォンへ不正にログインする、ロックを無断で解除する、他人のアカウントへアクセスする、相手の持ち物へ無断でGPS機器を取り付けるなどの方法には、違法性やプライバシー侵害の問題が生じる可能性があります。証拠は適法な方法で集めることが重要です。
なお、調停は非公開で行われますが、調停委員が相手の主張をもう一方へ伝えることはあります。また、提出書類が相手方に開示される可能性もあります。「調停で話したことや提出した資料は、相手に一切伝わらない」という意味ではありません。
「価値観の相違」の証明
協議離婚や調停離婚では、夫婦が合意すれば、性格の不一致や価値観の相違を理由として離婚できます。調停で離婚するために、民法770条の法定離婚原因を証明する必要はありません。
ただし、相手が離婚に同意せず、最終的に離婚訴訟へ進む場合には、夫婦関係が修復困難なほど破綻していることが問題になります。
価値観の違いによってどのような問題が生じ、夫婦でどのような話し合いを行ったのか、別居に至ったのかなどを、日記、メール、相談記録などで整理しておきましょう。
「モラハラ」の証明
モラルハラスメントは、言葉や態度による行為が中心となるため、第三者から状況が見えにくいことがあります。
次のような資料を残しておくと、具体的な状況を説明する材料になります。
|
・暴言や威圧的な発言を記録した録音 ・相手から送られたLINE、メール、手紙 ・出来事の日時と内容を記載した日記やメモ ・家族、友人、医療機関、相談機関へ相談した記録 ・心身の不調が生じた場合の診断書や受診記録 |
調停委員に相手を説得してもらうことだけを目的にするのではなく、自分が何を受け、現在どのような安全上・生活上の問題があるのかを具体的に説明することが大切です。
争点別準備リスト
離婚調停では、離婚するかどうかだけでなく、親権・監護、養育費、親子交流、財産分与、年金分割、慰謝料などについても話し合います。
すべての資料を無差別に集めるのではなく、争点ごとに必要な資料を整理しましょう。
財産分与について話し合う時
財産分与では、夫婦が婚姻中に協力して取得・維持した財産を把握する必要があります。
預貯金や不動産の名義が夫婦の一方になっていても、婚姻中に形成された財産であれば、財産分与の対象になる可能性があります。
一方、婚姻前から所有していた財産や、相続・贈与によって取得した財産は、原則として特有財産となります。
|
財産分与について話し合う時の資料 ・収入……源泉徴収票、給与明細書、確定申告書 ・預貯金……通帳、取引履歴、残高証明書 ・株式・投資信託……証券口座の残高資料、取引報告書 ・生命保険……保険証券、解約返戻金の証明書 ・不動産……登記事項証明書、固定資産評価証明書、査定書 ・自動車……車検証、査定書、ローン残高資料 ・退職金……退職金規程、退職金見込額証明書 ・負債……住宅ローン、カードローンなどの残高証明書 ・婚姻前の財産……婚姻時点の通帳や残高資料 |
離婚調停を申し立てれば、裁判所が相手の銀行口座や財産をすべて自動的に調査してくれるわけではありません。
相手が資料を提出しない場合は、どの金融機関や財産が存在すると考えているのか、その根拠とともに具体的に説明しましょう。
2026年4月1日以降に離婚した場合、離婚後に家庭裁判所へ財産分与を申し立てられる期間は、原則として離婚した日の翌日から5年以内です。2026年3月31日以前に離婚した場合は、原則として2年以内となります。
年金分割について話し合う時
年金分割は、離婚後に相手が受け取る年金そのものを半分にする制度ではありません。
婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録を分割し、将来それぞれが受け取る厚生年金額に反映させる制度です。国民年金の老齢基礎年金は、分割の対象ではありません。
性別に関係なく、一方または双方に厚生年金の加入記録がある場合に問題になります。
