「離婚したい」と思ったら知っておくべき22個のポイント

離婚は、法律的にいえば離婚届を役所に提出し受理されて、夫婦の一方の籍が抜かれれば成立します。
つまり、結婚が婚姻届1枚で正式に認められるように、離婚も離婚届1枚の提出で完了するともいえるのです。

しかし、実際に離婚の手続きを進めようとすると、そんなに簡単にはいきません。
離婚する前には、知っておくべき知識や準備しておくべきことがたくさんあります。

たとえば、離婚届の前に財産分与や慰謝料、子どもの親権などについては、十分に話し合いをして双方納得の上取り決めをしておかないと、離婚後にトラブルになってしまうことがあります。

また、夫婦のどちらか一方が離婚に反対している場合には、離婚を切り出す前に相手に主張できる離婚原因やそれを証明するための証拠を準備しておく必要があります。

そこで、この記事では、離婚する前に知っておきたい離婚の基礎知識や、離婚をしたいと思ったら決めておきたいこと、離婚したい時に相談できる相談先などを、項目別にまとめてご紹介します。

Contents

離婚したいと思った時

離婚したい…と思いつめると、つい感情が先走ってしまって「とにかく離婚だけ先にしてしまおう。養育費や財産分与、慰謝料のことは離婚後で決めればいい」と思ってしまう人もいます。離婚したい時には相手の顔を見るのすら嫌になりますから、一刻も早く離婚を成立させたい気持ちは十分理解できます。

しかし、こういう時にこそまずは冷静にさまざまな事項について検討し、十分な準備をしてから話し合いや手続きをすることが重要です。

「後から話し合えばいい」と思って急いで離婚を成立させてしまうと、離婚後に相手となかなか連絡がつかなくなってしまう場合もありますし、お金の話になると逃げまわるという人も少なくないからです。

もちろん、DVの被害に遭っているというような深刻な状況であれば、話し合おうなどとしないで、まずは今すぐに避難をすべきです。しかし、もし今そのような緊迫した状況にないのであれば、一時の感情で離婚を急いでしまって後悔することがないようにしてください。

離婚を考えた時には急いで離婚届を出す前に、離婚の手続き、離婚後の自分の生活、離婚後の子どもの養育などについての情報収集を行いながら効率よく準備を進めるようにしましょう。

人によっては、「離婚はしてもよいが、財産分与もしないし慰謝料は払わない」「離婚に異存はないが、子どもの親権は渡さない」など、離婚する意思に争いはなくても、離婚条件で話し合いがなかなかまとまらないというケースもたくさんあるからです。

(1)第三者の意見を聞く

離婚の話し合いは、夫婦間ではなかなか進まないものです。とくに1度夫婦仲がこじれると、冷静に話し合うどころか話し合いの場を持つことすら難しくなってしまうこともあります。

夫婦間で話し合いをする機会がなかったり、話し合いの場を持っても感情に流されてお互いを責めるような話し合いしかできないようなら、夫婦間での話し合いは諦めて、第三者に介入してもらうようにしましょう。
信頼できる友人や親せき、場合によっては最初から弁護士に相談するのもよいでしょう

(2)別居してみる

離婚をしたいと考えると、1分でも1秒でも一緒にいるのが嫌だと思ってしまうものです。反対に、離婚しないで夫婦関係を修復しようとする場合にも、それなりの時間を必要とします。

そこで、「今すぐ何とかこの状況を打開したい」と焦らずに、まずは一定の期間だけ別居するのも、ひとつの手です。相手と距離をおくことでお互いに冷静になり、本当に離婚すべきかどうか判断できるようになることもあるからです。

ただし、別居する時には相手に黙って家を出るのはなるべく避けてください。勝手に家を出ると捜索願を出されてしまったり、後々調停などにあった時に不利になってしまうことがあります。

できれば相手に「別居したい」という気持ちをていねいに伝え、きちんと話し合いをしてからべっきょを開始するのがおすすめです。また、親権が欲しければ子どもも一緒に連れていきましょう。子どもを置いて出てしまうと、後から子どもを引き取りたいと言っても圧倒的に不利になってしまいます。