年金分割について調停で話し合う場合には、日本年金機構などから「年金分割のための情報通知書」を取得します。離婚調停の申立てに添付する情報通知書は、発行日から1年以内のものが必要です。
情報通知書は、離婚前でも請求できます。ただし、情報通知書を取得しただけでは、年金分割は行われません。離婚成立後に、年金事務所などで年金分割の請求手続を行う必要があります。
2026年4月1日以降に離婚した場合、年金分割の請求期限は、原則として離婚した日の翌日から5年以内です。2026年3月31日以前に離婚した場合は、原則として2年以内です。
|
年金分割の準備で確認するもの ・年金分割のための情報提供請求書 ・基礎年金番号またはマイナンバーを確認できる書類 ・婚姻期間を確認できる戸籍謄本など ・事実婚期間がある場合は、その事実を確認できる資料 |
別居中の生活費について話し合う時
離婚が成立するまで、夫婦には、収入や資産などに応じて婚姻生活に必要な費用を分担する義務があります。
別居中に生活費が支払われない場合には、収入の少ない側から収入の多い側へ、婚姻費用を請求できる可能性があります。
離婚調停の中で生活費について話し合うこともできますが、支払いを急ぐ場合や、相手が合意しない場合には、離婚調停とは別に婚姻費用分担調停を申し立てる方法があります。
婚姻費用分担調停が不成立になった場合は、原則として審判へ移行し、裁判所が金額を判断します。
|
別居中の生活費について話し合う時の資料 ・自分の源泉徴収票、給与明細書、確定申告書 ・所得証明書、課税証明書 ・相手の収入が分かる手元の資料 ・家賃、住宅ローン、光熱費などの資料 ・子どもの学費、保育料、医療費に関する資料 ・生活費の支払いを求めたLINEやメール ・生活費の入金状況が分かる通帳 |
相手の所得証明書や課税証明書は、本人の委任などがなければ自由に取得できるものではありません。手元に資料がない場合には、調停で相手に収入資料を提出するよう求めてもらいます。
ただし、裁判所が相手の収入をすべて自動的に調査してくれるわけではありません。相手の勤務先、職業、過去の収入など、把握している情報を整理しておきましょう。
親権・養育費について話し合う時
2026年4月1日以降の離婚では、未成年の子どもの親権者について、父母双方を親権者とする共同親権か、父母の一方を親権者とする単独親権かを定めます。
共同親権と単独親権のどちらか一方が原則という制度ではありません。父母が合意できない場合には、裁判所が子どもの利益を踏まえて判断します。
DVや虐待がある場合、父母が共同して親権を行うことが困難な場合などには、単独親権としなければならないことがあります。
親権者や監護者は、「子どもが幼いから母親」といった性別だけで決まるものではありません。主に次の事情が考慮されます。
|
・これまで父母がどのように養育してきたか ・子どもの年齢、発達状況、心身の状態 ・現在の住居、学校、友人関係などの生活環境 ・離婚後の住居、勤務状況、養育体制 ・祖父母や保育サービスなどの支援体制 ・父母それぞれと子どもの関係 ・子どもの意向 ・父母が子どもの利益のために協力できるか ・DV、虐待など子どもの安全に関する事情 |
共同親権にした場合でも、子どもが父母の家を半分ずつ行き来することになるわけではありません。必要に応じて監護者を定めたり、監護の分担を決めたりすることができます。
養育費は、親権者かどうかだけで決まるものではありません。父母は離婚後も、それぞれの経済力に応じて子どもの生活費を負担します。
家庭裁判所では、父母双方の収入、子どもの人数・年齢などをもとにした養育費算定表が、金額を検討する際の目安として利用されています。
2026年4月1日以降に、養育費を取り決めないまま離婚した場合には、正式な養育費を決めるまでの暫定的な制度として、子ども1人につき月額2万円の法定養育費が発生する場合があります。
ただし、月額2万円は一般的な養育費の標準額ではありません。調停では、父母の収入や子どもの生活状況を踏まえ、適正な養育費を具体的に取り決めることが大切です。