ただし、DVを受けているという事情がある場合には、無断で家を出ても後から不利になるようなことはありません。

DVの被害に遭っているような場合には、今すぐ下記の「DV相談窓口」に連絡をとって子どもと一緒に避難をしてください。

▶ DVの被害に遭っている方へ|対処方法・相談窓口まとめ

DVの被害に遭いやむを得ず別居したとしても、これが後々不利になるようなことはありません。仮に相手が「同居義務違反だ」と言ったとしても、暴力を受けた証拠があれば、しっかりと反論することができます。

「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律(DV法)」では、「身体に対する暴力」または『これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」が伴う場合には、配偶者に2か月の退去を求めることができ、その間に妻が転居をすることができます。

(3)「離婚届の不受理申出」を提出しておく

離婚条件についての話し合いがまとまっていない中で別居してしまうと、相手に勝手に離婚届を提出されてしまうことがあります。

とくに、相手が不倫相手と住むために勝手に家を出て行ってしまった場合には、不倫相手と早く結婚したいからと勝手に離婚届を提出させて、離婚を成立させてしまうような卑怯なケースがあります。

そこで、別居中に、相手が勝手に離婚届を提出したりしないように「離婚届の不受理申出」を提出しておきましょう。不受理申し出とは、相手が離婚届を提出した場合に、その離婚届が受理されないようにするための手続きです。
不受理申出の用紙は、市区町村役所の戸籍係で「不受理申出書」を入手できます。

(4)離婚後の経済的な問題は早めにシミュレーションする

「自由になれれば、お金の問題なんて」という人がいます。しかし、離婚後の現実を考えたらお金は絶対に必要です。財産分与、慰謝料、離婚までの婚姻費用、ローンや借金の問題、離婚にかかる費用、年金分割などの離婚条件について、相手としっかり取り決めをしておく必要があります。
離婚後の住居・仕事(生活費)、子どもの保育・学校、教育費など離婚後生活に困ることがないよう、情報を集めておきましょう。

専業主婦で働いた経験がなかったり、小さな子どもが何人もいるという場合などにはなおさらです。DVを受けているという事情があれば別ですが、それ以外の場合に離婚するかどうか決断するのは、生活イメージができてからにした方がよいでしょう。

ひとり親優遇制度を調べたり仕事の情報を集めたり、就職するために必要な資格を取得するなどの対策は、できれば離婚前から取り組んでおきたいものです。少なくとも以下の事項についてはしっかりと考えてシミュレーションしておきましょう。

・ どこに住むのか。転居する場合の引っ越し費用、家賃など
・ 生活費はどうするのか
・ 仕事はどうするのか
・ 子どもが小さい場合には保育をどうするのか
・ 転居する場合には子供は転校させる必要があるか
・ 子どもの進学のための費用はどうするか

まずは、自分が持っているもの、稼げるもの、公的な支援を基本として考え、それから相手からの財産分与、養育費、慰謝料について考えていきます。

この時「相手から○○円の養育費をもらえるはずだ」と安易に計算してしまうと、後でそのお金がもらえないなど思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあるからです。捕らぬ狸の皮算用は危険であるということを十分に肝に銘じ、冷静に考えるようにしてください。
なお、別居中でも収入が少ない側は多い側から生活費をもらう権利があります。相手がこれを拒否すれば家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。

▶ 婚姻費用分担請求の調停の申し立て方法と必要書類

▶ 家庭裁判所「婚姻費用の分担請求調停」

(5)離婚後の親子の精神的なストレスケアに目を向ける

お金の問題だけでなく、精神的なストレスをケアすることも忘れないようにしましょう。
ご実家のご両親や親せきに離婚を伝えるのは、本当に辛いことです。
けれども、伝えることでご実感のサポートを受けることができれば、離婚後の精神的なストレスの両面で大変心強いものがあるでしょうし、経済的な問題についても援助を期待できるかもしれません。

また、子どもがいる場合には、子どもの気持ちを十分にケアしてください。
子どもは自分以上に子どもはストレスを受けます。特に思春期の子どもがいる場合には、時間をかけたていねいなケアが必要です。
これらの精神的なデメリットを考え「それでも離婚して幸せになりたい」と強い気持ちを持たないと、離婚後の多くの難関を乗り越えるのが辛くなってきてしまいます。

離婚後は「離婚を決めて、幸せになるための第一歩を踏み出した」時の思いを何度も思い出し、乗り切っていくだけの強さとメンタルケアが必要です。

離婚の基礎知識を理解する

離婚する前には、離婚についての基礎知識を理解する必要があります。
どのような解決方法があるのか、しっかり知っておくことで後々のトラブルを防ぐこともできます。離婚の方法や理由、離婚に伴うさまざまな基礎知識はしっかり理解しておきましょう。

(6)まずは4つの離婚方法を知っておこう

離婚をする方法は大きく分けて、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つがあります。

離婚の種類
離婚の種類

離婚についての話し合いがまとまれば、離婚する理由がどんな理由でも離婚することはできます。
しかし、夫婦のどちらか一方が離婚に反対したり、離婚については合意していても、財産分与や慰謝料で話し合いがまとまらなかったり、子どもの親権や養育費の額で争っているときなどは、法定離婚理由(法律で離婚が認められる5つの理由)がないと簡単に離婚をすることはできません。

夫婦間での話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所で調停委員に間に入ってもらって話し合いをすすめ、調停によって離婚する手続き(離婚調停)や、家庭裁判所の審判官(裁判官)が離婚条件を定めて離婚をさせる場合の離婚手続き(審判離婚)へと進みます。そして、それでも決着がつかない場合には、離婚裁判などの手続きにと進むことになります。

(7)「協議離婚」とは双方が合意すれば離婚できる方法

協議離婚は、夫婦の話し合いによって離婚を決める方法です。
協議離婚は、夫婦が離婚に合意して離婚届を作成して役所に提出すれば、離婚が成立します。

双方の協議が成立しないで後々裁判になった場合には、裁判離婚の場合には、民法で定める5つの離婚原因(①配偶者に不貞な行為があった時。②配偶者から悪意で遺棄された時。③配偶者の生死が3年以上明らかでない時。④配偶者の強度の精神病にかかり、回復の見込みがない時。⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由がある時。※後述)のいずれかに該当する必要があります。

しかし、協議離婚の場合にはどのような原因でも、双方が納得すれば離婚をすることができます。

(8)「調停離婚」とは調停で離婚すること

調停離婚とは、家庭裁判所に調停を申し立てて話し合いを経て離婚する方法です。
調停では、夫婦それぞれの言い分について調停委員が間に入って、双方が納得できるような合意点を探っていきます。
調停のなかで離婚の意思が合意し、離婚条件についても合意することができれば、調停が成立し離婚となります。
調停調書が作成され、離婚届を提出すると離婚が成立します。

調停が進むうえで、離婚に対する夫婦の考えが変化した場合には、調停を取り下げることもできます。

離婚調停の申立て方法については、以下の記事で詳しくご紹介しています。

▶ 離婚調停の申立て方法|申立法は?必要書類は?

(9)「審判離婚」は、非常にまれなケース

調停が成立する見込みがない時や、離婚そのものには合意しているものの、ごく一部の条件だけが折り合わない場合などには、裁判が調停に代わる審判を下して、離婚を認める判断をする場合があります。これが、審判離婚です。

(10)「裁判離婚」は、5つの法定離婚事由にどれかに該当する必要がある

夫婦の一方が離婚してくれと頼み込んでも、相手がこれを受け付けなければ、協議離婚はできません。その後、調停でも合意できず審判も不成立となりそれでも離婚したい場合には、離婚裁判へと進みます。