|
親権・監護・養育費について話し合う時の資料 ・自分の源泉徴収票、給与明細書、確定申告書 ・相手の収入が分かる手元の資料 ・子どもの生活費、学費、医療費などの資料 ・保育園や学校の連絡帳、送迎記録 ・通院、予防接種、学校行事への参加記録 ・これまでの養育分担をまとめた資料 ・離婚後の住居、仕事、支援体制をまとめた養育計画 ・DVや虐待がある場合は、安全上の問題を示す資料 |
離婚調停当日の心構え
離婚調停の期日は、家庭裁判所の開庁日に行われるため、平日の日中に指定されるのが一般的です。
調停委員会は、裁判官1人と調停委員2人以上で構成されます。調停委員が男女1人ずつになるとは限りません。
期日にかかる時間や次回期日までの間隔は、裁判所や事件の内容によって異なります。1回の期日に1~2時間程度かかる場合もありますが、必ず一定の時間で終わるわけではありません。
通常は夫婦が別々の待合室で待ち、調停委員が交互に話を聞きます。ただし、手続の説明や成立内容の確認などで同席を求められることがあります。
2025年3月1日以降は、裁判所が相当と認めた場合、ウェブ会議によって離婚調停を成立させることも可能です。利用を希望する場合は、事前に裁判所へ相談してください。
離婚調停の持ち物
調停当日は、裁判所から指定された書類を忘れずに持参しましょう。
|
調停の持ち物リスト ・裁判所から届いた呼出状や案内書類 ・本人確認書類 ・離婚調停申立書や事情説明書の控え ・裁判所から提出を求められた資料 ・自分の希望条件をまとめたメモ ・相手の主張と自分の回答を整理した表 ・主張を裏づける資料とその一覧 ・筆記用具、ノート ・次回期日を確認できる手帳やスマートフォン ・必要に応じて飲み物や常用薬 |
印鑑は常に必要とは限りません。裁判所から持参するよう指定された場合に用意してください。
原本を提出する予定がある場合でも、自分の手元に控えを残しておきましょう。裁判所へ提出する資料は、できるだけA4サイズにそろえ、資料番号を付けて整理すると伝わりやすくなります。
清潔感のある服装・ていねいな言葉遣い
離婚調停の服装に、法律上の決まりはありません。スーツを着る必要はなく、普段着で参加できます。
長時間座って話す可能性もあるため、清潔で動きやすく、落ち着いて過ごせる服装を選ぶとよいでしょう。
服装やアクセサリーだけで、親権、養育費、財産分与などの結論が決まることはありません。高価なブランド品を身につけているだけで、浪費家と判断されるわけでもありません。
服装で印象を操作するよりも、時間を守り、資料を整理し、質問に落ち着いて答えることの方が重要です。
冷静な話し方も大切
ていねいな言葉遣いを心がけることは大切ですが、必要以上に調停委員へ気を遣う必要はありません。
相手への不満や怒りがあること自体は不自然ではありません。ただし、相手の人格を長時間非難すると、何が争点なのか分かりにくくなります。
次の順番で説明すると、内容が伝わりやすくなります。
|
1.いつ、どのような出来事があったか 2.その出来事によって、どのような影響を受けたか 3.相手とどのような話し合いをしたか 4.現在、何を求めているか 5.希望する条件の根拠は何か |
幼い子どもがいる場合には
家庭裁判所には、必ず託児設備や保育担当者がいるわけではありません。
調停は長時間に及ぶこともあり、夫婦間の争いに関する話を子どもが聞いてしまう可能性もあります。可能であれば、親族、一時保育、ベビーシッターなどの預け先を確保しましょう。
預け先を確保できず、子どもを連れて行く必要がある場合には、事前に担当書記官へ相談してください。裁判所ごとに設備や対応が異なります。
遅刻・欠席はしない
離婚調停では、本人が期日に参加することが基本です。
仕事、病気、育児などの事情で指定された期日に参加できない場合には、無断で欠席せず、できるだけ早く担当書記官へ連絡しましょう。