裁判になった場合には、民法で認められている離婚理由があれば離婚が認められます。民法が定めている法定離婚事由は以下の5つです。

・ 不貞行為
・ 悪意の遺棄
・ 3年以上の生死不明
・ 回復の見込みのない強度の精神病
・ 離婚を継続しがたい重要な事由

なお、日本では、離婚の話し合いが進まないからといって、いきなり離婚裁判を起こすことはできません。調停前置主義という規定があり、調停を申し立ててからでないと裁判に進むことはできないからです。
したがって、夫婦で話し合いがまとまらない時には、まず離婚調停を申し立てることになります(ただし、相手の生死が3年以上不明な時は、調停をしないで裁判を起こすことができます。)

裁判のなかでは、裁判所から和解勧告として、話し合いによる解決をアドバイスされることがあります。ここで夫婦が離婚について合意をすれば、和解が成立して和解離婚が成立します。

和解が成立しない場合には、判決が下されます。判決に不服があれば、2週間以内に控訴をすることもできます。判決が確定すると、離婚届に判決書と確定証明書を添えて役所に届け出て離婚が成立します。

①不貞行為

不貞行為とは、夫や妻のいる人が配偶者以外の人と性的関係を持つことです。風俗も性交渉があれば、不貞行為に該当します。相手がいくら「単なる遊びで、本気ではない」「1度きりの浮気だ」と主張しても通りません。感情や回数、期間は関係ないからです。
ただし、裁判の中で離婚を回避できないかと裁判官からアドバイスされることはあります。

②悪意の遺棄

結婚生活においては、同居義務(夫婦が一緒に住む義務)、扶助義務(生活費を出し合ってお互いが同レベルの生活を送れるようにする義務)、協力義務(力を合わせて暮らしを維持する義務)の3つの義務があります。

「遺棄」とは、正当な理由もなくこれらの同居・協力・扶助の義務を怠ることをいいます。
「悪意」とは、わざと夫婦関係を破綻させようとしていたり、破綻しても構わないと思っていた場合の意思とされています。

③3年以上の生死不明

配偶者からの音信が途絶えて3年以上たち生死が不明な場合は、離婚訴訟を起こすことができます。行方不明になった人と、いつまでも婚姻関係にあると、第二の人生を進むことができなくなってしまうからです。

ただし、配偶者が出ていって行方が分からなくても、電話やメール、手紙などで連絡をとっていて、相手が生きていることが明らかな場合には、3年以上の生死不明にはあたりません。なお、生活費も送らずに家族を放ったらかしにしている場合は、「悪意の遺棄」にも該当する可能性があります。

④回復の見込みのない強度の精神病

夫婦はお互いに助け合わなければならないとされているので、配偶者が精神病になったという理由だけでは、簡単に離婚は認められません。そのため配偶者の精神疾患がどれだけ強度なもので、介護や看護に十分努力してきた……など、強度の精神病を理由とした離婚が認められるためには厳しい条件があります。

⑤婚姻を継続しがたい重大な事由

夫婦関係が破綻する原因は、人それぞれです。
暴行、虐待、金銭問題など、その夫婦にとって修復不可能なほどの溝をつくったものであれば、それは離婚原因になりうるという意味です。
性格の不一致という場合は、問題の深刻さが認められるかがポイントとなります。金銭問題は、生活を圧迫するほど借金していた場合には、離婚の理由になります。
なお、暴力や虐待の場合には、ほとんどのケースで離婚することができます。

離婚したいと思ったら決めておきたいこと

離婚を決意したら、相手と協議や調停、裁判などで交渉することになりますが、その際に取り決めたい事項があります。

・ 財産分与に向けて正確に財産を把握する
・ 離婚の切り出し方・別居
・ 慰謝料などの請求できる権利を知る
・ 未成年の子どもの親権・養育費・面会交流

(11)財産分与に向けて、正確に財産を把握する

結婚後に築いた財産は、夫婦の共有財産となります。
収入を得ていたのが夫のみで妻が専業主婦だったとしても、預貯金が夫名義であったとしても、財産を築いてそれを維持できたのは、妻の協力(家事労働、育児などの内助の功)があったからとみなされ、実質的に財産は夫婦共有のものと考えるからです。