期日の変更を希望することはできますが、必ず希望どおりに変更されるわけではありません。医療機関の受診など、事情を確認する資料の提出を求められる場合もあります。
遠方に住んでいる場合や、相手との接触に危険がある場合には、ウェブ会議を利用できるか相談しましょう。
正当な理由なく呼出しに応じなかった場合には、法律上、5万円以下の過料に処される可能性があります。ただし、無断欠席すれば自動的に過料が科されるわけではありません。
「罰金」は刑事罰ですが、調停の不出頭について定められているのは「過料」です。
調停委員のアドバイスに耳を傾ける
調停委員会から、解決案や一般的な考え方を示されることがあります。
自分の希望と異なる案であっても、まずは、どのような事情を踏まえた提案なのかを確認しましょう。
ただし、調停委員から示された案だからといって、必ず受け入れなければならないわけではありません。調停委員は、自分の代理人や法律相談の担当者でもありません。
納得できない場合には、次の点を確認します。
|
・どの資料や事情をもとにした案なのか ・裁判になった場合の見通しを踏まえた提案なのか ・金額だけでなく、支払期限や支払方法はどうなっているか ・子どもの生活や安全にどのような影響があるか ・将来、条件を変更できるのか ・約束が守られない場合に強制執行できる内容か |
その場で判断できない場合には、「次回期日まで検討したい」「弁護士に相談してから回答したい」と伝えて構いません。
自分の思いをていねいに伝える
調停では、自分が経験したことや希望する条件を説明できます。
ただし、自分の気持ちだけを伝えても、親権、養育費、財産分与などの条件を判断する材料が不足することがあります。
たとえば、「絶対に子どもを渡したくない」と伝えるだけではなく、これまで誰がどのように子どもを育ててきたのか、離婚後にどのような環境で養育するのかを具体的に説明します。
「慰謝料500万円を払ってほしい」という場合も、慰謝料を求める原因となった行為、精神的苦痛、証拠、請求額の根拠を整理する必要があります。
自分の希望を伝える際には、次の3点を意識しましょう。
|
・希望する結論 ・その結論を求める理由 ・理由を裏づける事実と資料 |
離婚調停は相手を言い負かす場所ではありません。離婚後の生活や子どもの養育を現実的に成り立たせるために、必要な条件を整理する場と考えましょう。
次回調停に備えてメモをする
調停中にメモを取ることは、自分の理解を整理し、次回の準備をするうえで役立ちます。
相手がどのような条件を主張しているのか、調停委員から何を確認されたのか、次回までにどの資料を提出する必要があるのかを記録しましょう。
主に次の内容をメモします。
|
・相手が提示した条件 ・自分との認識が食い違っている点 ・調停委員会から示された案 ・次回までに検討する事項 ・次回までに提出する資料 ・次回期日と集合方法 |
メモを取ること自体が調停委員の印象を悪くするものではありません。聞き取れなかったことや意味が分からなかったことは、その場で確認しましょう。
一方、調停室内での録音や撮影は、自分の判断で行わず、裁判所の指示に従ってください。
調停が自分に不利に進んでいると感じた場合も、すぐに結論を出す必要はありません。次回までに資料を見直し、弁護士へ相談したうえで回答することもできます。
離婚調停に勝つためには
離婚調停は、裁判のように勝者と敗者を決める手続ではありません。
そのため、「調停委員に気に入られる」「相手より強く主張する」ことが、有利な結果へ直結するわけではありません。
自分にとって納得できる解決を目指すには、次の準備が重要です。
|
・希望する条件を明確にする ・譲れない条件と調整できる条件を分ける ・相手との争点を整理する ・事実を時系列で説明する ・主張を裏づける資料を用意する ・子どもの問題は、子どもの利益を中心に考える ・調停条項の内容を理解してから合意する |
とにかく証拠を揃える
証拠は重要ですが、種類や量が多ければ多いほど有利になるわけではありません。