したがって、どれくらいの財産があるのか、財産をどう分けるべきか、離婚後の生活はどうするか、住宅ローンや借金はどう精算するべきか……などの財産の問題は、離婚を切り出す前に弁護士などに相談して正確に把握しておく必要があります。

なお、小さな子どもを抱える専業主婦で、離婚後すぐに仕事につくことができないなど、離婚後経済的に不安定になる場合には、離婚後しばらく生活費を請求することもできます。これを「扶養的財産分与」とか「離婚後扶養」などといいます。
ただし、専業主婦だから、高齢だからといって、必ず扶養的財産分与が認められるわけではありません。支払う側の経済力も重視されます。

(12)慰謝料請求のための証拠集め

離婚の際の慰謝料とは、相手の行為によって受けた精神的な苦痛に対する損害賠償金のことです。
慰謝料は、離婚する際に夫から妻に必ず支払われるものと思っている人もいますが、慰謝料は不貞や暴力、悪意の遺棄、性行為の拒否など、精神的な苦痛があった時に損害賠償として請求できるもので、いつでも請求できるわけではありません。

性格の不一致が原因だったり、双方に責任がある離婚だったり、とくに相手に非がない時には慰謝料は請求できません。
なお、離婚原因をつくった第三者(不倫相手や配偶者の肉親など)がいる場合には、その第三者にも慰謝料を請求できる場合があります。

慰謝料を請求するためには、不倫や暴力などの証拠が大変重要になります。
証拠集めは、別居してからだと難しい場合もありますので、別居前から計画的に証拠を集めるようにします。

▶ 離婚の慰謝料を請求する時に知っておきたい8つのポイント

▶ 不倫を証明する時に有効な証拠まとめ

(13)離婚を切り出して別居を検討する

離婚したい相手と同居しながら、離婚話を進めるケースもありますが、これは相当ストレスが溜まるものです。同居しながら冷静に話し合いを進めるのが難しければ、離婚前に別居をすることを検討しましょう。DVの被害に遭っているなどの事情がない限り相手に黙って家を出るのはおすすめできませんが、相手に離婚の意思を伝えて必要な対策をとっておけば、別居しても後々調停や裁判になっても不利になることはないでしょう。

離婚を切り出すことで配偶者から暴力をふるわれるなどの被害が予想される場合には、別居をしてから離婚を切り出すことをおすすめします。

(14)未成年の子どもの親権・養育費・面会交流を検討する

未成年の子どもがいる場合には、どちらの親が親権を持つことになります。そして、離れて暮らす親との面会交流の条件や、養育費はどのように支払うかについて取り決める必要があります。

養育費は、離婚後に支払われなくなることが多いので離婚時に公正証書等を作成しておくことを強くおすすめします。
公正証書には、調停調書や判決と同じ効果があるので、お金に関する支払いの約束が守られなかった場合に、相手の財産をただちに差し押さえることができるからです。

なお、面会調停も養育費も、離婚後に調停を申し立てることもできます。
面会交流の決め方や養育費の調停については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。

▶ 養育費調停|有利に進めるための8つの知識

▶ 面会交流権|会う頻度、会う場所などはどう決める?拒否はできる?

①親権

子どもがいる場合にはどちらが引き取って育てるか、親権者を決定する必要があります。親権をどちらが受け持つか決めない限りは離婚届は受理されませんし、法的に離婚が認められません。
親権の取り合いになったり、夫婦のどちらも親権がほしくないなどで話がまとまらない場合には、調停や審判などの手続きで決める必要があります。子どもが小さい時には、親権者は特別な事情(育児放棄など)がない限り、母親が優先される傾向があります。

②養育費

養育費とは、子どもが生活するために必要な費用の事で、衣食住の費用のほか、教育費や医療費、小遣いなどの適度な娯楽費も含まれます。養育費の金額に法的な規定があるわけではなく、父母の収入や財産、生活レベルなどに応じて話し合いで決められますが、子どもひとりあたり月額2~4万円が最も多いようです。