離婚を求める理由や争点に応じて、必要な証拠を整理しましょう。
| 不貞行為 | ホテルへの出入りを示す写真、性的関係を示すメッセージ、本人が認めた録音や念書など |
| DV・暴力 | 診断書、けがの写真、警察や相談機関への相談記録、録音など |
| モラルハラスメント | 暴言の録音、メール、LINE、日記、医療機関の受診記録など |
| 生活費の不払い | 預貯金通帳、家計簿、生活費を求めたメッセージ、収入資料など |
| 親権・監護 | 連絡帳、送迎記録、通院記録、育児日誌、離婚後の養育計画など |
| 財産分与 | 通帳、残高証明書、保険証券、不動産資料、ローン資料など |
証拠を提出する際は、次の点を整理します。
|
・資料の作成日または取得日 ・誰が作成した資料か ・何が記録されているか ・自分のどの主張を裏づけるものか |
すべての証拠を第1回期日に提出する必要はありません。調停の争点や裁判所からの指示を踏まえ、必要な資料を提出します。
原本は手元に保管し、提出用のコピーを準備しましょう。個人情報が含まれている場合は、マスキングや非開示の手続も確認してください。
弁護士に依頼する
離婚調停は、弁護士に依頼せず、自分で申し立てて進めることもできます。
弁護士を付けなければ必ず不利になるわけではありません。ただし、次のような場合には、弁護士への相談や依頼を検討する価値があります。
|
・相手が弁護士を依頼している ・不動産、会社、株式、退職金など財産関係が複雑である ・財産隠しが疑われる ・親権や監護をめぐる対立が激しい ・DVや虐待があり、安全確保が必要である ・相手と直接やり取りすることが難しい ・不貞行為や暴力などの証拠評価が難しい ・調停不成立後の離婚訴訟を見据えている ・提示された調停案の法的な影響を判断できない |
弁護士に依頼すると、請求できる条件の整理、必要資料の選別、陳述書や主張書面の作成、調停条項の確認などについて支援を受けられます。
弁護士が代理人となった場合でも、本人の事情を確認するため、裁判所から本人の参加を求められるのが一般的です。弁護士だけに任せれば、本人が一度も参加しなくてよいとは限りません。
親、兄弟姉妹、友人などは、原則として調停室へ同席できません。付き添いが必要な事情がある場合には、事前に裁判所へ相談してください。
経済的な理由から弁護士費用を用意することが難しい場合には、法テラスの民事法律扶助を利用できる可能性があります。収入や資産などの条件を満たせば、無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できます。
まとめ
離婚調停を有利に進めるために重要なのは、調停委員に好かれることではありません。
夫婦関係の経緯、現在の生活状況、自分が求める条件、相手との争点を整理し、それぞれの主張を裏づける資料を準備することが大切です。
また、服装や話し方だけで調停の結論が決まるわけではありません。清潔で過ごしやすい服装を選び、聞かれたことへ落ち着いて答えましょう。
2026年4月1日からは、離婚後の共同親権・単独親権、監護、法定養育費、財産分与、年金分割などに関する新しい制度が施行されています。
親権・監護については父母の性別ではなく、これまでの養育状況、子どもの生活環境や意向、安全性などを踏まえ、子どもの利益を中心に検討されます。
調停が成立すると、合意内容が調停調書に記載されます。一度成立した内容は簡単には変更できないため、金額、支払期限、親子交流の方法などを十分に確認してから同意しましょう。
なお、離婚調停が不成立になっても、自動的に離婚訴訟が始まるわけではありません。離婚を求め続ける場合には、改めて離婚訴訟を提起する必要があります。事情によっては調停に代わる審判がされることもありますが、当事者が所定の期間内に異議を申し立てると効力を失います。
自分だけで条件や証拠を判断することが難しい場合には、調停成立前の段階で弁護士へ相談することが大切です。