養育費は離婚後支払われなくなった……というトラブルが増加しています。離婚後不払いになったときに強制執行ができるように、取り決めを公正証書にしておきましょう。

▶ 養育費を支払わない時に、支払わせる方法(ケース別まとめ)

③面会交流

子どもと別れて暮らす親には、離婚後子どもに会ったり連絡をとる(面接交渉)権利があるとされています。面接交渉については、取り決めがなくても離婚することができますが、離婚後に話し合うのは難しい面があります。
そこで、面会交流については、会う頻度や時間、場所、子どもの受け渡し、特別な日の面会、宿泊を認めるか、予定変更の連絡はどうするかなど、など具体的に決めて離婚協議書などの文書にしておくのがよいでしょう。

離婚したい時の相談窓口

離婚の悩みは、一人で抱え込むのはよくありません。
信頼できる友人や家族、弁護士などに相談して、離婚後の生活を新しい気持ちでスタートできるよう、アドバイスを求めましょう。

(15)全国のDV相談施設

暴力や虐待を受けている場合には、DV相談施設に連絡をしましょう。
まずは、全国統一ダイヤル「暴力相談ナビ」に電話をすると、最寄りの相談窓口または希望地域の相談窓口を案内してもらうことができます。また、希望する場合には、電話を相談窓口に転送してもらうこともできます。


暴力相談ナビ
0570-0-55210

▶ 内閣府男女共同参画局「DV相談ナビについて」

(16)日本司法支援センター(法テラス)

日本司法支援センター(法テラス)では、法的トラブルについて相談すると、適切な法制度や相談窓口について紹介してもらうことができます。

利用条件はありますが、問い合わせの内容によってさまざまな無料相談を実施しています。相談は事前予約制です。DV問題に悩んでいる場合にいは、専門相談枠が設けられているばあもありますので、まずは問い合わせをしてください。

法テラスは、最近相談件数が増加していることから、予約から相談まで待ち日数が増加する状況にありますので、早めに予約をすることをおすすめします。


日本司法支援センター(法テラス)
0570-078374
▶ 法テラス・サポートダイヤル

(17)弁護士

弁護士には、「スムーズに離婚することができるか」「離婚後の生活が問題なく送れるかどうか」「親権はどうするか」など、離婚に関するあらゆる悩みを相談することができます。
早めに弁護士に相談することで、離婚を有利に進めることができますし、必要な証拠の準備についてアドバイスをもらうこともできます。

初回の相談は無料で行っている弁護士事務所もありますし、相談時には、今後の見通しや正式に依頼した場合の弁護士費用の目安についても説明を受けることができます。

弁護士を選ぶうえでもっとも大切なのが、自分と相性が合うかどうかということ。事前に評判を聞くのも大切ですが、最終的に判断する際には「この弁護士なら信頼できる」と心底から思えるかどうかです。

まずは実際に会って話を聞いてみて、「親身に話を聞いてくれるか」「ていねいに説明してくれるか」「説明が分かりやすいか」を確認するのが近道でしょう。

そして、「この弁護士とは合わない」と思ったら、別の弁護士にも会ってみましょう。

離婚後の手続きも知っておこう

離婚が成立すると、変更すべき手続きがたくさんあります。離婚後に必要となる手続きは以下のとおりです。自分に関係するものを確認して書き出しておくと手続きもれを防ぐことができます。

▶ 離婚後にしなければならない届出・手続きまとめ

(18)離婚後の戸籍と姓

離婚すると、夫婦の戸籍は別々になり、筆頭者でない配偶者(多くの場合は妻)が婚姻時の戸籍から抜けることになります。そして、次の2つのうちのどちらかを選ぶことができます。

①結婚前の戸籍に戻る

結婚前の戸籍に戻る場合には、姓も旧姓に戻ることになります。
ただし、両親が亡くなっている場合には、新しい戸籍をつくるしかありません。

②新たに戸籍をつくる

新たに戸籍をつくる場合は、旧姓か結婚時の姓か選ぶことができます。旧姓を名乗るなら、離婚届だけでOKですが、離婚の際に称していた氏を選ぶ場合には、「離婚の際に称していた氏を称する届」を住所地または本籍地の役場に提出する必要があります。

(19)子どもの戸籍と姓

両親が離婚をしても、子どもの戸籍と姓は変わりません。
離婚して母親が親権者となった場合でも、子どもは父親の戸籍に入ったままです。
したがって、親権者である母親と同じ戸籍にするには、次の手続きをとることが必要です。

①自分を筆頭者とする新しい戸籍をつくる

自分を筆頭者とする、新しい戸籍をつくります。
したがって、親権者である母親が子どもと同じ戸籍にするには、結婚前の戸籍に戻ることはできず、旧姓に戻る場合も新しい戸籍をつくる必要があります。

②家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立て許可を得る

子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てます。
申立ての際には、申立書と子どもの籍が移る戸籍の謄本が必要です。

「子の氏の変更許可申立書」の記載方法は、子どもが15歳未満か15歳以上かで異なります。以下の記載例を参考にしてください。

子が15歳以上の場合

子が15歳以上の「子の氏の変更許可申立書」

子が15歳未満の場合

子が15歳未満の「子の氏の変更許可申立書」

▶ 家庭裁判所「子の氏の変更許可申立書」

③上記①の戸籍のある役場で手続きをする

裁判所から許可審判書をもらったら、子どもの本籍地か子または親権者の住所地の役所で入籍届を行います。

▶ 離婚後にしなければならない届出・手続きまとめ

(20)公的な届出

離婚後の新生活では、多くの届け出が必要ですが、まずは健康保険や年金、住民票などの好適な手続きを進めるようにしましょう。

公的な免許証や身分証
・ 運転免許証
・ パスポート
・ 住基カード
・ マイナンバーカード
・ 印鑑登録の変更届
・ 年金の種別変更届

(21)日常生活・財産に関する届出

不動産、自家用車など、配偶者名義の財産を離婚後に自分が所有する場合には、名義変更を届け出る必要があります。特に不動産の名義変更手続きは時間がかかりますので、早めに手続きをとるようにしてください。
なお、不動産の名義変更手続きは、司法書士に依頼することもできます。

持ち家ではなく賃貸マンションに住み続ける場合にも、その名義変更が必要になります。
公共サービスの氏名・住所変更
・ 水道
・ 電気
・ ガス
・ 固定電話、携帯電話
・ ネット回線
・ 郵便(転送サービス)

口座や不動産、その他の財産に関する氏名・住所変更
・ 銀行預金
・ 郵便貯金
・ 生命保険等
・ クレジットカード
・ 自動車
・ 不動産
・ 国債
・ 株券・有価証券
・ 会員権
・ 印鑑登録
・ 自転車

(22)子どもに関する手続き

離婚して子どもが転校する場合には、住民票の異動届と同時に、子どもの転入学届の手続きも行うようにしましょう。また、子どもの健康保険についても異動届が必要になる場合がありますので、早めに加入している保険に問い合わせをしてください。

ひとり親家庭で、すぐに手続きをすべきものは児童扶養手当と児童育成手当です。これらは、申請が受理された翌月から支給が開始されます。離婚後すぐに申請すれば早くもらうことができますので、できる限り早めに手続きをしてください。

さらに、ひとり親になる場合には、自治体によってひとり親に対するさまざまな支援制度が用意されています。それらの申請手続きも確認してください。

まとめ

以上、離婚したい時に知っておきたい基礎知識についてご紹介しました。
長い結婚生活のなかでは、何度も危機が訪れるものです。悩み苦しみ、それでも自分の幸せを考え離婚したい時には、ここでご紹介したような離婚の知識を理解して弁護士などのサポートも受けながら、前向きに手続きを進めていきましょう。
離婚を、後ろ向きな選択ではなく、幸せになるための選択とするためにも、離婚を決める前に心構えをしっかり持ち、入念な準備を行っていきましょう。